ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐
ギィゴオオオウン・・・
一方、桜島では未だ弟ラドンが鳴き叫んでいた。
そしてその様子を自衛隊特別大尉・瞬率いる戦車隊が監視していた。
「隊長、桜島のラドンに変化は見られません。」
「そうか。それで逃亡したラドンはどうだ。」
「熊本市を壊滅させた後、真っ直ぐこちらへ向かっています。」
「分かった。引き続き監視を続けろ。」
「了解。」
「あとすまんが、俺は一旦外に出る。」
「分かりました。ですが煙が出たらすぐ帰って来て下さい。」
「ああ。」
瞬は戦車から出ると周りに煙が発生していない事を確認し、双眼鏡を取り出して辺りを眺める。
「・・・もの静かだな、ここも。まぁ、もうすぐ騒がしくなる。もう一体のラドンがここへ帰って来た時に・・・んっ?」
その時、瞬の双眼鏡に水柱が立った鹿児島湾が映った。
瞬は手を止め、鹿児島湾を見つめる。
すると水柱が砕け、中からゴジラが現れた。
ディガアアアアアアオン・・・
「ゴジラ・・・こんな時に来たか。」
ゴジラはゆっくりと桜島へと向かった。
体のあちこちには米軍から受けた傷が、僅かに残っている。
「もう少し眺めていたかったが・・・仕方ない。一旦戻るか。」
瞬はすぐさま戦車に戻っていった。
隊員もゴジラの出現に気付いていた様で、すっかり臨戦体勢だ。
「隊長!ゴジラが鹿児島湾に!」
「分かっている。すぐに砲撃の準備だ。」
「ですが、それはラドンへの対策では・・・」
「これを見ろ。」
瞬はレーダーを指差す。
すると、マッハ3もの速さで桜島に接近してくる影があった。
「隊長、まさか・・・」
「ああ・・・奴だ。」
一方ゴジラは桜島に上陸し、山肌を登り始めた。
しかし、火口の弟ラドンは一向に動こうとしない。
「隊長、火口のラドンに動きは見られません。」
「奴は逃げないのか?」
「なぜでしょうね・・・んっ、隊長、これを見て下さい。」
「どうした。」
瞬は監視レンズを覗きこんだ。
映っていたのは弟ラドンの足で、よく見ると足に赤い傷が見える。
「これは・・・」
「どうやら、足を負傷しているようですね。」
「つまり、あのラドンは桜島から逃げられないのか。」
「ゴジラはどうやら、そのラドンに向かっている様です。」
「一体何をする気だ?」
グルルルルル・・・
するとゴジラは両手を広げ、そのまま弟ラドンに近付いた。
どうやら敵意が無い事の証明、そして傷付いた弟ラドンを抱えて逃がす為とも取れる。
グィドオオオオオン・・・
だが、それと同時に紅い影が凄まじいスピードで桜島に迫っていた。
そう・・・九州中を飛び回っていたもう一体の、二本角の兄のラドンだ。
そして兄ラドンはスピードを保ちながらゴジラに体当たりした。
グアアアア・・・
突然の一撃にゴジラは倒れ込んだ。
が、兄ラドンはゴジラの背びれを足で掴んで持ち上げ、そのままゴジラを一気にふもとまで運ぶと、そのまま地面へ落とした。
桜島周辺に地響きが起こり、流石のゴジラも古傷とあいまって苦しそうだが、兄ラドンは攻撃の手を緩めず起き上がろうとするゴジラに急行下で蹴りを喰らわせた。
再び倒れるゴジラに兄ラドンは更に近付き、嘴でゴジラを何度も突いた。
突き刺す一撃の応酬に、ゴジラにダメージが蓄積されていく。
だが兄ラドンは攻撃を止めようとしない。
まるで火口からゴジラを引き離す様に。
グルルルル・・・
するとその時、ゴジラの背鰭が青く光る。
熱線を発射する準備だ。
パチッ・・・パチパチ・・・
「隊長、ゴジラの背鰭が・・・」
「俺達には関係無い。二体が弱ったその時、攻撃するまでだ。」
そして、ゴジラは振り向きざまに兄ラドンへ熱線を放った。