ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐







それから30分程してゴジラ出現の報告は若者達から警察、そして米軍へバトン方式に伝わり、米軍はゴジラが破壊活動を行う危険があるとして、すぐにアメリカ海軍の軍艦「二ッキーズ」をハワイに向かわせた。
移動中の艦内では米兵が悪態まじりに暇を潰し合っている。



『何か実感持てねぇな、おい。』
『同感。ニッポンのカイジュウ映画じゃあるまいし。』
『まぁどんな奴が来ようとこの「二ッキーズ」にはかなわねぇけどな!』
『ニッポンの「ジエイタイ」はいろいろ規制があってロクに出動出来ねぇからヘボいんだよ。』
『心配すんなって。そんなニッポンをオレ達が守ってやってんだ。感謝して欲しいぜ。』
『当然!』
『緊急連絡!ゴジラ接近!ゴジラ接近!艦内の隊員はすぐ持ち場に付け!繰り返す、繰り返す・・・』
『来たか・・・!』
『よし、行こうぜ。』



艦内に流れたアナウンスと同時に、米兵達はそれぞれの持ち場へと帰っていった。





一方、ゴジラはリシアンスキー島近海にいた。
やはり何か変わった行動は見られない。



『ゴジラ確認!爆雷発射準備!』
『・・・用意完了!』
『爆雷、発射!』



戦艦の甲板から一斉に爆雷が発射された。
爆雷はゴジラへ真っ直ぐ飛んで行き、直撃した。
しかし、ゴジラにはさほど効いてはいない様だ。



『爆雷が効きません!』
『一撃でやられたらこっちもつまらない。よし、効いてないならもっと爆雷をかませろ!』
『了解!』



戦艦から続々と爆雷がゴジラに発射される。
数発程度は効かなかったゴジラも少し苦しそうであり、すかさずゴジラは海に潜った。



『ゴジラ、海中に潜りました!』
『逃がすな!魚雷で追い込め!』



二ッキーズも潜水し、今度は魚雷を発射した。
魚雷は正確にゴジラへ向かっていったが、ゴジラは上手く魚雷をかいくぐる。



グルルルル・・・



やがて、ゴジラは日本の領海付近に近付いた。
もしこれ以上ニッキーズが進行すれば、それは立派な領海侵犯になる。



『ゴジラ、日本の領海に接近!ここまで逃げられるともう我々は手を出せません!』
『構うな!ニッポンなんかにあのカイジュウを任せてられねぇ!』
『ですが、それは領海侵犯に・・・』
『そんな事言ってる場合か!オレ達にとっても奴は脅威だろ!』
『しかし・・・』
『責任はオレがとる!構わずやれ!』
『は、はい・・・』



米兵達は戸惑いながらも魚雷を発射していく。
容赦無く放たれる魚雷に段々ゴジラにもダメージが溜ってきたらしく、動きが少々鈍くなる。



『ゴジラ、移動速度が下がってきました!』
『よし!この調子でもっと・・・』



シュゴオオオオオオオ・・・



しかし一瞬の隙を突いてゴジラは海上に浮上し、放射熱線を発射した。
若干威力が弱まった熱線は二ッキーズへ直撃はしなかったが、左辺の外壁をかすめた。
艦内では警告のサイレンが鳴る。



『くっ、どうした!』
『左辺外壁がゴジラの熱線に破壊されました!浸水の恐れがあります!』
『野郎、噂には聞いていたがここまで強力とはな・・・』
『流石キング・オブ・モンスター・・・』
『おい!ボサッとしねぇで早く見てこい!』
『り、了解!』



何人かの米兵が点検の為操縦室から出ていった。
だが、もう既にゴジラの陰はレーダーから消えていた。



『おい、ゴジラは!』
『・・・消えました。』
『なにい!?』
『恐らく我々が熱線に慌てていた隙に逃げたかと・・・』
『ちっ!ふざけやがって!ひとまず浮上だ!』


――・・・バケモノめ、次こそ絶対ブッ潰してやる・・・!



ニッキーズは海上に浮上した。
外はもう、朝日が昇ろうとしている。



『・・・あん?』



と、その時戦艦の元に自衛隊海軍の船が来た。
船の甲板では1人の自衛隊員が、領海侵犯の警告をしている。



『そこの軍艦、止まりなさい!貴方達は我が日本国の領海を無断で侵犯した!』
『ど、どうしますか?』
『けっ、とりあえず出ていくか。』



艦長と数人の米兵は渋々甲板に出た。
それを確認し、自衛隊員も船を近付ける。



「貴方達が犯した罪は重罪です。我が日本憲法第・・・」
『ちょっと待て!納得いかねぇな。』
「重罪を犯しておいて、今更何を言いますか!」
『確かにオレ達は日本の領海を侵犯した。だけどよ、そのゴジラも本来はお前ら日本の「所有物」なんじゃねえのか?』
「えっ?」
『聞いたぜ、ゴジラは日本のちっぽけな島で生まれたんだってな?つまりゴジラは日本国の所有物じゃねぇか。って事はな、その所有物を放置してたお前達の方が責任が重いんじゃねぇのか!』
「そ、それは・・・」
『いいぜ別に。でもこのままあのバケモノを放置しておくんだったら、武力行使を考えてもいいがな・・・?』
「・・・」
『なっ?ここは平和的にいこうぜ?オレは「特尉」なんだし・・・よ?』
「・・・分かりました・・・!」
『わかってんじゃねぇか。まっ、多分また世話になるんでよろしく。』



米兵達を連れ、艦長は笑いながら艦内に戻った。
そしてニッキーズは日本海を去って行った。
自衛隊員は昇る朝日を見ながら、ただ拳を握りしめた。
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