日省月試‐典零寺ハルカの気になるあの男子‐







[四ツ葉家・第七居間]



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『典零寺ハルカ様。今日は四ツ葉家にようこそおいで下さいました、なのです!四姉妹の皆様及びヒロフミ様のお世話をしている、メイドのみくと申します。以後お見知りおきを、なのです。』
「う、うん。宜しくね、みくちゃん。」



あれよあれよと言う間に、私はヒロフミ君と四姉妹に家の中の居間に案内されて・・・部屋でお掃除をしていた、このみくちゃんと出会いました。
明らかなピンク色の髪に、私より小さくてきっと年下の女の子なのに、しっかりとメイドのお仕事をしているみくちゃんを見ていると・・・可愛いなぁ・・・ではなく!
改めて私は今普通とは違う場所に来ている、と言う感じがしました。



「みっくー、今日もお掃除お疲れさーん☆」
「頑張ってね~♪みくちゃ~ん♪」
『はいっ!ありがとうございます!』
「・・・相変わらず立派だよな、みくは。」
「みくは昔から、私達姉妹のお世話をして下さっていますの。私達にとってはただのメイドでは無く、母親にも近い関係ですのよ。」
「そうなんだ・・・あれ?昔から?」
「僕も最初はびっくりしたけど・・・どうも、みくは『見た目に寄らず』って感じなのは間違いないみたい。」
「・・・私より、年上?」
「それで、本題だけど・・・今日、ハルカをここ・・・四ツ葉家に連れて来たのは、君になら僕と姉妹達の『本当の関係』について話していいと思ったからなんだ。」
「本当ならこの家の事も含めて、貴女にお教えする予定はありませんでした。この事は例外無く、血縁者もしくは一部の関係者以外には、決して知られてはならない事ですので。」
「だからあたし達は、ヒロフミとの関係を疑っているお前をあえて放っておく事にした。お前がどう言う人間なのか、確かめる為に。」
「でもね、ハルカちゃんと話したり接したりしてみて・・・わたし達は各々で、ハルカちゃんは信用出来る子だなって思えたの。自分から友達を作らないヒロくんがお友達でいるのも分かるなぁ、って。」
「だから、アタシとルカルカが出掛けたあの後にヒロっちとみんなで相談して、キミになら全部話してもいいかなって事になって、ヒロっちに連れて来て貰ったってワケ。」
「話し合い・・・じゃあやっぱり、ヒロフミ君も私が四姉妹と親しくなった事は知ってたの?」
「うん。月曜にチハルちゃんから既に聞いてはいたんだけど、ハルカがどんな子なのか自分で確かめたいって事になって、結論が出るまで黙ってたんだ。」
「まぁ、お前の品行方正が悪く無い限りは、個人的に交友は続けようと思っていた。あたし達とヒロフミの、共通の友人としてな。」
「『本当の関係』の事を打ち明けるか否か、の違いはありますが・・・どう言う結論になってもヒロフミさんの方から、私達と貴女が親しくなった事を話して頂く予定でしたの。ここでお話する事になるとは思っていませんでしたが、私個人としてはとても嬉しいですわ。」
「隠し事ばっかりでゴメンね、ルカルカ。でもね、この家に招待したって事がアタシ達がルカルカをズッ友として、本当に信用してるって証なんだよ!」
「『四ツ葉の四姉妹』みんなと仲良くなれるだけじゃなくて、わたし達の家にお呼ばれされるなんて、本当にすごい事なのよ?ハルカちゃん♪」
『えっと、みくの知る限りでこれまで四ツ葉・弥杜両家の血縁者でない、本当に赤の他人の方がここに入ったのは・・・10名いらっしゃるかどうかくらい、なのです。』
「そうなんだ・・・私も、あの『四ツ葉の四姉妹』にそこまで信用して貰えるなんて、すごく嬉しいです。それと・・・ヒロフミ君と四姉妹の『本当の関係』って?」
「・・・ここからは落ち着いて聞いて、ハルカ。僕はね・・・来年の6月12日、僕の誕生日までに四姉妹の誰かを、『花嫁』にしないといけないんだ。」
「・・・『花嫁』?」



花嫁・・・?つまり、結婚?
ヒロフミ君が、あの四ツ葉家の四姉妹と・・・結婚!?



「そ、それって、四姉妹の誰かと来年結婚するって事!?」
「まぁ、そうなるかな。僕の実家の『弥杜家』には先祖代々、百年に一度『四ツ葉家』の女性の誰かを『花嫁』にするしきたりがあって、そうする事で世界のバランスを保っているらしくて・・・それで僕がその百年に一度の番で、本当なら夢に『花嫁』にする女性が出て来るんだけど、何故か顔が見えなくて・・・えっと、ここまでは着いて来れてる?」
「だ、大丈夫だよ。何だか、歴史ものの恋愛作品みたいなシチュエーションだなぁ、って思って・・・」
「まぁ、僕もこの前の誕生日にいきなり聞かされて、その時は現実感を感じられなくて慌てふためいてばっかりだったから、着いて来れてるだけハルカは凄いよ。
それで僕は、聖アンファンテ学園に転入する少し前くらいから、夢に『花嫁』が出て来るようになるかもしれないから、って理由でこの家で四姉妹と一緒に住む事になって、三重から引っ越して来たんだ。」
「この家で住んで・・・へっ!?も、もう同棲してるの!?」
「一応そうなるかな?まっ、どっちにしてもアタシ達の誰かといつか結婚するし、前倒しみたいなもんでしょ☆」
「フウナ姉はああ言っているが、一応同棲に近いと言うだけだ。変な想像はしないでくれ。」
「私やお姉様方がそれぞれお話しした通り、ヒロフミさんと現時点では健全なお付き合いをさせて頂いていますから、ご安心下さいませね。ハルカさん。」
「でもね、ヒロくんと過ごす毎日はドキドキでいっぱいよ♪この前もね、わたしが部屋で着替えていたらヒロくんが入って来ちゃって・・・♡」
「いやいや、トウカお姉ちゃん。あれ、着替えてるのをわざと言わずに僕を入れましたよね?」
「あらあら、そうだったかしら~?うふふっ♡」
「トーカンも相変わらずダイタンだねー☆でも、ヒロっちったらそれくらいしないとラッキースケベもスルーしちゃうからねー?」
「だからって廊下で待ち構えて、僕にぶつかって押し倒されようとするのは止めて下さいよ、フウナちゃん。心臓に悪いから・・・」
「別にアタシが押し倒す体勢でも良かったんだよー?ヒロっちがアタシを見てドキドキするのは一緒だし☆」
「そう言う問題じゃないですって!」
「フウナお姉様もトウカお姉様も、やはり積極的ですわね・・・やはり、私も何か大胆なアプローチを・・・」
「やらなくていいよ!?チハルちゃん!君が何かやったら本当にシャレにならない事が起こりそうだし・・・」
「・・・そう言う事で、多少ヒロフミにアプローチをする事はあるが、不適切な行為はしていない。だから安心してくれ。」
「わ・・・分かったわ。アキミがそう言うなら・・・」
「うふふっ♪そう言うアキミちゃんもね~、こっそり『ごほうび』って言ってヒロくんのほっぺにちゅーしてたりするのよ~♡」
「ト、トウカ姉・・・!」
「アッキーって、そう言う隅に置けないトコあるよねー☆姉として、出し抜けし過ぎるのはちょっと見過ごせないぞー?」
「フウナ姉まで・・・」
「あれはびっくりしたなぁ・・・アキミは本当に突然しかけて来るから、ある意味一番心臓に悪いかも。」
「それはもう、『ごほうび』はいらないと言う事か?ヒロフミ?」
「・・・いや、『おしおき』だけはキツいからそれはアリで。」
「アキミお姉様は、さりげなく踏み込むパターンなのですね・・・では、先週ヒロフミさんと2人っきりになった際もやはり・・・」
「チハル、それ以上余計な事は言わなくていいぞ?」
「でもさー、ハルハルだって先週ヒロっちより先に図書館に行って、そのままデートに持ち込んでたよねー?お姉ちゃんにはお見通しだゾ☆」
「えっ!?どうしてご存知なんですか、フウナお姉様!?」
「あれ、そうだったんだ・・・やけにドンピシャにチハルちゃんがいるな、って思ってはいたけど。」
「頭を使うのは得意だからな、チハルは。」
「あらあらっ♡チハルちゃんも、結構したたかね~?」
「もう、あまり言わないで下さいませ・・・」



今話を聞いたばかりの私には、まだ理解が追い付かない所はありますが・・・ヒロフミ君と四姉妹がある意味「深い関係」にあるのは確かなようです・・・
それに、四姉妹同士で話すのを見るのは初めてですが・・・あのアキミがあんなに焦っていたり、トウカさんがいたずらっ子みたいだったり、恋愛面でもチハルちゃんは熱心だったり、話の主導権はやっぱりフウナさんが握っていたり・・・と、普通の生徒では見れない珍しい光景が見れて、姉妹のみんなが本当に仲が良いのも伝わって来ました。
あと、ヒロフミ君って意外とツッコミ気質なんだなぁ・・・とも思ったりしました。



「と、とりあえずヒロフミ君の事情や『特別な関係』については分かりました。では、四姉妹の皆さんはヒロフミ君の事が本当に好きで、一緒に暮らしているんですか?許嫁みたいな立場だから一緒にいるんじゃなくて、ヒロフミ君の事を本気で・・・」
「それはホントだよ!じゃなきゃこうやってみんなヒロっちにアピったりなんかしないし、アタシはヒロっちを世界で一番愛してるー!!って、世界の中心で叫べるくらいヒロっちが大好きだもん☆」
「わたしも、ヒロくんがたまらないくらいだ~いすき♪だからこれからもたっぷり、ヒロくんを愛してあげるの・・・♡」
「・・・あたしも、昔も今もヒロフミの事を愛している。誰に否定されようと、それは絶対に揺るがない。」
「私も、あの日出会った時からヒロフミさんを一途に、深く愛しています。この想いだけはお姉様方にだって負けませんし、決して譲りませんわ・・・!」



私からの問いに、四姉妹の誰もが強い眼差しで同じ答えを返しました・・・
ヒロフミ君の事が、大好きだと。
その目を見ると、一切嘘は無いのが伝わって来て・・・



「僕と四姉妹は、子供の頃に一度だけ会った事があるんだ。その日、僕は大阪の病院に入院してるひいおじいさんに会う為に両親と一緒に大阪に来てたんだけど、帰りに両親とはぐれちゃって・・・その時に、四姉妹に出会ったんだ。」
『四姉妹の皆様は子供の頃から、一人前の女性になる為に厳しい教育を受けていまして、その時は手掛かり無しで自分達だけでこの家に帰って来る、と言うレクリエーションをしていたのです・・・』
「あの日・・・私達は突然見知らぬ場所で置き去りにされる形でレクリエーションが始まりまして、誰もが不安で一杯でどうすればいいのか分かりませんでした。そんな私達を助けて下さったのが、ヒロフミさんでしたの。」
「ヒロくんは精一杯わたし達を励ましたり、色んな事を話してくれたり、絵を描いたりしてくれたの。そのお陰でわたし達も元気になって、両親が迎えに来たヒロくんと別れてからも不安にならずに、最後まで頑張って家に帰れたのよ。」
「その後、弥杜家の『花婿』は必ず黒い八角のペンダントを付けている事を教えられて、あたし達はヒロフミが将来の『花婿』なのを知った。そしていつかヒロフミと再会する時の為に、辛い日々を耐えた。」
「ヒロっちはね、アタシ達にとって灰色だった日々に七色のパレットで鮮やかな色を付けてくれた『ヒーロー』なんだ。だからみんなヒロっちと再会する前からヒロっちが大好きで、『花嫁』としてヒロっちと結ばれる為に今日まで頑張って来たんだよ。」
『あの頃、四姉妹の皆様は厳しい教育の日々が続いたばかりに、笑う事を忘れてしまっていました・・・そんな皆様に再び「笑顔」を取り戻して下さったのが、ヒロフミ様なのです。』
「・・・このペンダントはその日、ひいおじいさんが『愛は未来へ・・・』の言葉と共にくれた物なんだ。だからこれは昔から続いて来た『花婿』の証と、僕と四姉妹を出会わせてくれた大切な物で・・・きっとあの日から、僕と四姉妹の運命は決まっていたんだって今は思えるし、いつかは僕が『花嫁』を・・・『未来』を決めないといけない。だから、僕は彼女達と一緒にいるんだ。」



「歴史ものの恋愛作品みたい」、と私は思いましたが・・・それは正しかったのかもしれません。
それは今こうして、ヒロフミ君と四姉妹が昔から続く「弥杜家」と「四ツ葉家」の歴史を繋いでいるのですから。
それに根拠の無い荒唐無稽なデタラメだなんて、私は思いません・・・だって、私の「友達」が私の事を信じて真剣に話した事なのですから。



「・・・私も、信じます。ヒロフミ君と四姉妹は、運命で結ばれた素敵な関係なんだって。」
「ありがとう、ハルカ。素敵な関係って言ってくれて、嬉しいよ。」
「そうか・・・お前を信じたのは、正解だったな。ハルカ。」
「さっすがアタシ達が認めたルカルカ!話がわっかるー!!」
「貴女も素敵よ、ハルカちゃん♪」
「ハルカさんなら分かって下さると、私も信じていましたわ・・・!」
『みくからもどうか、お礼を言わせて下さい!なのです!』
「な、何だか皆さんから一斉に褒められると、恥ずかしいです・・・」
「まーまー、そう言わずに☆これでアタシ達とルカルカは真のズッ友になったんだし・・・あっ、そうだ!せっかく四ツ葉家に来たんだから、ヒロっちと一緒にアタシ達の部屋に来ない?」
「部屋に、ですか?」
「えっ?なんで僕も一緒に?」
「だってアタシ達のプライベートを見せるんだから、ヒロっちも必須でしょー?キミはもう、アタシ達の一部みたいなもんだしっ☆ってわけで、みんなもいいよねー?」
「あらあら♪それはいいわね、フウナちゃん♪わたしは賛成よ~。」
「あたしも、別に構わないぞ。」
「私も賛成しますわ。ハルカさんは、どう致しますか?」
「うーん・・・こんな機会は中々無いから、私は行ってみたいかな。ヒロフミ君はどう?」
「・・・分かった。こうなったら、僕も付き合うよ。」
『ではハルカ様達がお部屋に行っている間、残りの皆様はみくとここでトランプをしましょう!なのです!』
「そだね、みっくー!みんなもありがと☆じゃあルカルカ、まず誰の部屋に行く?」
「えっと、それでは・・・」
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