‐バラガミ‐ 今によみがえる飛梅伝説(モノクロ版)







数時間後、福岡県・博多駅付近・・・



「ってわけで、博多に戻って来たけど。さくらのやつ、いきなり『博多駅に行ったらいい事あるから、早く来て待っててね~!』とかメールして来て、どうしたんだろ?」
『もしかしたら、ほんまに会いに来たんとちゃう?』
「こんな昼間に、わざわざ?いくらなんでもそれは・・・と言うか、ほんとにおれに着いて来たけど・・・お梅さんって大宰府天満宮の土地神様みたいな感じなのに、離れてて大丈夫?」
『へーきどす。あそこはうち以外にも神様がおるし、うちがおらんくても誰もかまへんよ。』
「そういう問題かなぁ・・・」



さくらに会えるかもって思うと、すごく嬉しくなったけど・・・ちょっとだけ、残念にも思った。
だって、おれ・・・さくらに「会いに行く」って、約束したから・・・
まぁ、そもそも会いに来たなんて言ってないし・・・待っとく事にしよう。






「ほ・・・本当に福岡に着いちゃいました・・・!」



――如何した、此れが御前の望みでは無かったのか?



「も、もちろんです!まさか、本当に連れて来て下さるなんて・・・ほんとに、ほんとに感謝感激雨あられですっ!!」



――御前は本当に意味不明な言動ばかりだな・・・別に構わんが。
此処に降ろせば良いか?



「はいっ!宜しくお願いします!」



嵯峨野さくらです。
わたし、バラン様に連れられて本当に福岡に来てしまいました・・・!
人目に付かないように、博多駅の端に降ろして貰いましたので、これから真ちゃんとの待ち合わせ場所まで行こうと思います。
真ちゃん、来てくれてるかな・・・?
あっ、ちなみにバラン様は「信仰心」の低い人には見えないらしいので、見られる心配はほぼ無いだろうと言っていましたが・・・それはつまり、誰も神様を信じていないと言う事ですよね・・・
それはそれでわたし、さみしいです・・・



――私は別件を果たす為、暫し離れる。
其れ迄は此処で待っていろ。



「了解です!それでは、バラン様もどうか別件を楽しんで下さいね~!」



バラン様はそう言って、再び飛び去って行きました。
それではわたしも、真ちゃんの所に行って来ます!






「うおっと・・・!」
『木枯しでも無いのに、変に強い風やわぁ・・・』
「なんか・・・いきなり台風が来た気分なんだけど・・・」
『あんさんは男なんや、これくらい松の木みたいにおきばりや・・・っ!?』
「・・・どうしたの?」
『あんさん、ちょい待ちぃ!!』



急に強い風が吹いて来たかと思ったら、急にお梅さんが空を見上げながら両手からたくさんの蔦を出して、「何か」を縛った。
おれには何も見えないし、聞こえないけど・・・風の渦の中に、大きな「何か」がいるみたいなのは分かる。



『今の世の人には自分は見えへんって思っとるかもしれへんけど、うちにはお見通しや・・・何をしに来たんや!バランはん!』
「えっ?バラン?弁当に入ってる、あの?」



ーー・・・随分と久しいな、ウメよ。
此の地に来る以上、何れ御前と対面すると思っては居たが、此処迄早いとはな。



『あんさんこそ、ここに来た理由はなんとなく分かる・・・だからこそ、あんさんを絶対に大宰府天満宮には行かせへん!』
「バランを?天満宮に?どういう事・・・?」



ーー我が目的を理解して要るの為らば、邪魔をするな!
私は、今こそドウシンの無念を晴らさねば為らないのだ!



『やろうなぁ。でもそんなん、みちまさはんは望んでへんのんよ・・・!やから、うちは全力であんさんを止める!』
「・・・みちまさ?えっと、そんなにバランを入れたくないの?その人?」



お梅さんが必死に、誰に、何を言いたいのかが全く分からない・・・
確かにさっき、駅で弁当は買って食べたけど・・・バランは入って無かったと思う。
とりあえず、この「みちまさバラン問題」は解決するのか・・・おれは関係あるのか、知りたい・・・






「あれ・・・?」



さっきからバラン様の風が止まないと思ったら、バラン様が空中で止まっていました。
しかもよく見たら、バラン様の下から蔦みたいなものが見えます・・・
はっ!もしかして、バラン様が見える人が神通力か何かでバラン様を捕まえようとしているのではないでしょうか!?
あっちは真ちゃんとの待ち合わせ場所ですし・・・わたし、行って来ます!
バラン様、真ちゃん、待っていて下さい・・・!
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好釦