夏の日の君に・・・in真地町











翌日・月曜の夕方、真地町・第六地区。
俟ち総合病院・404号室・・・



火見樹「・・・そう言うわけでひなたが言う、異世界のそっくりさんと一緒にキングシーサーの戦いを、見守る事になったんだ。」
巽珠理亜『みんな、ほんとにそっくりだったよ!わたしのそっくりさんともおしゃべりしたけど、「竜宮島」ってとこに住んでたりするいがい、わたしと見た目も声もしゃべり方もおんなじだったの!』
沢之穂野香「あんたのそっくりさんも、病気が無い事以外はマイペースでアニメが好きそうな感じも含めて、同じだったわね・・・
どう思う?紀子?」






水田(みた)紀子「うーん・・・本当にマルチバースネタを目の当たりに出来たなんて・・・平行同位体の私が健康体な事も含めて、羨ましいわ。」
火見樹「と言うかボク達のこの非現実な話、何の疑いもなく信じれるんだね?紀子らしいっちゃ、らしいけど。」
水田紀子「この町に怪獣が、ゴジラ達『十二使獣』やデストロイアが実在している時点で、非現実云々はもはや野暮よ?樹?そもそも、この町には昔からゴジラがいたとか、『たたら神』から町を守ってくれたのを見たとか、この病院にいる嘘を言いそうに無いおじいさんおばあさんが、みんな目を輝かせて言ってるし。」
沢之穂野香「言われてみれば、そうよねぇ・・・今更、異世界だとかそっくりさんだとかはもう騒ぐような事じゃないのかしら?」
水田紀子「そう。ファーストコンタクトはいつだって未知との遭遇だけど、乗り越えられればまさに『つかみとれ!未来』・・・だから、私達はいつ宇宙人が来てもいいようにヤック・デカルチャーの精神を持ったイノベイターで無ければいけないのよ。珠理亜。」
巽珠理亜『う~ん、のりこの言ってる事はちょっと分からないけど、うちゅうじんが来たらわたし、ぜったいともだちになる!』
水田紀子「その意気よ、珠理亜。その時の合言葉は『ホウセイマイフレンド』、よ。」
巽珠理亜『ホウセイマイフレンド!』
沢之穂野香「いや、それだと珠理亜が蝶野さんにビンタされちゃうから!いつもの事だけど、珠理亜に変な事吹きこまないっ!」
火見樹「そろそろ、話を戻すよ?それでその後、ゴジラが来てキングシーサーがゴジラの盾になって、デストロイアを倒したんだ。」
沢之穂野香「『ゴジラの盾に』って言い方、なんかキングシーサーが身代わりになったみたいであんまり好きじゃないわね・・・まぁ、本当に防具の方の盾と言うか、シールドになるんだから間違ってはないんだけど。」
巽珠理亜『キングシーサーのシールドって、デストロイアのこうせんをはね返したり、ゴジラが思いっきり回りながら投げてぶつけるのが、かっこいいよね~!しし、はくとう!』
沢之穂野香「正しくは『獅子搏兎(ししはくと)』、ね?あの必殺技もネーミング込みでカッコいいから、私は十二使獣なら断然キングシーサーが推しね!」
火見樹「それにしても四字熟語まで知ってたり、そもそも言葉を話せるなんて、『十二使獣』ってほんと何なんだろう?ゴジラの仲間で、ボク達を守ってくれている事に間違いは無いけど、キングシーサー以外のバラゴンとかアンギラスとかもゴジラの武器になるし、来るタイミングも基本早いし。でも誰もゴジラ達が普段は何処にいるのか、突き止められてない・・・」
水田紀子「十二使獣は、私達の隣にいるのかもしれないわね・・・それで極めて近く、限りなく遠い世界から来たそっくりさん達は、その後どうしたの?」
沢之穂野香「えっと、連れの人達と一緒にすぐに元の世界に帰って行ったわ。異世界に行ける装置を作ったらしいパレッタって人は、もっともっといたいって駄々こねてたけど・・・」






疋田深紗「・・・これなら、もうすぐ退院出来ますね。ここまで順調に回復したのも、貴方の努力の賜物です。わたしも尽力しますので、頑張りましょう。」






沢之穂野香「・・・あの人のそっくりさんに『めっ!』されて、泣く泣く帰って行ったの。何でも、そっくりさん同士が出会うのは本当はご法度らしいから、悪い影響が出る前に帰ったんだって。」
巽珠理亜『その人、「めっ!」されたらすっごくびくびくしてて、おもしろかったよ♪いいかげん、こどもみたいにわがまま言うのはやめなさい!めっ!』
水田紀子「・・・なるほど、確かに疋田先生はドクターにしてシスターな人だけど、まさか平成が終わって令和に入ったこの時代に、憂ちゃんネタをするなんて・・・穂野香、そのパレッタって人は『めっ!』されたら『ゆるしてつくあさいっ!』って言ってた?」
沢之穂野香「・・・言ってたわ。一言一句変わらず。」
火見樹「えっと、これ紀子のいつものアニメネタだよね?そんな所まで、再現してたの?それよりボク、そっくりさんの中に小学校の先生だった蛍先生がいたのに、驚いたなぁ。」
水田紀子「蛍姉ちゃんの平行同位体には、私も会ってみたかったわね。あっ、でも亜衣琉お姉さんの平行同位体もいたのか・・・」
沢之穂野香「そう言えば紀子、レンのお姉さんってすっごいセクシーと言うか・・・色々アブない人なのって、本当なのね?」
火見樹「令和の入ったこの時代に、って言うならまさか牛柄の水着を平気で着る人が、本当にいるなんて・・・」
巽珠理亜『きれーでぐらまーなおねーさんだったね~。でも、「異世界のレン君をモノにしたい」、ってどういうこと?』
水田紀子「それはもう少し成長したら、多分自然に意味が分かるわ。珠理亜。それにしても、平行同位体の亜衣琉さんも『小悪魔なお姉ちゃん』なのね・・・」
沢之穂野香「今度、本物が来たら会ってみよっか・・・あっ!そろそろその弟と言うか、ボーイフレンドが来る時間ね!じゃあ、お邪魔な私達はそろそろ失礼しないと・・・!」
水田紀子「別にお邪魔じゃないから、いてくれてもいいのに。」
火見樹「いや、男のボクから言わせると年上と年下の女性が、一緒にいる状況って意外と困るんだよね。ボクはもう穂野香と珠理亜とは長い付き合いだから馴れてるけど、まだ中学生の憐太郎が素になれるのは君と2人っきりの時だと思うし。」
巽珠理亜『また会いに来るから、きょうはれんたろーとらぶらぶしてね♪じゃあね~!』
火見樹「じゃあね、紀子。」
沢之穂野香「紀子、それじゃっ!」
水田紀子「うん、じゃあね。」










水田紀子「・・・行っちゃった。学年もバラバラなのに、ああして時間を作って会いに来て、色んな話をしてくれるのは嬉しい。けど・・・だから余計に、帰った後の寂しさも大きいわ。それでも、みんなの存在は力になるから・・・頑張ろう、私。とりあえず、もうすぐレンが来るけど・・・」






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水田紀子「・・・あんまり穂野香達が海水浴の話をするから、こっそり用意してた水着、着てみちゃった。私もいつか、この水着を着て穂野香達と・・・レンと、海水浴に行けるのかしら?
・・・いや、行けるのかじゃなくて・・・私、絶対に行くわ。『ガメラ様』だって、きっと夢枕でそう言ってくれる筈。だから、待っててね・・・」






乾憐太郎「紀子、今週も来たよ・・・って、の、紀子っ!?」
水田紀子「あら、こんばんはレン・・・これはね、なんちゃってVR海水浴をしてたんだけど、レンもする?」






夏の日の君に・・・in真地町・おわり
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好釦