ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐
翌日、ニッキーズの領海侵犯の一件はあくまで「噂」として一部のネットニュースに載った。
無論、米軍からの圧力が加わった事は機密に。
だが、日本国民の目は完璧に騙せず、様々な評論家の発言もあって国民達はコラムや電子掲示板に、激しくアメリカを糾弾するコメントを書き込んだ。
「日本、『かの国』に堕ちたか!?」
「大罪を重ねる世界の警察、アメリカ!」
「日本を牛耳るアメリカを許すな!」
日本が密かに混乱している中、志真は水上バイクを使って1人インファント島に上陸していた。
「ふぅ、ここがインファント島か。まさに南海の孤島って感じだな。」
志真はふと辺りを見渡してみるが、そこに広がっているのは広大なジャングルだけだった。
「はぁ、こりゃどう行けばいいんだよ・・・」
――・・・ここまでジャングルだと、やっぱ行くしかないか・・・
志真は少し面喰らいながらも、目の前に広がるジャングルへ向かって歩き始めた。
ジャングルの中は広大な原生林と見た事のない虫に溢れており、歩けど歩けど志真には同じ光景しか見えなかった。
「なんか・・・蜃気楼にあったみたいだ・・・」
歩くにつれて志真の体力はどんどん削られていき、照りつける熱帯の太陽光は更に志真の体力と水分を奪う。
「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・」
志真はついにその場に座り込んでしまった。
「はぁ・・・はぁ・・・何だよ・・・守護神の『し』の字も無いじゃんか・・・」
志真は背中のリュックから水筒を取り出し、失われた水分を取り戻すかの如く豪快に水を飲んだ。
「っはー!生き返るー!・・・んっ?」
水筒の水を一気に半分近く飲んだ志真の目に、岩肌に空いた大きな穴が見えた。
「あれは・・・洞穴?」
志真は立ち上がり、洞穴の入り口に向かう。
洞穴は大人1人余裕で入れる程大きく、更に奥は何処かと繋がっている様だ。
「しかしこりゃでっかい穴だなぁ・・・よし、とりあえず入って・・・」
『『その奥に入ってはいけません。』』
洞穴の中に入ろうとした志真を、謎の声が止めた。
聞き覚えの無い若い女の声で、しかも二人同時に話しているのか、重なった印象を受ける。
「えっ?誰だ・・・?」
『『ここです。貴方の横に。』』
志真は声に誘われ、右に振り向いた。
すると岩の上に、天女を思わせる薄緑色の衣を着た美しく、そして小さな女性が二人座っていた。
身長は目測30cm程だろうか。
「え、ええっ!?」
『『初めまして。』』
志真に可愛らしくおじぎをする二人。
しかし、志真は戸惑いを消せない。
「はっ、初め、まして・・・」
『『そんなに慌てなくても良いですよ。』』
――いや、普通に慌てるって・・・
『貴方は何をしに来たのですか?』
「えっと・・・この島に居る『守護神』って呼ばれる生物を調査しに来たんだ。」
『そうですか・・・やはり貴方もモスラを求めて・・・』
「モスラ?」
『『あっ、いえ、何でもありません。』』
二人は下に目をそらす。
しかし志真は目線を合わせ、二人を逃さない。
「そんなわけにはいかないよ。俺はジャーナリスト。真実を伝える義務があるんだ。」
『『・・・』』
「まだ知り合ってばかりだけど、俺を信じて教えてくれ。モスラって何なんだ?」
志真は目で全てを訴えかける様に、二人を見た。
目をそらしていた二人も、すぐ志真の目を見る。
「・・・」
暫しの沈黙の後、二人が口を開いた。
『『貴方の事、信じてみます。貴方の目に偽りはありませんでした。』』
「あっ、ありがとう。知り合ってばかりなのに、俺を信じてくれて。」
『『はい。早速お話しましょう。』』
二人はこれまた同時に洞穴を指差した。
『『この先に、貴方の探し求める「守護神」がいます。』』
「って事は、そのモスラが守護神!?」
『はい。私達はモスラに使える「巫女」の様な存在です。』
「なるほど・・・それで、あの洞穴を行けばモスラに会えるのか?」
『そうなのですが・・・今はここをお通し出来ないんです。』
「な、なんで?」
『まだ私達は貴方を完全に信用したわけではありませんので・・・』
「そっか・・・」
『それにモスラの自身の意思も・・・』