‐バラガミ‐ 今によみがえる飛梅伝説(モノクロ版)






・・・全部、思い出しました。
わたしは・・・桜。
菅原道真(みちざね)様が愛した・・・あの桜。
かつて、今の桜花神社と同じ場所で咲いていた・・・「飛梅伝説」に出て来る都に残った、あの桜の生まれ変わりだったんですね。
悲しみから枯れ果てた後も、いつか必ず道真様に巡り会う為に人になる道を選んで、1100年かけて赤ちゃんになって・・・桜花神社でパパとママに引き取られた。
だから私は、昔から桜花神社が大好きだったんですね・・・!
それから、貴方達の事も・・・



「・・・うめさん、バラさん。
・・・久しぶり。」



――其の呼び方・・・本当に思い出した様だな・・・サクラ。



『ほんま、久しぶりやわぁ・・・桜はん。生まれ変わってまで、この地に来てくれてんなぁ・・・そういうとこ、昔と変わってへんなぁ。
でもまだ、真はんは全部思い出すのに時間かかりそうやから、それまでなんであんさんがここに来たんか、詳しく聞こうやおまへんか・・・バランはん?』



――ドウシンは直接転生したサクラと違って、幾多にも渡って血を交って来たからな・・・致し方無き事か。
単刀直入に言う・・・私は、ドウシンの亡骸をヘイアンの地に返す為、此処に来た。
彼奴はヘイアンの者だ・・・だが、彼奴は強引に此の地に流され、其の侭此の地に骨を埋める羽目に成った・・・全ては、傲慢で無知なニンゲン共の策略に拠って・・・!
だから私はドウシンの無念を晴らし、ニンゲン共に彼奴の無念を思い知らせる・・・セッツの地に落ちた其の日から私は幾星霜、願って居たのだ・・・!



『それで、大宰府天満宮に行ってみちまさはんの遺体を奪い取って、それからはしこたま暴れるつもりやった・・・って事やな?あんさんは過激派やから、やりかねんと思ってたわぁ。
でもなぁ・・・うちはこの地に飛んでからみちまさはんに会って、あの人と子供の世話をして、あの人が大往生を遂げるとこまで一緒におってん・・・それにみちまさはんは最期にうちに、大宰府を守ってくれって頼んでたんよ。
あんさんの気持ちも分かる・・・それでもうちは、そんな阿呆な事をこの地で許すわけにはいかんねんよ。たとえ、あんさんでも・・・』



バラン様・・・いや、バラさんの言いたい事も、うめさんの言いたい事も、今は分かります・・・
だって、わたしとうめさんとバラさんは、酸いも甘いも一緒に過ごして・・・結局わたしはどちらにも、なれなかったから・・・






「・・・わしならもう、平安なぞ恨んではおらんぞ?だから怒りを鎮めい、バラン。」



「・・・真、ちゃん?」



ーー・・・!!
御主、なのか・・・ドウシン・・・?



『やっと、全部思い出したみたいどすなぁ。真はん。
いや・・・菅原道真はん?』
「そや。体は末代、でもこの意志は間違いなく平安一番の天才!菅原道真じゃ!
おう、お梅。わしが死んだ後も約束を守ってくれてすまんのぅ。今や太宰府の土地神になっとるんか・・・流石はお梅やのう!
バランも、でかい図体の癖にちっちゃい事でいつまでも悩みよって。わしが死んだ後に朝廷に祟りを起こしたんを知らんのか?恨みなんてあれでもうだいぶ晴らしたし、むしろ神様にして貰って笑いが止まらんくらいじゃ!やから、阿呆な事するんは止めい。」



ーーふっ・・・間違い無く御主の様だな。ドウシンよ。
私の幾星霜の願いが、馬鹿馬鹿しく思えて来たな・・・



再びしゃべり始めた真ちゃんは、わたしの知る真ちゃんじゃない・・・
ですが、今思い出した昔のわたしはよく知っている・・・もう会えないと思いながら、あと一目でも会いたいと願い続けていた、道真様でした・・・!
どうしましょう・・・また涙が、止まりません・・・!






「それから・・・桜。わしに会いに来てくれて、ほんまありがとうな。
長かったな・・・ずっと泣かせてもうたな・・・でも、こうやってまたみんな一緒になれて、お前にまた会えて・・・わしは最高に幸せじゃ。」
「・・・!!
みち、ざね・・・さま・・・!」



その言葉が、嬉しくて。
その言葉が、聞きたくて。
ただ貴方が、愛おしくて。
わたしはつい、道真様の・・・真ちゃんの胸に飛び込んでいました。
ああ・・・だからわたしは最初にママから「飛梅伝説」の話を聞いて、切なく思えて・・・忘れられなくて。
真ちゃんと離れ離れになった、あの日から・・・あんなにも会いたいと、思い続けていたのですね・・・!



「おやおや、こりゃ『飛梅』じゃなくて『飛桜』じゃのう。」
『ほんま、みちまさはんは昔から桜はんには優しいわぁ。うちにもたまには優しくして欲しいどすな~?』
「お梅はそう言う女とちゃうから、しゃあないじゃろう。」



ーー・・・何でも良い。
再びドウシンと再会し、皆が幸福に為れた・・・其れで私は満足だ。
だからもう、私は此の地を・・・ウメが守りし地を荒らすのは、止めよう・・・
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好釦