ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐






一方、鹿児島県・桜島。
辺り一帯、何も無くなったここに一つの鳴き声が上がった。



グィドオオオオオン・・・



それは紛れもないラドンの鳴き声であり、更に桜島の火口には今や熊本にいる筈のラドンの姿があった。
だが、何故か頭の角は少し大きめになった一本だけで、体の色も灰色が目立つ。
そう・・・ラドンは実は二体の兄弟で、熊本を破壊している二本角のラドンは兄、桜島にいるのは一本角のラドンは弟だったのだ。
少し苦しそうに弟ラドンはそのまま、何かを呼ぶ様に叫び続ける。



ギィゴオオオウン・・・






その頃、日東新聞本社に志真がせわしなく入って来た。
受付嬢であり、最近主に男性社員から会社のマドンナとして密かに人気が出始めている女性・佐藤潤が、早速志真に話しかける。



「あっ、志真さん。おかえりなさい。」
「ただいま、潤さん。」
「そんなに急いで、どうしました?」
「ちょっと調べ物!」



そう言うと、志真は走り去っていった。
いつも見ている風景なのか、潤はつい笑みを浮かべる。



「・・・ふふふっ。本当に志真君は、いつも忙しそうね。私も同期としていつも応援してるから、頑張って。」






志真はエレベーターを使って上階へ昇ると、ある部屋のドアを開けた。
そこは1年前、バラン事件でお世話になった資料室だ。
部屋に入るなり志真はすぐ過去の記事がまとめられた欄に向かい、黒いファイルをあさる。



「えっと10年前、10年前・・・・・・おっ、あった。」



志真は棚から「1999年」と書かれたファイルを取り出し、開いた。



「うーんと、座礁、座礁・・・・・・」



少しやっきになりながらファイルのページをめくる志真だったが、ある記事のページでようやく手を止めた。
それは1999年・4月の記事でタイトルは「旅客船『うみねこ』、無事発見される」という記事だった。



「えっと、生存者リストはっと・・・これか。」



志真は生存者リストに目を通す。
するとその中に「妃羽菜 遥」と言う幼い女の子の名があった。
更に写真には、はっきりと小美人の背中にあった模様と同じペンダントをしている。



「この子だな。えっと、この時6歳だから、今は16歳か。んで出身地は京都府の京都市と・・・よし。」



ファイルを閉じ、志真は棚にしまうと早速部屋を出ようとした。
しかし、そこである事に気付いてしまう。



「じゃあ早速京都・・・って、デスクには何て言おうかな・・・わざわざ海外まで行って、収穫があれだけじゃなぁ・・・」


――仕方無い、こっそり逃げよう・・・



志真は資料室を出ると、早々と会社を去って行った。






「全く!そろそろ連絡してきてもいいだろうに!何をしているんだあいつは!」



その頃、デスクは未だに連絡が無い志真に怒りを覚えていた。



「もう3日ですか。」
「いつもあいつはそうだ!いっちょ前な態度をしているくせにこういう所が・・・」



デスクはぶつぶつと愚痴を言い始めた。
部所のジャーナリスト達は愚痴を聞きつつ、小声で同僚と話す。



「また始まったな、デスクの愚痴・・・」
「うん。いつも志真が何かやらかすと、ああなるんだよな。」
「志真~、早く帰ってこーい・・・」



と、その時突如デスクの電話が鳴った。
デスクは少し乱暴な手付きで電話を取る。



「もしもし。」
「もしもし、受付の佐藤です。」
「ああ、マドンナ佐藤か。どうしたんだ?」
「あの、先程志真さんがここへ帰って来たのですが、帰って早々何故か慌てて何処かへと行かれたので、何があったかと連絡を・・・」
「なにぃ!本当に志真が帰って来たのか!」
「は、はい・・・」
「志真は何処だ。」
「それが、行き先は告げずに何処かへ・・・」
「・・・そうか。報告感謝する。それじゃあ。」
「えっ、志真さんは一体ど・・・」



デスクはつい潤の問いに答えず、一方的に電話を切ってしまった。



「デスク、志真が帰って来たのですか?」
「ああ。すぐ何処かに行ったらしいが、とりあえず今は電話が繋がるな。」



そう言うとデスクは携帯電話を取り出し、何処かに電話を掛けた。
そう、志真の携帯に。



「やっべ、デスクからだ!」



その頃、志真は会社を飛び出し京都行きの新幹線に乗っている所だった。
だがもうすぐ到着と言う所で志真の携帯に掛けてきたのは、最も話したくない人物だった。



――な、なんで俺が日本にいるって分かったんだ?俺が行っている所は、間違いなく圏外の所だし・・・はっ、まさか受付の潤さんがデスクにばらしたんじゃ・・・



そう考えている間にも、志真の携帯はけたたましく揺れる。



「こりゃ出るしか無い、か・・・」



志真は携帯を開き、恐る恐る電話に出た。



「もしもし・・・」
「もしもし、じゃ無いだろ!今何をしている!」
「・・・新幹線に乗ってます・・・」
「新幹線だと!なに油を売ってるんだ!」
「いやぁ・・・一応島は探索したのですが・・・対して収穫が無くて、それで一度日本に帰って情報を・・・」
「だったら早く報告せんか!また勝手に島に行くのは構わんが、次はお前の自費で行け!わかったな!」



怒り心頭のまま、デスクは電話を切った。
電話が終わった事に志真は安堵しながらも、気持ちは沈む。



「やっぱ怒ってる・・・もう、会社に帰れないかもなぁ・・・」



憂鬱になりながら志真は新幹線の窓を眺めた。
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