the After 「G」 ~「G」が導く明日~
『Get's your goes!(いただくぜ!)』
新潟県・新潟市。
街は業火と人々の悲鳴に包まれ、その中を業火の主犯たる二足歩行の銀色の怪獣が歩き、怪獣の後ろに経つビルの屋上からスナイパーライフルを携えた、黒いスーツとサングラスの黒人の男が、この最悪の光景を僅かな笑みを浮かべながら見つめていた。
この暗殺者の名は、SSS9(スリーエスナイン)。29年前のビオランテ事件で暗躍した、サラジア公国の暗部を引き受けるシークレットサービス、その新たな9番目の男であり、別人なれど精密な射撃技術と冷徹に任務をこなすプロ意識、そして20歳と言う責務に不相応の若さは変わっていない。
今回の彼の任務は、新潟市のGフォース関連施設の地下に秘密理に管理されている、27年前に歴史改変によって初代ゴジラに成り代わる形で生まれ、未来人の手先として人類の脅威になりながらゴジラに敗北し、エミーの手により未来で半機械(サイボーグ)となって人類の救世主として活躍した、超ドラゴン怪獣・キングギドラ・・・その遺体の一部を、サラジアに持ち帰る事である。
加えて、依頼を確実に達成する為にサラジアはSSS9に、とある日本経由の裏ルートから流れて来たG細胞とオリハルコン、更にサラジア近辺で回収された、宇宙から飛来した円盤らしき未知の物体の欠片を与え、SSS9の手で一つにされた結果・・・今まさに街を破壊している、右肩の発射口と巨大な鉤爪のような両手、有機的ながら何処か無機質な印象も与える銀色の皮膚に覆われた、まるでアダムスキー型UFOに手足と長い首が付いたかのようなフォルムの怪獣・・・「動物」のゴジラと「植物」のビオランテーー若しくはソビラーーに次ぐ、「無機物」とG細胞が融合した、ゴジラ細胞と「絶対悪魔」の申し子・オルガが誕生してしまった。
クヴァウギィアァァァウ・・・
オルガは両手を道路に付けて屈み、まるでクラウチングスタートのような体勢になると右肩の発射口から波動砲を放ち、一直線に建物を破壊して行く。
ーーここが、我を模した「偽りの王」がいた、あの若輩者の「根源」の在る地にして、奴の墓場となった蒼い星・・・地球か。
仇、とまでは言わないが・・・我が見初めた新人を葬った「根源」と、無断で我が名と姿を模した紛い物を生み出した、この星の下等生物共を・・・この「皇帝」が直々に葬ってやるとしよう・・・
一方、遥か宇宙の彼方から真っ直ぐに地球を目指して来た一つの巨大隕石が、大気圏を降下し始めた。
大気圏降下による衝撃と超高熱が隕石を砕いて行くが、やがて隕石の中に体を丸めて潜んでいた、キングギドラの骸骨を身に纏ったような二又の尾を持った黒い巨人が姿を現す。
続けて巨人が両手両足を「X」の形のように広げるや、巨人の全身が金色に肉付いて行き、背中からは一対の魔の翼が生え、両手は逞しい前足へと変わり、顔と両脇の骸骨が首長竜のような長い首に、三つに増えた顔は見る者全てを畏怖させる邪悪な西洋の龍の形相となり・・・
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
ギィィグァァァウ・・・
キングギドラと同じ、だが圧倒的に威厳も力も知能も全てが桁違いの、金色の四つ足の三つ首龍・・・「皇帝」の名を冠する最強のギドラ・カイザーギドラが、新潟の上空に降臨した。
かつて、カイザーギドラは闘争本能のままに宇宙を彷徨っていたスペースゴジラと対面した事があり、比類無き力と飽くなき戦いへの渇望に満ちたスペースゴジラを個人的に気に行ったカイザーギドラは、スペースゴジラの「根源」であるゴジラの存在を教え、ゴジラを倒せたならば自分に挑んで宇宙最強の存在になってみせろ、と約束していた。
が、スペースゴジラがゴジラとMOGERAに敗れた事で約束が果たされる事は無くなり、自分と同じ「ギドラ」の名を騙るーー若しくは、改変前の未来の地球にて敗れた自らを未来人が模した可能性のあるーーキングギドラの存在を知っていた事もあり、地球に興味を持った「皇帝」はいよいよ重い腰を上げ、最悪の状況での降臨と相成ったのだった。
『!?』
SSS9も予想だにしなかったカイザーギドラの降臨に驚愕し、階段を一段一段律儀にかつ高速で駆け降り、下の階層の窓ガラスからカイザーギドラに存在を知られないようにしつつ、外の様子を伺う。
・・・ゴォォォォ・・・
・・・すると、その時。
新潟港から紅い閃光が瞬き・・・海を叩き割りながら現れた極太の赤い熱線が空へ伸びて行き、カイザーギドラに直撃した。
ギィアアアアアン・・・
グァウウウウウウ・・・
完全に不意を付いた、「皇帝」の鼻をへし折らんとする紅い一撃にカイザーギドラは地に堕ち、この一撃を放った者の正体を即座に察したSSS9は熱線が放たれた新潟湾を、恐怖と怨恨の眼差しで見つめる。
『Shit!it's a GODZILLA!(クソッ!ゴジラの奴め!)』
ゴガァァァァァァァオン・・・
SSS9が吐いた呪詛の言葉の後、100m近い大水柱を立てて新潟港に姿を現したのは・・・この地球の「王」であり、恐怖と人類の過ちの象徴「であった」者であり、今は数々の地球の脅威を打ち倒して来た英雄(ヒーロー)。
その名は、ゴジラ。
クヴァァァァヴ!
オルガも進撃を止め、現れた自らの「根源」の一つたる存在への威嚇の唸りを上げながら、上陸するゴジラを待ち構える。
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
ギィィグァァァウ・・・
出鼻を挫かれたカイザーギドラもまた翼を広げて飛び上がり、再び天に座して来訪の目的の一つであるゴジラを見下しながら見定める。
グルルルル・・・
またしても現れた、自分と似て非なる存在。
いつか現れると予期していた、巨大なる存在。
ゴジラは地上のオルガと、天空のカイザーギドラをそれぞれ睨み付け、右手を軽く付き出しての手招き・・・挑発からの臨戦態勢を取る。
例え自分の分身のような存在であろうとも、父から聞いていた宇宙最強の存在であろうとも、怪獣王のやる事は変わらない。
それは、種族を超えた「友(ダチ)」の口癖・・・
必ず、ぶちのめす。