ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐




――こっちか・・・!



しばらく走り続けた志真は、ふもとの茂みの中に迷彩模様を施した戦車を見付けた。
志真は戦車の前で足を止め、一呼吸して叫んだ。



「おい、瞬!!その中にいるんだろ!!出て来い!!」



すると戦車の上部ハッチが開き、中から瞬が出てきた。
ゴジラを取り逃がした事に加え、相手が志真との事で少々不機嫌気味だ。



「全く・・・お前はいつも、不愉快な登場の仕方だな。」
「答えろ。ゴジラとラドンをどうした!」
「ゴジラは逃がしたが、ラドンは火口に追い込み、駆逐した。」
「やっぱお前はどこまでも・・・!ラドンはな、桜島から出る変な煙のせいでおかしくなっただけなんだぞ!」
「そんなもの、関係は・・・」
「はぁ、はぁ・・・志真さん・・・早すぎますよ・・・!」



そこに息を切らしながら遥が走ってきた。
思いもよらぬ来訪に、瞬は少し戸惑う。



「誰だ?お前の妹か?」
「違うっての。」
「お前の方も問題だな。こんな所に女の子を連れて来るとは。」
「お前には言われたくないな!この子はお前らの無駄な攻撃を止める為に、連れて来たんだ!」
「えっと・・・話の中すみません、志真さんのお知り合いですか?」
「いや、あいつ・・・瞬とはただの腐れ縁だ。」



瞬もまた質問に答えるかの様にため息をつく。
遥もこの空気を察し、頷く程度に済ました。



「それで、煙の件はどうなんだよ!」
「そんなものは関係無い。」
「なん、だと?」
「例え煙が原因だろうとも、現にラドンは九州各地を破壊し、沢山の人々を死なせた。そうだろう。」
「・・・!」
「分かったか。なら早く・・・」
「・・・だったら、駆逐までする必要はあったのか?今までラドンは何にもしなかったし、特にもう一体の、弟のラドンは完全に罪なんか無いだろ!」
「やはり兄弟か・・・だが、どちらにせよ危険要素となるものは早めに潰しておかねばならないからな。」
「・・・そうか。やっぱりお前は何処までも最低な奴だ、って分かったよ。ちょっとでもお前の事を許してやろうか、と思った俺が馬鹿だった・・・」



志真は拳を強く握り締め、もはや今にも瞬に殴りかからん勢いだ。
それを知ってか知らずか、瞬は志真に冷たくこう言い放つ。



「・・・お前に許してもらおうなど、思っていない。」
「こんの・・・ッ!!」



怒りのあまり、志真は遂に瞬の顔面に殴りかかろうとした。
が、振り上げられた志真の腕を遥の手が掴み、志真を止める。



「やめて下さい志真さん!どんな理由があっても、暴力で解決したら駄目です!」
「・・・ごめん。」



我に返った志真は、力無く腕を降ろした。
しかし、遥の目は既に瞬に向けられていた。



「一般人がでしゃばってはいけない事は分かっていますが・・・一つだけ言わせて下さい。貴方の判断は、決して正しいと言えません!兄のラドンが暴れた理由も考えず、人々の意見も聞かず、関係の無いゴジラや弟のラドンまで巻き込んだ・・・これはもう、独断です!」
「・・・まさか、お前は俺にこの事を言う為にわざわざこの娘を連れてきたのか?」
「どうせ、俺が同じ事を言っても聞かないと思ったからな。それにどうせお前は警戒とか何とかでここに居座るんだろうが、俺達にはまだやる事があるんだ・・・!行くぞ、遥ちゃん。」
「えっ、でも・・・」
「ここにいる意味は無くなった。俺達は、モスラの所に行く約束を果たしに行こう・・・」


――モスラ・・・?


「そ、そうですね・・・」



志真は黙ってその場を去って行った。
瞬にお辞儀をし、遥も志真を追い掛ける。



「相変わらず甘い奴だ・・・しかし、モスラとは一体・・・?」





その後、2人は来た道を引き返して国分市に戻り、町の空港へ来た。



「志真さん、あの人とは本当にいいんですか?」
「あんな奴の事なんて、もう知らない。ほんと、ああ言う政府絡みの連中は自分の保身の事しか考えてないから、あんな事が平気で出来るんだ。ラドンだって、本当は街を破壊したく無かった筈なのに、誰もそれを理解しようともしない・・・!だから怪獣ってだけで、どんな酷い事も平気で出来るんだ・・・!」
「志真さん・・・」
「・・・あっ、ごめん。暗い話をしちゃって。そういえば、遥ちゃんってまだパスポートは持ってる?」
「はい、持ってますよ。」



遥は背中のリュックからパスポートを取り出し、志真に見せた。



「少し前におばあちゃんと海外へ旅行に行きまして、そこで更新しました。」
「おおっ、それならよかった。これで、お互いに二回目だな。」
「はい、そうですね。」


――・・・モスラ、待ってて・・・



2人は手続きを済まし、飛行機に乗り込んだ。
そして午後6時、ミクロネシア行きの飛行機は離陸した。
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