Recollection of 「VS」






「メルトダウン!」



1200に到達したゴジラの体温値を見て、健吉が叫ぶ。
それと同時に、ゴジラの辺りは白い蒸気と赤い熱気に支配された。
己の限界を越えたゴジラは、幻想的にも見えるその世界でそれでも生きようと、苦しみながら自身と抵抗する。



「全弾発射!」
「超低温レーザー全開・・・!」



スーパーXⅢが、地上部隊が幾度と無くゴジラへ冷凍攻撃を仕掛ける。
冷気と熱気がぶつかり合い、瞬く間にゴジラの周囲は白の領域と化す。
だが、そこは何故か異様な静寂に包まれ、まるでここだけが違う次元の様だった。



「出力全開、エネルギー限界値!」



本部モニターのα・β・γ線のグラフが、みるみるうちに測定不能なまでに跳ね上がる。
それは今、東京で起こっている事が如何なるものであるのかを示していた。



「物凄い放射能だ・・・」



たった一体の、しかし余りにも大きな生物が出す命の値に、黒木は一言そう呟く。



グルルルルル・・・



やがてゴジラは動きを止め、ゆっくりと口を開く。
何処か安楽的にも見えるその表情は、自らの終わりを受け入れたかのようにも見えた。
ゴジラが何を思っていたのか、無論誰にも分かる筈が無い。
ただ変わる事の無い事実・・・それは、一つの命がここで消えていくと言う事であった。



ゴガァァァァァァァァァオオオン・・・





美歌「ゴジラが、死んじゃう・・・」
みどり「だからこそ、『VS』回顧はこれで終わりよ。物悲しい最後も合わないし、メルトダウンなら『Next「G」』冒頭でも書いてるしね。あたし達の物語に繋げるって意味でも、ここまでよ。」
睦海「それにメルトダウンは暗いだけの場面じゃ無い。ゴジラは死んだけど、その命と名はジュニアに受け継がれた。『VS』シリーズは受け継がれる物語で、それを引き継いだのが、私達の物語。」
未希「初めてゴジラと会った、あの時から20年・・・『VS』シリーズと共に歩んで来て、色々な事があったけど、私の役目もまた受け継がれた。健君・・・ゴジラの事、お願いね。」
健「あぁ!大人になったら、絶対にあいつの元へ行きます!・・・あっ、そうだ!お前ら忘れてねぇか?今年って、まさに俺達が活躍した年じゃねぇか!」
将治「そうだね。でも、また違う「G」の物語が始まっているみたいだし、僕達「Next『G』」組もそろそろ引き際かな。」
健「だけど俺達の事も、『VS』シリーズの事も、絶対に忘れんなよ!俺達との約束だぜ!」





健がそう力説した瞬間、エンドロールを流し終えたテレビが暗転した。



和美「・・・あれ?権利元のテロップが出て来ないわね・・・?」
健「また壊れたのか?ったく、こういうのは叩けば直るって・・・」



健が古典的な方法でテレビを直そうとしたその時、窓の外を見た健が何故か固まった。



みどり「どうしたの、健?」
健「いや・・・あれって・・・」



健の奇妙な反応に皆が窓に寄り、窓の外を見た誰も例外無く同じ反応をした。
それもその筈、窓の外には大きなプラカードを持った志真・瞬・遥がおり、プラカードには何か文字が書かれていた。



志真『「Next『G』」には俺達が出てるのも、忘れないでくれよー!』
遥『あと2009年は「3」「4」の年でもありますよー!』
瞬『・・・作者の命令だ、気にするな。』



理解の追いつかないこの行動に、呆気に取られる健達。
だが、そんな彼らに更なる混乱が襲う。



睦海「・・・あれ、テレビにノイズが走ってる。」
健「ノイズ?」



睦海の一言に健達は目線を相変わらず黙々とプラカードを掲げ続ける志真達から、テレビ画面に移した。
ノイズだらけの画面の中にやがて何かが浮かび上がって来たかと思うと、それは文字になって行く。
そしてその文字を見た瞬間、一同の混乱は頂点に達した。





『2009年は、就職の年です。
作者』







健「・・・なんだ、これ?」






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好釦