ゴジラ2‐海底大作戦‐







その後、新幹線に乗った志真は翌日の朝、仙台に着いた。
仙台駅から出た志真を、凍てつく北風が襲う。



「っさむ・・・もうすぐ冬かぁ・・・」



ろくに防寒対策をしていなかった志真は寒そうに両手を組みつつ、菅研究所へと向かった。
駅から二時間程歩き、更に仙台湾の海岸沿いを南へ進んで行く。



「・・・あれか?」



やがて、志真の目に巨大な水槽のフィルターに似た菅研究所が見えて来た。
志真は急ぎ足で研究所の玄関に向かい、ゆっくりドアの呼び鈴を鳴らす。



「御免下さーい!日東新聞の志真ですがー!」



しかし、数分待っても中から何故か返事は来なかった。



「おかしいな・・・誰もいないのか?」



志真はもう一度呼び鈴を鳴らしてみるも、やはり返事は無い。



「・・・」



だが、志真の背後からは何やら怪しい影が忍び寄っていた。
そしてその影は、そっと志真の肩を掴んだ。



「うおっ!?」



突然起きた感触に、すかさず志真は振り向く。
すると、そこには左手に耐水カメラを持った、紺の水中服を着た初老の男がいた。



「だ、だっ、誰だ!」
「君こそ誰?」
「お、俺は菅博士に取材しにきた、に、日東新聞の記者・・・」
「おお!早く言ってくれないかい、そういう事は。」
「へっ?」
「私こそが、君達の言う菅だ。」
「え、えぇっ!」



予想外のその言葉に、驚愕の声を上げる志真。



「まぁ、とりあえずは中に入ろっか。」
「は、はい・・・」





菅に連れられ、研究所に入った志真は再び驚愕の光景を目にした。
中は玄関から通路に至るまで、びっしりと魚の標本や水槽が置かれていたからだ。



「こ、これは・・・」
「最初来た人は、みんな同じ反応をするねぇ。」
「そ、そうですか・・・」
「というか私、最初君を見た時見学に来た大学生かと思ったよ。若作りな顔だなぁ~。」
「は、はい。よく・・・そう言われます・・・」





志真はその後螺旋階段を上がり、応接室に案内された。
ここもやはり、魚の標本が置いてある。



「今着替えてくるから、ちょっと待ってて。」



菅はそう言うと、部屋を出ていった。
ずっと奇妙な緊張感を感じていた志真は菅が出ていくと共に大きく息を吐き出し、胸を撫で下ろす。



――・・・もしかして、俺来るとこ間違えたかも・・・





それから5分経ち、白衣に着替えた菅が入って来た。



「やぁやぁ、遅れてすまない。」
「いえいえ・・・それで、例の破片は何処に?」
「あぁ、そうだったね。ちょっと来て来て。」



菅に連れられ、志真は部屋を出ていった。
階段を降り、先程と違う通路を歩くと、地下室の入り口に辿りついた。



「この中に、破片が?」
「そうそう。まぁ入った入った。」



促されるまま、志真は地下室の入り口に入った。
そこには更に下へ続く階段があり、岩壁にはやはり魚の標本がある。
階段を降りて行くと、鉄製のドアがあった。



「よいしょっと。」



菅はドアの隣にあるスイッチを入れると、鈍い音を立ててドアが開いた。
中は特に何も無い部屋だったが、目の前には大きな鉄の塊が置いてある。



「これが・・・」
「そう、『むつき』の破片。」
「これが・・・博士、これはどの辺りの破片ですか?」
「んっと、船底の辺りかな?」
「これを何処で?」
「太平洋を調査している時、海に浮かんでいたのをサルベージしたんだ。ちょうど日本海溝辺りだったなぁ。それにこれを見つけた時に凄い嵐に巻き込まれて・・・あぁ、命からがらだったよ。」


――・・・待てよ。
そういえば、「太平洋のネッシー」も似た事件だったような・・・
目撃されたのが太平洋の日本海溝辺りで、その時は必ず大嵐が・・・


「んっ、何事?」
「いえ・・・少し引っ掛かる事がありまして。」
「ほほう。ジャーナリストの勘かな?」
「多分、そんな所です。・・・そういえば、博士の次の調査はいつ頃ですか?」
「えっと、さっきは軽く潜水に行っただけだったし・・・あっ、そうだ!今から日本海溝を調査しようと思ってたんだけど、君も行きたい?」
「はい!是非調査に同行させて下さい!」
「他に何か見付かるかもしれない。善は急げだ、早速GO!」



いきなりテンションの上がった菅博士は早々と地下室から出て行き、志真もそれに着いて行く。



――この事件とネッシー事件、なにか関係があるな・・・
こんなに共通点が多いなんてそうそうないし、何か得体の知れないものが関わってる気がする。
それに、もしかすればこの二つの事件にゴジラが絡んでるかもしれない。
・・・ゴジラが起こしてるってのは、信じたくないけどな・・・



志真がそうこう考えている内に、菅はステップを踏みながら地下室の奥にある、「立ち入り絶対禁止!」と書かれた紙の張られた鋼鉄の扉に向かい、右横のテンキーに不規則な数字のパスワードを入力して扉を開放。
扉の先には体育館程の、とても個人が所有しているとは思えない程に大きなドックがあり、ドックには既に小型の潜水艦「きさらぎ」が待機している。



「これに乗って行くんだ。中はちょっと狭いけど、慣れれしまえば都ものさ。ささっ、お先に入ってくれたまえ。」
「わっ、分かりました。では・・・」



志真は潜水艦のハッチを空け、中に入った。
その窮屈な艦中は、やっと2人入れる程度だ。
志真に続き、菅が艦内に入る。



「よっこらしょっと・・・」
「博士、入れますか?」
「うん・・・何とかねっ・・・と。」



無事に潜水艦の中へ入った菅は操縦席に座り、志真も隣の席に移動した。



「それじゃあ『きさらぎ』、太平洋へ発進!」



潜水艦は勢い良くモーターを回転させ、海の中へと向かって行った。
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