ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐




キュピィィィィ・・・



すると、洞穴の奥から何処か幼げな鳴き声が聞こえて来た。



「なっ、何だ?」
『『モスラ!』』
「え、ええっ!?」



そう、洞穴から聞こえた声は他ならぬモスラの声だったのだ。
モスラは洞穴の奥からまるで巫女に語りかける様に声を出す。



『えっ、そうなの?』
『でも、貴方は本当にいいの?』


――な、何が起こってるんだ?わけがわかんないぜ・・・



しばらくしてモスラの声が止み、巫女が静かに口を開いた。



『『・・・モスラは貴方を信じてみるそうです。』』
「えっ?って事は今君達はモスラと話して・・・た?」
『『はい。貴方に「わけがわかんないぜ」と思わせてすみませんでした。』』
「そっ、そんな事まで分かるのかよ!?」
『はい。だからこそ貴方を信用しようと思ったのです。』
『先程私達を見た貴方は邪念の無い、無心状態でしたから。』


――やっば、全部おみとうしか・・・ってか、この独り言も絶対ばれてるじゃん!
・・・恥ずかしい・・・



巫女は心も体も慌てている志真を見て、くすりと笑みを浮かべる。



『『ひとまず、本題に戻りましょう。』』
「あっ、そうだったな。それでとりあえず、モスラは俺と会ってくれるんだっけ?」
『『一応、条件付きではありますが。』』
「条件?」
『『はい。世の中を見つめる仕事をしている、貴方だからこそ出来る事だと思います。』』



志真は目を瞑って考え込んだ後、答えた。



「・・・よし、出来るかわからないけど、頑張ってみるからその『条件』を教えてくれないか?」
『わかりました。では早速お話しします。』
『10年程前、この島に大きな船が流れつきました。』
『『そしてその時、私達は一人の女の子を助けたのです。』』
「女の子?」
『『「はるか」と言う小さな女の子です。』』
「うーん・・・心当たりは無いなぁ・・・」
『『そうですか・・・』』



巫女は悲しげな顔を見せつつも、話を続ける。



『実は、モスラがその子に会いたがっているのです。』
『そしてその子をここに連れてくれば、モスラは貴方と会うと言っています。』
「・・・わかった。モスラにその子、会わせてやりたいしな!」
『本当にありがとうございます。』
『あと、その子はこの模様に似たペンダントを付けている筈ですよ。』



巫女は志真に背中を向けた。
服には十字架を基調に「~」記号に似た線が二つ、斜めに入った模様が描かれている。



「この形か・・・」



志真がしっかりと模様を見た事を確認した巫女は、再び志真に向かって振り返った。



「とりあえず、これを手掛りにその子を探してみるな。」
『『お願い致します。』』
「あっ、でも・・・」
『『どうしました?』』
「・・・実は今まで迷ってたから、道がわかんないんだ・・・」



申し訳無さそうに志真は頭を掻いた。
しかし巫女は全く慌てる事もなく、逆に笑みを浮かべる。



『それなら、私達が案内致します。』
『この辺りはとても広大ですから。』
「おおっ!ほんとに!」
『『私達に任せて下さい。さあ、それでは行きましょう。』』



巫女は志真に手招きをして岩を降りると、洞穴と反対の方向に走り始めた。
志真は注意深く巫女の後を追ったが、草木に隠れた隙に見失ってしまう。



「やば、見失った・・・」
『『こっちですよ。』』
「ええっ・・・?」



志真は巫女の声がした方・・・上を向いた。
すると木の枝の上に、今さっき姿を見失った筈の巫女がいた。



「い、いつの間に!?」
『『なるべく見失わないでくださいね。』』
「は、はい・・・」



戸惑いながらも志真は巫女を追った。
途中巫女を何度か見失ったが、すぐどこかから巫女の声が聞こえ、志真を導くのだった。



――なんだか、不思議な気分だな・・・



そしていつの間にか、志真は無事砂浜に辿り着いた。



「か、帰って来れた・・・」
『『お疲れ様です。』』
「うえっ!?」



ふと下を見た志真は仰天した。
気配も無く巫女が志真の足元にいたからだ。



「ほんと、びっくりするなぁ・・・」
『何度も驚かせてしまって、すみません。』
『しかし、これで砂浜に着きましたよ。』
「うん。案内してくれてありがとう。じゃあそろそろ俺、帰るな。」



志真は砂浜に停めてあるホバーボートに乗り込んだ。



『『貴方のご無事を、祈っていますよ。』』
「次は絶対、女の子連れて来るからなー!」



水上バイクのスイッチを入れ、志真は島を去って行った。





「ふぃー、なんだか今日は変な事ばかりだったな・・・」


――まぁ、そんな事言ったら一年前までゴジラの存在も変だったか。
それにしてもあの二人、小さいけどなかなか美人だったな・・・
さしずめ「小美人」か。・・・って何考えてんだ俺。



水上バイクを操りながら、志真はまた考え事を始める。
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