ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐




『『洞穴はもうすぐです、頑張って下さい。』』



再び走り始める2人。
以前と同じく、どこからか現れる小美人の導きで洞穴にはあっという間に到着した。
2人はためらう事無く、洞穴へ入る。



「しかしほんとすぐだよなぁ・・・前来た時は凄く苦労したし。」
「そうなんですか?」
「何しろジャングルは本当に迷路みたいで、ここも偶然見つけたみたいな感じ。」
「そうですよね・・・それは本当にご苦労様でした。」
「ははっ、ありがと。」



楽しく話し合っている間に、2人は広場に到着した。
遥の眼前には、10年前と全く変わりのない光景が広がっていた。



「・・・ほんとに、変わってない・・・」



10年前の出来事を思い出し、目を輝かせる遥だったが、志真は正反対に目を点にしていた。



「なあ、遥ちゃん・・・あれが『モスラ』?」
「えっ?」



志真は広場の中央を指差した。
そこにはまるでいも虫の様な姿をした、巨大な怪獣がいた。



キュピィィィィ・・・



「あれ・・・?私が昔見たのはもっと大きくて、すごく綺麗な蝶のはず・・・」
『『いえ、間違いありません。』』



またもや足元に小美人が現れ、志真を驚かせる。



「うおっ!?」
「でも、私の記憶では確かに・・・」
『『実は、どちらもモスラなのです。』』
「ど、どっちも?」
『モスラ一族は代々幼体の姿で卵から産まれ、繭の姿を経て遥さんが見た成体の姿になります。』
『だからあのモスラは、遥さんが見たモスラの子供ですね。』
「なるほど、そうなんですか・・・」
「モスラって、本当に蝶みたいな怪獣だな。いつ成虫になるんだろ。」
『『もうしばらくすれば、成体になるかと思います。』』
「もう成体に?」
『モスラ一族は幼体時に多少の時間を掛けて大地の力を蓄え、成体の姿になる為の準備をするのです。』
『既に十分に力は蓄えていましたし、今夜にも繭を張ると、モスラは言っています・・・』


――そういえば、モスラにゴジラとラドンを助けてもらおうと思ってここへ戻ったのに、どちらにしても無理だよな・・・
まぁいいか。遥ちゃんとモスラを会わせてあげれただけでも。


『『三体は、生きています。』』
「えっ?」
「あっ、そうか、小美人には全ておみとうしだったな・・・」



小美人が心を読む能力がある事に気付いていない遥には、何が起こっているのか全く分からなかった。



『『志真さんが三体の怪獣の行方が気にかかっていたそうで。』』
「あっ、ゴジラとラドン兄弟の事ですね。」
「それで、それは本当なのか?」
『『はい。三体共にまだ魂の鼓動を感じます。』』
「よかった・・・まだ生きていたのか・・・」
『『しかし・・・』』



と、話の途中で小美人は突如不安げな顔をした。
その表情に志真の不安が再び煽られる。



「どうしました?」
『『実は黒い怪獣・ゴジラは実体も感じるのですが、兄弟の怪獣・ラドンからは実体を感じられません。』』
「えっ・・・」
「って事は、ラドンは一体どうなってるんだ・・・?」
『『・・・残念ながら、魂だけが今も何処かを彷徨っています・・・』』
「・・・くっそ・・・!」


――志真さん・・・



キュピィィィィ・・・



「んっ?」
『『どうしたの、モスラ。』』



キュピィィィィ・・・



『『やはり、そうするのね・・・』』
「えっ、一体何が起こってるんだ?」
「何となくですが・・・モスラが何か私達に伝えたいみたいです。」



モスラと何かを話し合う小美人。
しばらく話し合った後、小美人は志真と遥の方を向いた。



『『モスラが、貴方達の力になりたいそうです。』』
「ほ、本当か!?」
『はい。成体になったその時、必ず力を貸すと言っています。』
『遥さん。もしモスラの力が必要になった時は、その「愛」の結晶に強く念を込めて下さい。』
「・・・はい。」
「モスラ、本当にありがとな。じゃあ遥ちゃん、そろそろ帰ろうか。」
『『お帰りになられますか?』』
「もう少し島にいたい気分だけど、遥ちゃんのおばあさんが心配してるだろうし・・・」
『『分かりました。遥さん、おばあ様はお元気でしょうか?』』
「はい。まだまだとっても元気ですよ。」
『そうですか・・・それは良かったです。』
『では帰りも、私達が案内しますね。』
「ありがとう、それは助かるよ。」
「モスラ、さようなら。また会おうね。」



キュピィィィィ・・・



『『さあ、それでは行きましょう。』』



2人は名残惜しくも広場を出て行き、数十分して早々とジャングルを抜けた2人は、再び小美人と別れの時を迎えた。



『しばらくの間、お別れですね・・・』
『私達は遥さんと志真さんに出会えて、本当によかったです。』
「私も今日の事は決して忘れません。昔の自分のように。」
「まあ永遠のお別れってわけじゃないし、暇があったら遥ちゃんを連れてまた来るよ。」
『『その日を、楽しみにしていますね。それでは、さようなら・・・』』



2人を乗せた水上バイクは勢いよく動き出し、すぐに見えなくなった。



『『貴方達のご無事を、祈っています・・・』』
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