ゴジラ4‐守護神の祈り‐
一方、その甚吉森では志真がかれこれ3時間近く、森をさまよっていた。
ずっと歩いている為か、もう疲労困憊の様子だ。
「誰かぁ・・・俺を助けてくれぇ・・・」
――やっぱ誰もいないよな・・・こんな森の中に・・・
あぁ、俺はこのまま干からびて、この森の養分になるんだなぁ・・・
と、その時突如背後から現れた大きな影が志真の体を掴んだ。
「う、うわあっ!な、何だよ!離せ!」
ギュオオオオン・・・
――・・・えっ?
何だ、この情けない声?
恐る恐る志真は後ろを向くと、そこには大きなどんぐり目と、広い鼻の穴をした巨大な顔があった。
だが、志真にはこの顔に覚えがあった。
「もっ、もしかしてお前が『チャイルドゴジラ』・・・?」
そう、この少々小振りなゴジラこそが、研究所から逃げ出した幼獣「チャイルドゴジラ」だったのだ。
「ちょうどいいタイミングだ、早く研究所の人に教えて・・・あっ、ここ圏外だった・・・」
するとチャイルドは志真を軽く上へ放り投げた。
あまりに突然の出来事に志真は投げられるがまま宙を舞う。
「う、うおっ!?」
チャイルドは手で投げた志真をキャッチし、もう一度上へ放り投げる。
「おっ、おい、何・・・すんだ!早くはな・・・せよ!」
ギュオギュオン・・・
「何笑って・・・んだ!俺は・・・」
――そういえば、さっきから投げられてるのに全然不愉快じゃない・・・
むしろ、トランポリンで遊んでる気分だ・・・
それにしてもあいつ、楽しそうだな・・・本当に人が生んだ命なのか・・・?
そんな志真の考えとは裏腹に、チャイルドは今度は手の平を合わせ、志真を左右に転がし始めた。
「うおっ、おい・・・ちょっと待てって・・・」
ギュオギュオン・・・
――こいつ、本当にまだ子供なんだな・・・
でも、気分的には悪くないな・・・
志真はしばらくチャイルドと遊んでいる間に、段々と楽しくなっていくのを感じていた。
チャイルドがこんな子供の様な行動を取るのは、本来ならもう少し人格形成を完了させてから覚醒させるつもりだったのを、事故によって未完のまま覚醒した影響によるものである。
だがそれは逆に人のエゴが生み出したと、チャイルドの存在を快く思っていなかった志真がチャイルドに好感を持つ切っ掛けとなっていた。
志真にとって、未完成で未熟な今のチャイルドの方が、生物らしく見えたのだ。
ギュオオオオン・・・
そして20分もしない間に、志真はすっかりチャイルドと馴染んでいた。
先程の疲れも何処へやら、今度はチャイルドと追いかけ合いだ。
「よし、俺を捕まえてみろ!いくぜ!」
志真は全力でチャイルドの前方を走り始めた。
チャイルドもよちよちと走りながら志真を追う。
――やっぱり、チャイルドは生きてる。
生まれた理由なんて関係無い、一つと命として・・・