ゴジラ2‐海底大作戦‐






その頃、志真と菅を乗せたきさらぎは日本海溝を潜行している所だった。



「今どの辺りですか?」
「えっと、深度600mって所かな。」
「深いですね・・・」
「まぁ日本海溝にとっては序の口だけどね。そういえばシーラカンス、最近見てないなぁ。」
「シーラカンスって、確かインド洋に住む深海魚でしたっけ・・・?」
「そうそう。でもこれは冗談みたいな話だけど、この日本海溝にもいたらいいな、って思ってるんだ。」
「それは何故?」
「ただの夢。けど、私は図鑑でシーラカンスを見て博士になろうと思ったから、特に思い入れがあるんだ。夢を持ち続けるのは良いことだと思う。『地球のポケット』って言われるくらい、まだまだ海の底は分かっていない。だからもしかしたらシーラカンスだってここにいるかもしれない・・・それだけさ。」
「『夢』・・・ですか。いいですね。」
「もしかしてネッシーみたいなやつも潜んでたり・・・んっ、これは!」
「どうしましたか?」
「ちょっとこれ見て!」



菅はレーダーに映る巨大な陰影を指差す。
陰影は画面の約三割を占領する程に大きい。



「とてつもなく大きい影がこっちに近付いてる!こんなに大きい生物は見た事がない!」
「ゴジラですか?」
「いや、ゴジラは尾含めて150m位だった筈。この影は、ざっと200m以上はある!」
「200m!?ゴジラよりも大きいじゃないですか!」
「しかし、なんだこれは・・・たまげたなぁ。」



菅は操縦機の右脇にある青いボタンを押した。
すると、画面に外の様子が写しだされた。
やはり深海なので外の光景は全く見えなかったが、ライトからの光で何とか様子だけは分かった。



「やばい、もう目と鼻の先だ!」



やがて、画面に見慣れない影が見えてきた。
そう、先程太平洋から逃げて来た白い怪獣だ。



「あっ、あれはまさにネッシーじゃないか!」
「いえ、ネッシーはもっと小さいはず・・・これはもう、『怪獣』!」



キェルルルルルルル・・・



「まずい!早く、SOS信号を送るんだ!」
「は、はい!」



志真は急いでSOS信号のボタンを押したが、その時にはもう怪獣が鰭を船体に叩き付けた後だった。



「う、うわあああああああっ!」



動力部を破壊され、きさらぎは海溝の底へ沈んで行く。
更にその衝撃で、中の志真と菅も失神してしまった。






同刻、しわすの報告を聞いた海上自衛隊の船「さつき」が、東京湾を出ようとしていた。
さつきの甲板では、隊員が何か話し合っている。



「全く・・・バランにゴジラに、今度はネッシーか?」
「ネッシーじゃないだろう。本当かどうか信憑性が薄いし、それに元々ネッシーなんてのがガセ・・・」
「そうとも言い切れないぞ。」



そこに現れたのは自衛隊特別大尉の瞬庚。
かつて、ゴジラとの戦いで指揮をとった男だ。
彼は自分専属の陸海空の部隊を持っており、ここに集まった隊員も全て瞬の部下である。



「隊長、どうなされましたか?」
「確かにネッシー自体はガセかもしれない。だが今回は現に多数の被害が同地点で報告されているし、先程同付近を調査していた一般の潜水艦からのSOS信号がキャッチされた。」
「ま、まさか・・・」
「日本海溝の底に何かがいるのは・・・事実の様だ。」



瞬の示唆した強大な存在を悟った隊員達は、一斉に困惑した。



「まぁ俺もネッシーなんてさらさら信じていない。あくまで今回は似た『巨大生物』の仕業だろう。」
「はぁ・・・」
「巨大生物・・・怪獣は駆逐しなければならない。存在が害だからだ。それはゴジラも同じ事。」
「そ、そうですね。」


――・・・まぁ、志真の馬鹿ならネッシーも信じそうだがな。


「そうだ、『たつ』を準備しておけ。」
「『たつ』をですか?ですが最大深度8000m以上もある日本海溝には・・・」
「念には念を、だ。」
「・・・了解。」



隊員達は準備の最終チェックをする為甲板を出ていき、瞬はどこまでもに広がる大海原を見つめた。



「・・・待っていろ、怪獣・・・」
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