ゴジラ3‐天空の覇者ラドン‐
それから3ヶ月が経った2009年・4月、日東新聞本社の一室で1人の記者がレポート用紙に書かれた記事を読み返していた。
「『現在、鹿児島県・桜島の火口には「ラドン」が住み着いている。
彼が何処から来たか・・・それは未だ、 定かでは無い。だが3ヶ月前、それまで休火山であった桜島が突如噴火してから姿を現したのは確かだ。
その名の由来は中生代の翼竜「プテラノドン」と、元素記号「Rn(ラドン)」を掛けたものなのは周知の通りだが、桜島火口付近の熱エネルギーを好物としているラドンは人を襲わず、山を降りる事も無い。
そんなラドンを一目見ようと沢山の人々が鹿児島に訪れ、近年観光客が下降傾向だった地元を救った。
そんな事もあり、地元に於いてラドンはまるで神様に近しい存在でもあり、県内外にもラドンに好意的な者は多い。
以上を踏まえて、このラドンやかつてバラン・プレシオルを撃退したゴジラ、他にも存在する可能性のある善良な怪獣にも生存権を考えても構わないのでは無いかと、私は思ってならない。
彼等も、この地球の住人の一人なのだから。」
・・・よし、これでOKかな。」
記事を読んでいたのは、日東新聞ジャーナリストの志真だった。
彼は数日前、デスクに指示され「桜島の怪獣」についての記事を書いていたのだ。
「よし、さっそくデスクに報告だ!」
志真はレポート用紙を手に持ち、デスクの元に向かった。
「デスク、例の記事、書き終わりました。」
「おおそうか。さっそく見せて見ろ。」
志真はレポート用紙をデスクに渡す。
「ふーむ・・・志真、お前もなかなか書ける様になったな。」
「ほっ、本当ですか!」
「まぁ、まだまだ爪が甘い所はあるがな。」
「そんな、おだてておいてひどいですよ・・・」
志真はがくんと肩を落とした。
デスクはその様子を見て少し笑いを浮かべると、机の引き出しから世界地図を取り出す。
「そう落ち込むな。それよりお前にやってもらいたい事がある。」
「何ですか・・・?」
「初の海外遠征だ。」
「え、ええっ!?」
今まで不満げな顔を浮かべていた志真だったが、それを聞いた瞬間態度を一変させて話に飛び付いた。
志真の食い付きを確認したデスクは世界地図を広げ、ある所を指差す。
「ここへ行ってもらいたい。」
「ミクロ・・・ネシア?」
「そうだ。そこの列島の一つ、トラック列島に『インファント島』と言う無人島がある。そしてここには『守護神』と呼ばれる巨大な生物がいるらしい。」
「も、もしかしてこれって・・・」
「そう、お前にはこの『守護神』が本当にいるのかを調査して欲しい。確か、水上バイクの免許も持っているんだろう?うってつけじゃないか。」
「まぁ、確かにそうですけど・・・俺って何だか、そういう怪獣系専門の記者になってるような・・・」
「仕方ない。ここ1年半、お前はこういう関連の調査ばかりしていたからなぁ。」
――・・・間違いじゃ無きゃ、ほとんどデスクが行かせた取材じゃなかったっけ・・・
「とにかく、初の海外遠征である事に変わりはないんだ。とっとと行ってこい。」
「分かりました・・・」
志真は適当に自分の机を片付け、部屋を出ると早足で会社を出て自分のアパートへ帰って行った。
今度の取材は、いつもより荷物が大きくなるからだ。
――別に嫌って訳じゃないんだけど、やっぱり『それ相応』なんだな、俺って・・・
翌朝、羽田空港に旅行鞄を手に持った志真の姿があった。
昨夜すでにミクロネシア行きの手続きを済ませ、エスカレーターで登っている所だ。
「ふあああっ、すっごく眠ぃ・・・」
途中、荷物検査や金属探知を受け、志真は無事飛行機に乗り込んだ。
そしてしばらくして、志真を乗せた飛行機は空港を離陸した。