ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐
同刻、北海道・天地島。
サンクチュアリ内の光の神殿の中に、日東新聞本社から移動して来たノアの姿があった。
彼の目の前には、未だ眠りに付いた遥が仰向きの体勢で浮いている。
『ギヴァークよ、赤子のように動き回るのもじきに終わるか。そして、その時には・・・』
「・・・モスラ・・・!」
と、眠りの中でさえも妨げられない遥の意識がモスラの名を呼ぶや、胸元の結晶が白い光を放つ。
『紛い物の守護神を、心と心で繋がりし獣をなおも求めるか、妃羽菜遥。だが、そうは行かない。御前には「審判」の時まで、「絶望の一夜」を・・・我の記憶を垣間見て貰うぞ。』
ノアが手を翳すと、結晶の光が金色の光に掻き消され、遥は苦悶し始める。
彼女の脳裏には今、ノアが記憶する一万二千年前の一大天変地異・・・「絶望の一夜」の光景が流れ込んでいた。
「う・・・ううん・・・!」
「・・・それからなんや、前々からわたしにだけゴマ擦りよってからに!!あんたが敬意払うんはわたしだけやなくて、雪菜艦長や他の隊長達にもやろうが!!あまつさえ露骨に贔屓しときながら、結局わたしに対しても駄々捏ねよるし!!何がしたいねん、あんたは!!」
「も、申し訳ありませぇん・・・」
「もうその言葉、11回は聞いたわ!!ほんまに分かっとるんか!!」
「わ、分かりました!!心底承知致しました!!もう金輪際二度と雪菜艦長と貴方のご命令には逆らいません!!だから許して下さいぃっ!!」
「・・・ほんまやな?男に二言はないな?閻魔様にも誓うな?」
「誓いますっ!!破った暁には腹でも舌でも首でも何でも切ります!!なのでどうかお許し下さい!お願いしますぅぅ!!」
「・・・次やったら、こんなんじゃ済まへんからな?覚えときや?」
「は、はいぃぃぃぃぃぃっ!!
皆さん!身の程を弁えない出過ぎた真似をしてしまい、大変申し訳ありませんでした!!もう今後、二度と無礼は致しませんのでどうかお許しの程、お願い致します・・・!」
「・・・・・・ふぅ。
皆さん、わたしもお騒がせしてしまい・・・大変失礼致しました。わたしからもどうか、梶さんへの寛大なご対応の程・・・お願いします。」
ラゴウ艦長室では上成のカミナリがようやく収まり、逆に恐怖を覚える程に深呼吸の後に平時通りに戻った上成が雪菜達へ頭を下げ、自分の座席に戻る。
一方で梶は反省の意を必死に上成達に示したいがばかりに、上半身を床に伏すような体勢で土下座をしており、もはや頭を下げているとは言い難い様相であった。
「オッケー!まっ、ひめちゃんのカミナリで十分懲りただろうから、頭を冷やして冷静な状況確認と判断を忘れないようにねー?ドンマイだよ、梶ちゃん!」
「てのかかる事こくからとね!いっとき反省しい!」
「これぞまさに土下寝・・・昔の某を見ているようだ・・・でも小一時間じゃなかっただけまだマシだったりする件・・・」
「間違いは若さの特権じゃぞい。だがな、お前さんが責任ある立場なのも忘れるんじゃないぞ?」
「一応は同じ『菖蒲』隊長のよしみです、雪菜艦長に逆らう事の大罪が骨身に染み、十二分に理解したなら一度だけ許しましょう。ですが、次は無いと思いなさい・・・この恥知らずの痴れ者。」
「・・・梶、3分いじけタイムやるわ。クールダウンまであと3分、その間あんたは役立たずなんは、嫌ほど分かっとるやろうからな?それまでに立ち直りや?」
「はい・・・」
ーー・・・梶隊員、世の中には「していい無理」と「してはいけない無理」があるんだぞ?
梶は項垂(うなだ)れたまま着席し、在りし日の記憶・・・照日元隊長の言葉を回顧していた。
『ですが・・・!まだまだ筋力も体力も気力も、他の先輩に及ばない僕が先輩方に追い付くには・・・!』
『してはいけない無理をしても、事態を悪くするだけ。無駄にしかならない。勇気と無謀は違うのと同じ理屈だ。だから、自分に出来る無理をしろ。無駄な無理をするな。』
『た、隊長・・・』
『・・・まぁ、これは雪菜様からかつて掛けられた言葉なのだがな。君を見ていると、どうも雪菜様に認められたいばかりにしてはいけない無理をしてばかりいた、以前の私を思い出すんだ。だからこそ、同じ過ちは犯してはいけない・・・君は私に似ているが、間違いまで同じであってはならないんだ。』
『・・・はい。』
『分かったなら、今すぐその無駄な走り込みは止めて・・・近くの定食屋で、共に夕飯といこう。』
『えっ?夕飯、ですか?』
『あそこはロースカツ定食が旨い。それでも食べながら、辛い事も嬉しい事も・・・何でも聞こうじゃないか。』
『ぼ、僕なんかが宜しいのですか!?照日隊長と、晩御飯を頂いても!?』
『許可する。だからそんなに自分を卑下するな。私も雪菜様からご指導ご鞭撻(べんたつ)に加えて、心も労って頂けたからこそ・・・今の自分があると思っている。そのご恩を、あの方に倣う形で返すのが私なりの返礼だ・・・では、付き合ってくれるな?梶隊員?』
『は、はい!喜んで!』
「・・・はぁ。」
ーー・・・こんなの照日隊長に見られたら、あの人からもカミナリが落とされるよなぁ。
照日隊長、南野先輩に負けないくらいの悟藤隊長信者だったし、そんな人につい意見した・・・と言うより歯向かっちゃったし。そもそも悟藤隊で一番偉い人だし。当たり前の事だけど。
上成先輩にも絶対嫌われたし・・・他の先輩からも信頼失ったし・・・僕って、まだまだ未熟だなぁ・・・
照日隊長、本当に申し訳ありません・・・
「・・・雪菜たん艦長、怪獣の進行方向に無人島を発見しますた。これはまさか・・・」
「ゴジラの住処、やな。」
ゴォォォォォォヴウウウウ・・・
雪菜の読みは的中。
ギヴァークは海から飛び上がり、鍵島の砂浜に着陸。
舞い上がる砂塵を乗り越えるように更に跳躍すると、今度は木々を薙ぎ倒しながら林の中へ向かう。
ディガアアアアアアオン・・・
焦るゴジラも砂浜から上陸し、駆け足でギヴァークを追った・・・が、すぐに衝撃の光景・・・ゴジラが予期していた最悪の想定が、その眼に飛び込んで来た。
ギュウウウン・・・
チャイルドを頭から鷲掴みにした右手をこれ見よがしに見せ付ける、ギヴァークの姿を。
そう、ギヴァークはゴジラに確実に倒す手段としてチャイルドを人質とする為、鍵島に向かったのだった。
ンゴォォォォヴ・・・
ゴジラが動揺し、手出しが出来なくなった隙を突いてギヴァークは口から暗黒光線を発射。
ゴジラは光線を回避出来ずに光線を腹に受けてしまい、草むらに倒れ込む。
「右手に掴まれているのは、ゴジラの子供?」
「チャイルドちゃん、かわい・・・じゃなーい!人質にされてるじゃない!あんな可愛い子を盾にするなんて、あの怪獣やっぱサイテー!」
「ほんなごと、うらんしいヤツとね!ばりばりうったたいてやりたか~!!」
「汚いな、流石怪獣うらんしい。」
「恐らく、怪獣の目的はチャイルドゴジラ・・・だったのでしょう。姿を眩ませていた間に、自らの脅威となるゴジラの居場所と弱点を探していたのかも・・・しれません。」
「あんな奴に目付けられて、自分の子供人質に取られたんは同情するわ。まぁそれより、うちらなんか眼中に無いってのが気に食わんな?じっちゃん、クールダウンはどや?」
「あと50秒じゃぞい。」
「ひめ、エネルギーは?」
「92%で再び安定・・・問題ありません。」
「・・・梶、汚名返上のチャンスやるわ。クールダウンが終わったら、怪獣にメーサーかましたれ。もしもの時は竜鱗斉射で、まとめてぶっ飛ばす!分かっとるな?みなみ?」
「は、はい!了解しました!」
「あたくしはいつでも何でもOKです、雪菜艦長!」