ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐
その頃、京都市の郊外に佇む大きな日本家屋・妃羽菜家の門が開いた。
戸を開けたのは、緑を基調にした制服を着た女子高生だ。
「ただいま。ねぇ、佳奈他(かなた)おばあちゃん!ちょっと急いで!」
「まぁまぁ遥。そんなに老体を無理させるものではないですよ。」
更にそこへゆっくりと老女が歩いて来た。
70程前といった所か。
「だって私、今日高校生になったんだよ!早く親戚の人々に報告したいの!」
「はいはい。わかってますよ。」
そう、この女子高生こそが16歳になった妃羽菜遥であり、老女は遥の祖母である妃羽菜佳奈他。
志真の訊ね人が、ようやく帰還したのだった。
――やっぱり遥も高校生になったし、そろそろ携帯を持たせるべきだねぇ・・・
遥は靴を脱ぎ、待ちきれないとばかりに家の電話に駆け寄る。
「じゃあ早速・・・ん?留守電が来てる・・・」
遥は受話器を取り、メッセージを再生した。
メッセージが録音された時間がアナウンスされ、電話から聞き慣れない男の声が流れて来る。
『突然の電話、申し訳ありません。日東新聞ジャーナリストの志真と申します。このたび、娘の遥さんに10年前のインファント島遭難事件に関してき・・・』
志真のメッセージは中途半端な所で切れており、遥には内容が半分程しか伝わらなかった。
「どうしたんだい?」
「日東新聞の志真さんって人から、電話が来てたみたい。」
「日東新聞・・・あたし達も読んでるけど、一体何の用だって?」
「うーん、10年前のインファント島で遭難した時の事に関して、私に何か聞きたい事があるみたいだけど、途中で切れてるの・・・」
「・・・んっ?もしかして、その記者さんは10年前の座礁事故に関して聞きたいんじゃないかい?」
「あの事故の?でも、私が特に言う事なんて・・・はっ!」
その時、遥の脳裏を10年前の記憶の光景がフラッシュバックした。
座礁する船。
砂浜。
眼前に現れる小美人。
森。
洞穴。
祭壇。
そして、巨大な蝶・・・
・・・カクィオオ・・・
「遥、遥!」
「・・・はっ!ごめん。ちょっと昔の事を思い出してて・・・」
「やっぱり、あの事を思い出したのかい。」
「うん。でも私、あの事は秘密にするって誓ったから・・・」
「そうだねぇ。でもこのまま記者さんを待たせるわけにもいかないし、連絡して家に上がってもらいましょ。あたしが連絡しておくから、遥は着替えておいで。」
「分かった。おばあちゃん、ありがとね。」
遥はそう言うと、階段を上がって行った。
「さて、早速電話してしまいましょうか。」
佳奈他は受話器を取り、志真に電話をかけた。