the After 「G」 ~「G」が導く明日~
時代を越えた、ゴジラに関わりし者達の邂逅を終え、誓いの言葉と口付けの前の讃美歌が流れる・・・かと思われた式場に、将治のスマホから場違いな警告音が流れた。
「「「『!?』」」」
「おい麻生、この音・・・!」
「ああ。最悪のタイミングで最悪の知らせだ・・・皆さん、新潟市に怪獣が現れました!」
参列者が何かしらの縁で関わっている事から、不慣れな者は殆どいないとは言え、「怪獣出現」の一報に式場には困惑の声がこだまし、それぞれで違う反応を示す。
「大変恐縮ですが、皆様!避難のご準備を!」
「ほんと、最悪なんですけど!なんでよりによって今この時に来ちゃうのよ!」
「みどり姉さんの言う通り!人の挙式を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやらよ!と言うか私、その怪獣にビンタしてやるわ!」
「ストップ、美歌。気持ちは痛い程分かるけど、おれは絶対行かせないからね?」
「ある意味、タイミングが良すぎるわな・・・Gフォース自慢の俺と麻生がいる、このタイミングで来やがるとはよ!」
「自衛隊及び『ヤングエリート』も、お忘れなく。やる事は一緒ですがね・・・」
「直ちにGフォース及び自衛隊に、出撃要請だ!」
「M11、今日の怪獣襲来は記録にないわよね?」
『当然、ありまセン。何度検索しようとも、結論は一緒デス。』
「マジかよ、エミー!じゃあ、歴史に存在しない怪獣が現れたって事は・・・!」
「これはまだ、未来が決まっていない証拠って事・・・?」
「そうね。勿論これは、私の歴史にも記録されていない・・・つまりただの怪獣出現じゃなくて、何者かによる作為的な要因だと考えるのが妥当ね。」
「・・・しかもその怪獣からオリハルコンと、ゴジラに似た力を感じるわ。これは秘密組織による怪獣テロかもしれない。」
「オリハルコンに、ゴジラに似た力?まさか、スペゴジやソビラみたいなヤツがまた出たってのかよ!?」
「あれから10年経っても、ガダンゾーアの置き土産はまだ消えないのか・・・」
「八神、こんな時にもし君がいてくれたらと、思うよ・・・」
「・・・言い方悪いけど、いない者をあてにしたらダメよ。残された私達がやれる事を精一杯、最後まで諦めず、見捨てずにやる。それだけよ・・・!」
『皆さん、宇宙からも途方も無い「何か」が、迫って来ています・・・』
『スペースゴジラ以上の、純然たる最強の宇宙怪獣です・・・』
『スペースゴジラ、イジョウ!?大戸モナイノニ、oh!ドウシマ湘南海岸!!』
「Gフォースにようやく配備された軍用艦『項羽』とメーサー兵器群、加えて自衛隊の各種兵器で、何処までやれるか・・・それでも、俺達は守る為に戦う!」
「相手があのスペースゴジラよりも強い宇宙怪獣と、ゴジラの力を宿す謎の地球怪獣だとしても、俺達は必ず勝って守り抜いてみせる!」
「そうよ、功二さん。私達には、まだ希望は沢山残っているのだから。」
『『はい。この地球(ほし)にはモスラが、ゴジラが、貴方達がいます。』』
「先代のモスラはもういないけど・・・新しい守護神になった『あの子』なら、きっと・・・!」
「試作機だけど、俺がセバスチャン博士と開発中の戦闘も出来る重機『ガンヘッド』もあるぞ!」
「・・・貴方も、みんなを助ける為に来てくれるわよね?ゴジラ・・・」
「う~ん、ここが近畿ならバラン様もすぐ来てくれるのにな・・・」
「さくら、きっと大丈夫。ここにいる人達は、みんな強いから。」
「いや、少なくとも俺は強くないよ!?」
「そんな事言ってる暇があったら、人を避難させるなり私達に出来る事をするわよ中村!先生も早くこちらへ!」
「ふう・・・全く、老いぼれを追い立てさせるとは無粋な怪獣だよ・・・」
「俺は折角だから、自分の足でこの世紀の怪獣大戦を取材するつもりだが・・・どうする?『怪獣取材の専門家』?」
「と、当然行きます!ご一緒させて頂きます、大先輩!」
「・・・これも、運命なのかもしれない。しかし、どんな困難が待ち受けていようとも、彼らなら・・・今のゴジラなら、やってくれる。私は信じているよ・・・」
「桐城・・・いや、健。怪獣は僕達Gフォースと、黒木特将や瞬特佐達自衛隊に任せて、君とみどりさんは結婚式を続けてくれ。君とみどりさんの誓いの時を、邪魔したくは・・・」
「何言ってんだ?麻生・・・いや、将治。俺のダチの、お前なら分かってんだろ?美歌が言ってたみたいに、俺とみどりの誓いの日を邪魔する奴なんざ、絶対自分でぶちのめすに決まってんだろ!こう言う時が来た時の為の俺専用の秘密兵器、最高のケンカ道具も亜弥香さんから貰ってるし、ゴジラも絶対すぐに来る!だから、俺を怪獣のいる所に連れて行ってくれ!
みどり!必ず帰って来るから、ここで待っててくれ!翼と父さんは、みんなの事を守ってくれ!」
「当然です、義兄さん!おれはみんなを、守ってみせます!」
「俺達の事は心配するな、健!だから、行って来い!」
「・・・健ったら、いつまで経ってもケンカと縁が出来ちゃうのね。」
「・・・もう、あんたは元喧嘩番長でしょ!なんでまた怪獣とケンカしに行くのよ!なんで秘密兵器なんか貰ってんのよ!花嫁を置いて、また世界を賭けた危険なケンカに行くなんて・・・」
「悪ぃ、でも許せねぇんだ・・・俺とお前と、睦海が待ってる明日を邪魔されてる気がして・・・!そして俺は、そう言う邪魔するやつを全部この拳でぶちのめして、切り開いて来た・・・これは、俺がやらねぇと駄目なんだ!」
「・・・で、また止めても聞かないのも分かっているわ。それに帰って来るって言ったなら、あんたは絶対帰って来る男だってのも・・・だから、少しでも早く帰って来なさい!あたしはずっと、待ってるから・・・約束よ、健。」
「・・・ありがとう、みどり。」
溢れ出る不安の感情から零れ落ちそうになる涙を堪え、健を送り出すみどり・・・新婦に、新郎は優しくベールを上げ・・・そっと、誓いの口付けをする。
唐突なブライダルキスに周りが怪獣襲来の事を忘れて歓声に沸き、みどりが顔を赤らめる中、健はクラウチングスタートの体勢から一気に走り出し、式場を飛び出して行った。
「あらあら♪あの子もやるわねぇ♪」
「だな、和美。あいつもやれば出来るじゃないか・・・」
「全く・・・大人になっても根っこは全くもってぶれないな。君って奴は。」
「でも、それこそが私のバカ兄貴よね。いっけー!!健兄さぁーん!!」
「そうだよ。おれが憧れたあの人は、まだまだ健在なんだ・・・だよね、義兄さん!」
「・・・健。今度こそ、あんたと一緒に明日を生きれるって、あたし信じてるから・・・!」