拍手短編集







ギュウウウ・・・



今、チャイルドは鍵島のすぐ隣にある小さな無人島にいる。
しかし辺りには凄まじい雷鳴が轟き、絶えず豪雨が降り注いでいた。






きっかけは、手に持っている桃色の果実だった。
数時間前、島の周辺を泳いでいたチャイルドは偶然この島に生っていた桃色の果実を見つけた。
初めて見るそれはチャイルドの好奇心を誘い、自然にチャイルドを島へと向かわせた。
果実を取る事自体は簡単であったのだが、問題はその後だった。
そう、丁度小笠原諸島に巨大な台風が迫っていたのだ。
しかもこの辺りは小笠原諸島の外れであり、真っ先に台風の被害を受けてしまった。
こうして今、チャイルドは無人島から戻れないでいる訳だ。



ギュウウウン・・・



地面に体育座りしながら、島に来た事を後悔するチャイルド。
本当はゴジラに喜んで貰う為に島へ果実を取りに行ったのに、逆に裏目に出てしまった。
誰もいない、誰も助けてくれない、一人ぼっちの時間が長く続いた・・・その時、辺りに地響きを起こし、地面の下からチャイルドの前に何かが現れた。

[ギュオオオオン?]



ズゥイイイイン・・・



そう、チャイルドの親友・バラゴンだ。
この台風の中、チャイルドを見ない事に気付いたバラゴンはチャイルドを探し続け、ここまで行き着いたのだ。
バラゴンの姿を見て安心したチャイルドは寂しさのあまりバラゴンに抱き付き、そのまま大声で泣いた。
バラゴンもチャイルドの頭を撫で、チャイルドを慰める。
しばらくすると気が済んだのか、チャイルドはバラゴンから離れると元気になった事をアピールする様にガッツポーズを取った。
そしてチャイルドはバラゴンが使った穴を通って島から脱出した。






数時間後、嵐は去り、再び青空が戻って来た。
無事ゴジラの元に帰ったチャイルドは、早速ゴジラに果実を見せた。
だがゴジラはチャイルドの姿を見るや否や、チャイルドに向かって手を振り上げた。
叱られる事を覚悟し、チャイルドは固く目を瞑る・・・が、待っていたのは優しくチャイルドの頭を撫でるゴジラの姿だった。
その優しさにチャイルドは顔を綻ばせ、ゴジラはチャイルドから果実を受け取ると、景気よく口に入れた。






ちなみにこの果実、人間界では劇薬に使われる程危険な果実である。
それを食べたゴジラがどうなったかは、また別の話。

[ギュオギュオン・・・]
5/44ページ
好釦