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これは東と西が瞬と出会って半年程経った頃の話である。
「「お邪魔しま~す。」」
夜、自衛隊本部にある宿舎の一室に東と西が入って行った。
そう、瞬の部屋だ。
部屋の中は彼の気真面目な性格が出ているのか、見事に整理整頓されている。
「お前達か。また勝手に・・・」
「へへっ、すみません。」
「それで何の用だ。」
「ちょっとこれ、どうですか?」
東の手には何かの液体が入った緑色の瓶が握られていた。
「ま、まさか・・・」
「高かったんですよ、これ。」
西は鞄からおもむろにおちょこを取り出すと、瓶の液体をおちょこに入れ始めた。
部屋中に鼻を突く様な臭いが広がると同時に、瞬の顔が青ざめていく。
――さ、酒・・・
「ささっ、どうぞ。」
西は透明の液体が入ったおちょこを瞬の前に差し出すが、瞬は浮かない顔のままだ。
「・・・まさか師匠、酒も呑めないんですか?」
「う、うるさい。酒くらい呑める。」
そう言うと瞬は西の手からおちょこを奪い取り、こう呟いた。
「・・・後で後悔するなよ・・・」
翌朝、見るも無惨に荒れ果てた部屋には瓶に囲まれ眠る瞬と、精魂尽き果て倒れる東と西の姿があった。
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