日省月試‐典零寺ハルカの気になるあの男子‐











[‐水曜日・聖アンファンテ学園‐
ホームルーム前・2年3組教室]



「あれ?ヒロフミ君、カバンに付いてるのって『チュンたろう』?」
「うん。昨日フ・・・母さんがガシャポンやったらもう持ってて余ってるから、って言って僕にくれたんだ。僕は汚れたり無くしたりするのがもったいないから、アクセサリーとかストラップとかはあまり付けたくなかったんだけど・・・どうしてもって言われて。」
「それ、私も分かるな~。でも、こう言うアクセサリーがきっかけで誰かと仲良くなれる事も、あるかもしれないよね。」
「出会いのきっかけにはなるかもね。僕もこのペンダントで・・・」
「ヒロフミ君?」
「あっ、ううん。何でも・・・それより僕は、ハルカは誰とでも友達になれる人だって思うから、こう言うのをもっと付けてみてもいいと思うよ。『みがわりくん』とかどう?」
「みがわりくん、可愛いよね♪考えてみよっかな。」



今日のヒロフミ君は、朝も昼休みも何処にも行かずにこうして私と話すだけで、チハルちゃんやアキミと話す様子もありませんでした。
このまま今日は何も無いのかと思い、授業が終わって手芸部の部室に行こうとした・・・その時、予想だにしていなかった「驚き」は突然やって来ました。






[放課後・被服室前]



「あらあら♪そんなにわたしと会うのが待てなかったの?ヒロくん♪」
「ま、まぁそうですね。トウカお姉ちゃん。」


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ヒロフミ君が、四姉妹の次女のトウカさんと話していたのです・・・!
四ツ葉瞳和(トウカ)さん・・・3年1組の上級生。
その学生離れした圧倒的な色気、グラビアアイドルに匹敵する抜群のスタイル、声を聞くだけでほわほわとする癒し系な言動から、男子の約9割のハートを掴んでいると言われている、男子みんなの「お姉さん」。
お洒落な一面もありまして、去年の文化祭のアンケートで一番人気だったのは、自分で衣装プロデュースをしたトウカさんのクラスの劇「シンデレラっぽいもの」でした。
私も劇を見ましたが、低予算とは思えない煌びやかな衣装は手芸部の私にとっては、衝撃すら感じました・・・
蝶で言うなら・・・オオムラサキかな?



「じゃあヒロくん、行きましょ♪」
「は、はい。」



かなり緊張したヒロフミ君は、トウカさんに連れられるように被服室に入って行きました。
トウカさんを前にした男子の半数が同じ反応をしてはいますが・・・それにしては、「トウカお姉ちゃん」と言うやや近い関係の呼び方をするのに、少し違和感があり・・・



「あらあら♪こんなに大きくしちゃって・・・ヒロくんったら、めっ♪」
「すみません・・・でもどうしても、こうなっちゃいまして・・・」
「もう、しょうがないわねぇ?お姉ちゃんが、すっきりさせてあげる・・・♡」
「ちょっ、トウカお姉ちゃん、胸が・・・」



えっ・・・?ええっ!?
こ、こっ、これって・・・!ふ、不純異性交遊どころでは無いのでは!?



「うふふっ、これくらいでぴくぴくしちゃって、ヒロくんったら可愛い~♡ほら、こうすると・・・気持ちよ~く、出来ちゃうわよ♪」
「す、すごい・・・流石はトウカお姉ちゃんだ・・・」
「じゃあ、今度はヒロくんの番ね?お姉ちゃんみたいに、やってみて♪」
「わ、分かりました。よし・・・!」
「んっ・・・いい感じよ♪ヒロくん、上手ねぇ・・・」



・・・わ、私の体も変に熱くなって来ました・・・
これ、このまま聞き耳を立てていていいのでしょうか・・・?スマホを見ているフリはしていますけど、多分顔もかなり赤くなっているでしょうし・・・



「ありがとうございます、トウカお姉ちゃん。続きは家でやりますので、それじゃあ。」
「頑張ってね、ヒロくん。バイバ~イ♪」



と、ヒロフミ君が突然被服室から出て来ました。
慌てて近くの階段まで逃げて、見付からずに済みましたが・・・ヒロフミ君、かなり嬉しそうな顔してたなぁ・・・
やっぱり、トウカさんと・・・そ、そう言う事を、してたから・・・?
こうなったら、勢いでそのままトウカさんに突撃取材を試みますっ!



「あ、あの、四ツ葉トウカさんっ!私、2年3組の典零寺ハルカと言うのですが、少しお話を聞いても宜しいでしょうかっ!」
「あらあら?貴女がハルカちゃんね?チハルちゃんとアキミちゃんから話は聞いてるけど・・・うふふっ、いいわよ♪」



勢いのまま突然入って来た私にも動じず、トウカさんは私の事を受け入れて下さいました。
それにしても・・・トウカさんって、本当に一歳しか違わないとは思えないくらい、大人な感じです・・・
圧倒的な男子人気があるのも納得ですし、女子からも嫌な話題をあまり聞かないのも分かります・・・女性から見ても、トウカさんは「きれいなお姉さん」なんですね・・・



「あ、ありがとうございます。私、最近同じクラスに転校して来た弥杜ヒロフミ君の友達なのですが、トウカさんとヒロフミ君が深い関係にあると・・・」
「ヒロくんと?あの子とはお友達だから、恋人じゃないわよ~?」
「えっ、ですが・・・」
「そ・れ・よ・りっ♡ハルカちゃんって可愛いから、ちょっと着せてみたい服があるの♪ここでお着替えしても、大丈夫かな~?」
「お、お着替え?」
「うんうん♪これもまた、アイドル活動だと思って・・・ささっ、それじゃあお着替えしましょうね~。」
「え、えっと・・・」



あれよあれよと言う間に、私はトウカさんの手で制服から違う衣装にお着替えされていました・・・
凄く手慣れた手付きでしたが、他の姉妹にも同じような「お着替え」をさせているのでしょうか・・・?



「わぁ~!すっごくかわいい~っ♡やっぱり、お似合いだわ~!ハルカちゃんって、スレンダーで長くてツヤツヤした黒髪だから、こう言うのが似合うって思ってたけど・・・わたしの勘に、間違いは無かったわね~♡」
「あ、ありがとうございます・・・」
「お礼を言うのはわたしの方よ、ハルカちゃん♪じゃあ、幾つか写真を撮らせてね・・・はい、ピース♪」



それから私は、まるでモデルさんの撮影のようにトウカさんのスマホで様々な角度から撮られまして・・・トウカさんは有名なファッション雑誌の読者モデルをやっているのですが、撮られるだけで無く撮る方も慣れているようです・・・
制服に着替えてからトウカさんと連絡先を交換して、その日の内にトウカさんからこの時の写真が送られて来ました。
「この話をした人に必ず見せてね?」と言われていますので・・・一応、写真の一枚をお見せします。






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背景は・・・えっと、トウカさんが言うには「モザイクアプローチ」?の防止の為に、専用の加工アプリで加工しています。
こうして改めて見ると、少し恥ずかしくはあるのですが・・・同時に、この写真の中での私は本当にモデルさんになったかのような・・・そんな気分にさせて下さるのが、「お洒落上手」で有名なトウカさんなのかな?と私は身を持って、強く思いました・・・






「また連絡するわね、ハルカちゃん♪じゃあ、バイバ~イ♪」
「はいっ、さようなら♪」



こうして、トウカさんと別れた私は改めて手芸部へ・・・あれ?何か一つ忘れているような・・・あっ!ヒロフミ君との被服室での事を聞きに来たのでした・・・!
話す間も無かったと言いますか・・・ただ、もう聞く勢いも勇気もありませんし、トウカさんと親しくなってしまった今は更に難しいですし・・・
何だか、チハルちゃんみたいな感じになってしまいましたが・・・今は私の気のせい、と言う事にさせて頂きます・・・!






「・・・ごめんね、ハルカちゃん。ヒロくんとわたしの本当の関係は、知られちゃダメなの・・・でも、撮影会は本当に楽しかったわ♪ありがとねっ♡」
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好釦