アイスクリーム シンドローム







京都のプールでは、3人娘が談笑に興じていた。
手に持ったアイスクリームは、もうあと一口で食べ終わりそうなくらいに減っている。



「そうなんだ・・・あのガメラって怪獣がまさか、四神の一体だったなんて。他の怪獣とは違う、優しい感じがしたのは間違いじゃなかったのね。」
「遥もあの事件でガメラと一緒に戦ってた朱雀を呼びに行ったなんて、凄いね!」
「私に出来る事を、精一杯やろうって思って。でも彼女達の、モスラの力になれて良かったです。」
「自分がどんなに小さい存在だって思い知っても、諦めない限りは必ず何かの力になれる。わたしはそう思うな。でも、またフォライドが現れたなんて・・・」
「うっ、あたしにとっては嫌な名前だわ・・・」
「機会があれば、憐太郎君と紀子ちゃんにもまた会いたいですね。それにガメラにも・・・」
「おっまたせ~!」



するとそこへ、遥の友達が戻って来た。
2人とも右手にはやはりストロベリーのアイスクリーム、左手に何本かジュースを抱えており、売店で何を選ぶか手間取っていた事がうかがえる。



「って、あの・・・誰ですか?」
「あっ、ごめんなさい。あたしとこの子、以前旅行中の遥ちゃんと会った事があって、つい話し込んじゃったの。」
「こんにちは。」
「そうですか~。そうそう、遥。私達のジュースここに入れさせてね~。」
「うん。いいよ。」
「運命の再会、ってやつですか?」
「まさにそうね♪あたし達、東京から観光で来たから、まさか遥ちゃんと会えるだなんて思ってなくて。」
「わたし達、お邪魔でしたか?」
「ううん、そんな事ないわよ~。」
「むしろ、あたし達が久々の対面を邪魔しちゃってるかも・・・よし、それならスライダーにでも行くぞ!」
「行こう~!」
「えっ!?ふ、2人とも、そんな変な遠慮しなくていいよ?それなら5人で・・・」
「でも、お2人さんは東京の人なんだろ?じゃあ次いつ会えるかなんて、分からないじゃんか。」
「私達となら、いつでも会えるから。遥はお2人さんと遊んでて~。夕方頃になったら迎えに来るからね~。」
「お2人さん、遥の事をよろしくお願いします。じゃっ、またな~!」
「あっ、2人とも・・・」



半ば強引にだが、愉快な表情で2人はアイスクリームを持ったまま、スライダーの方へ走り去って行った。



「行っちゃった・・・」
「やっぱり、わたし達がいたからかな?」
「・・・きっと、2人なりに私の思ってる事を察してくれたんだと思う。私、みどりさんと睦海ちゃんともっとお話したいって思っていたけど、私を誘ってくれた2人を置き去りにするわけにはいかないし、どうしようって思ってたから。」
「だから自分達が別行動する事で、遥ちゃんのしたい事をさせてあげたのね。遥ちゃんの事をよく分かってる、いい友達じゃない。」
「高校に入って、初めて出来た友達なんです。授業や部活に、遊ぶ時でもいつも私の為に色々としてくれるんです。あとでお礼言わないと。」
「わたしもそんな友達が欲しいなぁ。じゃあ、遥のお友達の親切に甘えて遊んでもいい、かな?」
「うん。せっかくプールに来たから、プールに入って遊ぼっか。」
「そうね。じゃあ、まずは流れるプールよ!」



今現在、スライダーの階段を上り始めている2人の気遣いに感謝しつつ、一斉にアイスクリームを食べ終わった3人は流れるプールに入った。



「わぁ~~~~~!!」
「わぁーーーっ!!」



何故かアイスクリームを手に持ちながらスライダーを滑る、遥の友達2人の叫びを耳にしながら、3人は流れるプールを満喫する。



「わぁ~!本当に流れてる~!」
「そうでしょ。しかも、睦海ちゃんは浮き輪を付けてるから余計にね。」
「流れるプールって、こうやって流れのままに浮いているだけでもいいですよね・・・」
「人が多いと無理だけど、ここで泳いでみたら加速が付いて面白いわよ。」
「そうなんだ!わたし、やってみようかな・・・あれ、あの子水の流れに逆らって歩いてるよ?何だか健みたいね。」
「と言うか、健は毎回やってたわね・・・『流れに逆らってこそ男だ!』とか言って。」
「たまにここで会う男子もやっています・・・」
「ふーん。男の子って、考えてる事が同じなんだね。」



場所を変え、通常のプール。
水深の浅い入り口付近で3人はビーチボールで遊んでいる。



「はいっ!遥ちゃん!」
「わっ、ええっと、睦海ちゃん!」
「よ~し、いくよ!みどり!」
「えっ、きゃっ!」



・・・が、睦海が勢い良くスマッシュをかましてしまい、みどりが返しきれなかったボールは彼女の後ろの方へ飛んで行ってしまった。
更に無理にボールを受け止めようとしたみどりは軽い水しぶきを立て、尻もちを付いてしまう。



「あっ、ボールが・・・取りに行きますね!」
「ご、ごめんね、みどり。ついついやっちゃった・・・」
「・・・む、つ、み、ちゃ~ん!よくもやったわね~!」



髪の毛まで濡れた顔を下を向け、いかにも拗ねているような素振りを見せていたみどりであったが・・・突然顔を上げ、意地悪そうな笑顔を睦海に見せたかと思うと、起き上がって睦海目掛けて水を掛けた。



「へっ、きゃあ!ちょっと、みどり~!」
「うふふ~!お姉さんに刃向かったお仕置きよ~!」
「すみません、取って来ました・・・って、これは一体?」
「あっ、はるか!お願い、助けて~!」
「駄目よ、遥ちゃん!あたしを手伝いなさ~い!」
「ど、どうしよう・・・それなら、えいっ!」
「ちょ、ちょっと遥ちゃん!なんであたしにも攻撃してんのよ~!」
「喧嘩両成敗、です!」
「2人ともひど~いっ!こうなったら、本気でやっちゃうから!」
「遥ちゃんの裏切り者!覚悟しなさ~い!」
「わあっ!そんな、2人掛かりで・・・!」



互いに水を掛け合いながら迷惑そうな台詞を並べつつも、3人の表情はとても楽しげなものだった。
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