the After 「G」 ~「G」が導く明日~
カクゥゥゥィォォォオン・・・
と、この地球最大の決戦に介入する、音よりも速い虹色の「光」が、南の空の彼方より現れた。
「光」はカイザーギドラとオルガに三つの光の筋が束なった七色の光線で攻撃し、二体が怯んだ隙にゴジラの頭上の周囲を旋回する。
「光」の正体は無数の小さな虹色の蝶であり、ゴジラの前で一斉に一つに集まると、稲妻のような模様と前・後翅合わせて逆三角形の形が特徴的な七色の羽根、蛾を思わせる触覚と緑色の複眼を持った巨蝶が、その姿を現した。
バトラから託された使命と、限りある命の終わりを迎え、天寿を全うした先代に代わって新たな「守護神」となった、虹色の守護神・・・名は、「レインボーモスラ」。
「新モスラに護衛して貰えるとは、縁起が良いね・・・さて、後は君の番だ。無事を祈っているよ、新郎・・・!」
更に、レインボーモスラを追うように飛んでいた一機のジェット機がオルガの頭上を通過したかと思うと、一つの影がジェット機の後部ハッチから勢い良く飛び出した。
戦場に似つかわしくない黒い礼服を着たその影は、背中にかつてエミーが使っていたランドセル型の重力制御装置「BABY」を背負い、両腕には幾つかコードが繋がった肩までを覆う黒い装甲・・・まるで、10年前のガダンゾーア戦にて未来から持ち込まれた決戦兵器・デルスティアの腕部の様な形状をした機械を身に付けており、オルガを睨むや「BABY」の出力をフルスロットルにし、右手の拳を振りかざしながら何の躊躇いも無く、オルガ目掛けて飛んで行く。
こんな無謀過ぎる事をするのは、この世界でただ1人しかいない。
「こんの、エセゴジラァァァァァァァァァァァァァ!!」
そう・・・桐城健だ。
健が両腕に付けている機械こそが、亜弥香が用意した秘密兵器にして、最高のケンカ道具・・・デルスティアのブラストレーザーの技術を応用し、相手の構成物質そのものに打撃ダメージを与え、使用者の力に応じてパンチの威力を常人の何十、何百倍にも増大させる機械であり・・・
『出力、1000%・・・!このままいけるわ、タケル!』
「おう!じゃあ、行くぜ・・・!衝撃のぉ・・・!!」
制御用の人口知能「CIEL」を搭載した、桐城健専用の最強のパンチングマシーン。
その名も・・・
「シエル、ブリットォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
常人の約1000倍にも膨れ上がった、健の必殺拳「シエルブリット」は、オルガの顔面をクレーター状に歪ませ、首が千切れんばかりのインパクトを食らわされたオルガはビルを薙ぎ倒しながら後方へ弾き飛ばされ続け、漸く止まった時には夥しい瓦礫に埋もれ、すっかりグロッキー状態となっていた。
ギィアァァァウゥッ・・・
『オ、オルガァ!?』
これまで幾度となく非現実的なまでの惨劇を目の当たりにし続けていたSSS9も、タキシードを着た男がその身一つで怪獣を殴り飛ばすと言う、まるで忠実に実写化されたバトル漫画・アニメのような想像を絶する光景につい驚きの声を上げ、健は天空に鎮座するカイザーギドラの眼前まで舞い上がると、大胆不敵にも「皇帝」を指差し、怒りの宣言を叩き付ける。
「次は、てめぇだ!このエセギドラ野郎!!宇宙怪獣だか何だか知らねぇけどな、俺とみどりの幸せな結婚式を邪魔する野郎は・・・俺が、俺達がぶちのめしてやる!!」
ゴガァァァァァァァオン・・・
カクゥゥゥィォォォオン・・・
健に続いて、ゴジラとレインボーモスラがカイザーギドラへ宣戦布告の咆哮を上げ、戦場に到着した自衛隊・Gフォースの連合部隊が、新潟の陸・海・空に展開して行く。
ーー・・・我を侮るか?塵にも等しい、矮小なる下等生物の分際で。
だが・・・かの新参者を思わせるその意気だけは買い、貴様の墓標に刻む名を問うてやろう。
貴様は、何者だ?
あえて売られたケンカを買い、初めてテレパシーを使って直接自分だけに語り掛けて来たカイザーギドラからの問いに、健はこう答えた。
「・・・聞きてぇか?なら、聞かせてやるよ!
俺の名前は桐城健!!天下無敵の喧嘩番長、桐城健様だぁっ!!」