ゴジラ2‐海底大作戦‐
その頃、さつきの作戦室では対プレシオル対策が話し合われていた。
しかし一時間経っても、やはり有効な策が出る様子はなかった。
「やはり、超音波の存在がネックですね・・・」
「これが無ければさつきから魚雷で攻撃出来るのだが、更に深度の問題もある。深度が深ければ深い程、必然的に命中率が下がってしまうだろう。」
「このまま・・・黙って見ている事しか出来ないのでしょうか・・・?」
「それだけは防ぎたい。だが・・・」
「・・・ちょっと、いいかな?」
するとその時、ずっと考え込んでいた菅が話を切り出した。
「そういえば志真君が言ってたんだけど、プレシオルが現れる時は必ず嵐が起こるというんだ。」
「はい、被害報告リストの備考にもあります。」
「・・・極超音波、って知ってるかな?」
「『超音波』じゃ無くて・・・ですか?」
「うん。超音波を越える波長の高周波で、分子までも振動するとてつもない音波なんだ。」
「300万ヘルツの超音波を生身の人体が受けると必ず臓器に異常をきたすと言われている。博士、もしそれ以上の高音波を受けると・・・」
「・・・全身の細胞の分子が分解され、骨だけになってしまう。最も、屋外にいたらの話だけど。」
「骨まで、分解!?」
「・・・志真、お前は少しは静かにしろ!一般人のお前がここにいる事自体、おかしい事なんだぞ!」
「ちょっと驚いただけだろうが!ったく、俺の助言があったからまともに会議が出来るのに、お前はいちいち勘に触る事ばっか言いやがって・・・」
「まぁまぁ、2人共。それで瞬君。プレシオルは日光を浴びると苦しみ始めたと聞いたけど。」
「はい。『しわす』という貨物船の報告に。またその際ゴジラがプレシオルの鰭の一部を引き千切ったそうですが、その鰭は今だに見つかっていません。」
「・・・それだ!プレシオルの細胞は日光を浴びると破壊されてしまう、だから海上に出る時に雨雲を起こして日光を防いでいるんだ!」
「なるほど、空気中の氷分子を振動させ、急激に結合させて・・・もし光線状になれば、建物すら消滅する・・・」
「・・・すみません!」
と、話を聞く立場であった志真が突如手を挙げ、話を切り出した。
「いきなり話を変えてすみません!けど、ちょっとした案が浮かんだんだ!この戦艦にある潜水艦を使って海溝に行って、プレシオルからゴジラを・・・」
「馬鹿を言うのも程々にしろ!自衛隊を舐めているのか!」
「おい、まだ最後まで言い終わって無いだろ!」
「これ以上聞いても時間の無駄だ。一般人の考える事など所詮・・・」
「いいから聞けってんだよ!!この野郎!!」
「!」
志真は怒りを乗せながら両手を机を叩きつけ、瞬を牽制した。
その凄まじい気迫に瞬も口を閉ざす。
「お前みたいなエリートには分かんないだろうがな、一般人って言われてる人達の方が必死になって物事を考えてんだ!石頭の考えしか出来ない奴なんかよりもな!」
「何だと・・・!」
「まぁまぁ、その位で。瞬君、確かに志真君の言う通りだ。案外、一般人の方が忙しかったりするからねぇ。」
「・・・それで何だ。」
「まず、潜水艦に魚雷を三発装備し、潜水限度である水深6000m付近まで行き、それからまず海底に一発打ち込んでプレシオルをおびきだし、上手く奴の背後に周りこんで次の一発を囮として打つ。そして最後の一発で、弱点の頭部を突く。」
「そんな無茶な・・・」
「うーん・・・確かに無茶だけど、海溝に篭っているプレシオルを倒すには、それくらいやるしか無いかなぁ。」
「は、博士!?」
「プレシオルの頭部には超音波を受けとる器官があるはずで、更に超音波だけでは背後がどうなっているかまでは分からない。それがプレシオル唯一の弱点・・・だよね?志真君。」
「・・・はい!」
「・・・分かった。このままでは日本は外交上、孤立してしまう。プレシオルは必ず駆逐する。」
「おっ、やっとやる気になったか?軍人さんよ?」
「うるさい。とにかく、会議は終了だ!今すぐ作戦に移る!」
「隊長、作戦名は?」
今まで会議に参加してなかった・・・いや、出来なかった隊員達がここぞとばかりに瞬へ質問する。
「・・・あの馬鹿に聞け。」
「じゃあ・・・名付けて『海底大作戦』!」
それから隊員達は手際良く作業を済ませ、数十分も経たぬうちに準備は整った。
「ところで、たつには誰が乗る。」
「言い出しっぺだし、俺が・・・」
「待て待て志真君。君は潜水艦の操作なんて出来ないだろう?」
「あっ、そうでしたね・・・」
「・・・だから、志真君は私の助手と言う事で。」
「えっ・・・?」
「聞こえなかった?私の助手として、志真君には来て貰いたいんだよ。」
菅はにっこりと、志真に笑いかけた。
その粋な計らいに心からの感動を覚えた志真は、菅に深く一礼した。
「博士・・・ありがとうございます!」
「まぁまぁ、頭を上げて。さて、そろそろ発進しようか。」
「はい!」
「博士、ご無事で帰ってください。」
「大丈夫。潜水艦の操縦なら自信があるんだよね。」
「あの菅博士だぜ?心配すんなって。」
「お前がいるから余計心配なんだ。」
「これでも作戦の発案者なんだぞ、俺は・・・まっ、お前に心配されてもありがた迷惑だし。」
「そうか。ならば、怪獣に食われてその楽天的過ぎる性根を修正して来る事だな。」
「はいはい。せいぜい気を付けさせて頂きますよっと、特尉殿?」
――この2人、ほんと仲がいいのか悪いのか、分からないなぁ。
「・・・おい、瞬。」
「何だ。」
「お前が馬鹿にした一般人の意地と底力、見せてやるからな!」
「・・・勝手にしろ。」
志真はたつに乗り込み、続いて菅も乗り込んだ。
瞬と隊員達は菅博士と、一応志真への敬意を表し、2人へ向かって敬礼する。
そしてたつは潜水し、海の底の戦場へと向かって行った。