拍手短編集




「いただきます。」



妃羽菜家の一日は、この一言から動き始める。
今日も食せる事を感謝し、遥と佳奈他は炊きたての白米に箸を付けた。
しかし食事の最中、佳奈他は遥の様子がおかしい事に気付いた。
遥はしきりに下を向き、何かしている。



「どうしたの?」
「な、何でもないよ。」



そう言っている遥の顔は明らかに動転していた。
佳奈他はひとまず詮索をやめ、食事を続ける。
それからしばらくして食事を終えた遥は手に何か持ち、慌てて自分の部屋へ戻った。



――何か引っ掛かるねぇ・・・



佳奈他は早々と後始末を済ませると、こっそり遥の部屋へ向かった。
部屋の前に来ると遥の声とは違う、別の声が聞こえて来る。



クィキウィィン・・・



「あっ、静かにしてモスラ。貴方が来てる事は秘密なんだから。あとこれ食べる?朝食の卵焼き、袋に入れて来たの。」

――・・・妖精さんが来てるのね。
じゃあ、黙ってあたしは退きましょうか。



佳奈他はくすりと微笑むと、階段を降りていった。
扉の向こうからは遥の楽しそうな声がいつまでも聞こえていた。

[拍手ありがとう♪]
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好釦