ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐







その頃、志真は京都駅近くの喫茶店のテラス席に座っていた。
とは言えど、かれこれ一時間半は同じ席にいるのだが。



「はぁ、こんなに喫茶店にいた事ないし、暇だな・・・んっ?」



と、そこに退屈を裂くかの様に志真の携帯が揺れた。
志真は携帯を取り、電話に出る。



「はい、もしもし・・・」
『もしもし、お電話頂いた妃羽菜です。』
「妃羽菜様ですか!」
『孫の遥に用ですね。それなら是非、私の家にお越し下さい。』
「よろしいのですか?」
『どうぞ。場所は典零寺の近くです。』
「典零寺の近くですね。分かりました。わざわざありがとうございます。」
『いえいえ。私達も今帰って来た所ですので。』
「そうだったのですか。では、すぐお宅に伺います。失礼致しました。」



志真は最後まで丁寧な口調と対応で電話を切ると椅子を立ち、喫茶店を出た。
そして駅を去ると、郊外の妃羽菜家へ向かう。
想像以上に入り繰んだ、京都の街並みに何度か迷いそうになりつつも郊外に向かって歩いて行くと、家々の中に蝶のオブジェが見えて来た。



「おっ、あれが典零寺か・・・」



志真は背中のリュックからガイドブックを取り出し、解説を読んだ。



「『典零寺は京都郊外に位置する寺で、家々の中にひっそりと存在する寺。寺の屋根に位置する蝶のオブジェが有名。』か・・・」



更に路地を歩いていくと、少し大きめな日本家屋が見えた。
門の表札には「妃羽菜」と書いてある。



「ふう、やっと到着っと・・・しかし噂には聞いてたけど、本当に京都は迷路みたいな街だなぁ・・・」



志真は門に近付くと、チャイムを鳴らす。
するとすぐに門のインターホンから佳奈他の声が流れた。



『はぁい・・・』
「先程電話させてもらいました。日東新聞の志真です。」
『よくいらっしゃいました。どうぞ入って来て下さい。』
「はい。」



インターホンが切れ、志真は戸を開けて妃羽菜家に入った。
玄関では既に佳奈他が待っている。



「どうもすみません。お邪魔します。」
「祖母の佳奈他です。こちらこそ。もう夕方ですねぇ・・・」
「はい。なんせ京都は初めてで、少し迷ってしまいました。」
「京都は迷路の様だと、よく言われますねぇ。」
「まさにその通りでしたね。今度からは気を付けます。それで、お孫さんは・・・」
「孫の遥なら二階にいます。そろそろ降りて来るかと・・・」



と、その時二階から引き戸が開く音がした後、制服から私服に着替えた遥が階段を降りて来た。



「あっ、貴方が記者の方ですか?初めまして。孫の遥です。」
「日東新聞の志真です。こちらこそ。早速、取材して貰ってもいいかな?」
「はい。いいですよ。」





それから志真は居間に案内され、机に遥を挟んでの取材となった。
こういった事に慣れていないのか、遥は少々緊張気味だ。



「じゃあ、まず確認。君は10年前、おばあさんと一緒に旅客船『うみねこ』に乗っていた。」
「はい。」
「その船はミクロネシアへの航海の途中、エンジントラブルを起こしてインファント島という島に座礁した、そうだよね?」
「小さかったのであまり覚えていませんが・・・そう聞きました。」
「そこで本題。君はその島で、小さな妖精に会わなかった?」



遥は一瞬困惑の表情を示したが、すぐにこう答えた。



「・・・知りません。」
「えっ?でもそのペンダントは・・・」
「これは祖母から貰った物です。」


――おかしいな・・・
確かにあのペンダントは小美人の2人が言っていた物の筈・・・


「君が秘密にしたい気持ちは分かる。そんな事を言っても普通信用されないし、君自身が妖精の為に秘密にしようと思っているんだと思う。けど僕には真実を伝える義務があるんだ。それに僕は実際に島に行って・・・」
「とにかく、私は知りません・・・」



下を向くばかりの遥。
しかし、首から下げられるペンダントを見て既に遥がモスラの探している人物であると確信していた志真は何とか説得を試みる。



「本当の事を話して欲しい。僕は信じる。」
「い、いえ、私は何にも・・・」
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