ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐






翌日、2人は鹿児島県・国分市に到着した。
駅を出て早々、志真は背伸びをする。



「うーっ、うんっ!」
「ここが鹿児島・・・きれいな空ですね。」
「ほんと、そうだよな。でもあの山の向こうでは・・・」



志真は町の向こうに見える桜島を指差した。
そこでは今も、自衛隊による一斉砲撃が進んでいるのだ。



「そうですね。早く行かないと・・・!」
「よし!じゃあ行くか!」



志真と遥は改めて決意を胸に秘め、桜島に向かって歩き始めた。
電車もバスも、桜島へ向かってくれないからだ。
早足気味に歩きつつ、2人は会話を交す。



「いやー、でも本当にここは空気が綺麗だな。」
「この辺りは自然が多く残っていますからね。」
「俺、鹿児島に住んでもいいかもな!デスクも単身赴任とかさせてくれてもいいのに、こんな時に限って頭が回らないって言うか・・・」


――・・・くすっ。
志真さんって、本当に面白い人。





それから広大な景色を眺めながら小休憩を挟みつつ、桜島がもう目と鼻の先に見えて来た頃、道中に大勢の人々が固まっているのが見えた。



「志真さん、あそこに人が集まっていますよ?」
「何だろうな・・・ちょっと聞いてみるか。」



2人は集団に近付き、声をかけてみる。
雰囲気からして、どうやらこの集団はここで何か抗議をしているようだ。



「すみませーん!貴方達はここで何をして・・・あっ、貴方は!」



志真は仰天した。
集団の中に、かつて志真がお世話になった桜島監視員の二戸辺がいたからだ。



「あ、あんたは志真さんでねぇか!」
「二戸辺さん!」
「志真さんの・・・知り合いですか?」
「うん。少し前に桜島へラドンの取材をしに行ったんだけど、その時あの人にお世話になったんだ。」
「なんだ、志真さんの妹さんか?えらいべっぴんさんとね~。」
「あっ、いえ、違います・・・」



不意打ちの様な二戸辺の発言に、遥は顔を赤らめて下を向いてしまう。
それを察し、すかさず志真はフォローを入れた。



「いえ、この子は少し用事があって着いて来てもらっているだけで、僕の妹ではありませんよ。」
「そやったか。そりゃごめんね~。」
「それで本題ですが、何故貴方達はここに?」
「そりゃ決まってら!」
「ラドンへの攻撃の抗議ばしてたとよ!」
「抗議・・・?」
「ラドンば、少し前までずっと九州中を攻撃していただ。でもそれはラドンの意思じゃなか!」
「そうだ!『アレ』のせいでラドンばおかしくなったとよ!」
「すみません、『アレ』とは何ですか?」
「ああ。ここ最近、吸えば絶対倒れる変な煙がここいらに充満してた!じゃから絶対『アレ』のせいたい!」


――煙・・・?


「わしらにとっちゃ、ラドンば神様見たいなもんじゃ!」
「やのに自衛隊の奴ら、何の確認もせんとラドンに攻撃をしかけよった!」
「やからわしらはずっと抗議しとったばい!やのに・・・」



すると人々は急に口を閉じ、ひどく困惑し始めた。



「桜島に何かあったのですか?」
「あんたら、実はラドンば二匹おったの知っとったか?」
「えっ、ラドンは一体では無かったのですか?」
「実はもう一匹、少し小さめで角が一本なのがおってな、ラドンが桜島をば去った後にひょっこり出てきよったんよ。」
「兄弟、みたいな感じでしょうか・・・」
「んだ。でも自衛隊、その後帰ってきたラドンも海から来たゴジラも、関係なく攻撃しよった!」
「小さいラドンば、足に怪我してて逃げるに逃げられなかったったい・・・」
「・・・それで、ラドンとゴジラは今何処へ?」
「ゴジラば何とか海に逃げたけど・・・ラドンば二匹とも、火口へ落ちたとよ・・・」



志真と遥は愕然とした。
最も考えたくなかった、最悪の考えが的中してしまったからだ。



「そ、そんな・・・!そんなの、嘘だろ!?」
「酷い・・・酷過ぎるよ・・・!」
「それからもわしらも必死に抗議したったい。でも、どうにもならんかった・・・」
「しょせん、無力だったんじゃ・・・」


――こんな・・・こんな事すんのは、あいつしかいない・・・!



手を震わせ、きつく拳を握り締める志真。
胸にあるのは、瞬への怒りだけだ。



「行くぞ、遥ちゃん。」
「え、ええっ!?」
「お話ありがとうございました。僕はここで。」
「今、桜島ば危険じゃ!行かん方がええ!」
「それでも、行かなければならないんです!」



そう言うと志真はふもとへ向かって走り出した。
あまりに突然の行動に、遥は動転するだけだ。



「し、志真さん!・・・あっ、私もそろそろ失礼します。色々とありがとうございました。」
「き、気ぃつけてなぁ・・・」
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