ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐
「・・・雪菜たん艦長、申し訳ありませんが常考覆し案件です・・・」
風山が気まずそうに雪菜のモニターに外の映像を写すと、そこにはようやく爆煙が晴れて垣間見える海面と、海岸に突き出る岩のようなゴジラの背鰭があった。
更に背鰭はゆっくりと起き上がり、全身を火傷しながらも五体満足のゴジラが姿を現し、ラゴウへ咆哮を上げる。
ディガアアアアアアオン・・・
「あっ!ゴジラちゃん生きてるー!スゴーイ!」
「嘘やろ・・・!?こんなん、ありえへんでしょう!」
「・・・なんか、こんな気したわ。」
「な、なんで全然ダメージを受けていないんですか!間違いなくあいつは爆発を受けた筈なのに!」
「受けて耐えたと言うより・・・そもそも受けていない、そんな気がします。」
「某の推測ですが、恐らくゴジラは全身からエネルギーをぶっぱしたと同時に海中に潜り、あぼーん級爆発のダメージを必要最小限に抑えたのでは無いかと。当たらなければどうと言う事は無い、と赤い彗星も言っていましたしね。」
「生存本能から来る直感がそうさせたんじゃろうな・・・ゴジラ、とんでもないヤツじゃぞい。」
「ばってん、なしてゴジラば反撃せんとね?こんなボコボコにされんしゃあ、うっちばぐらぐらこいてくらさるか、けたぐるね!」
「確かに、のどかちゃんじゃなくてもムカついて殴ったり蹴り飛ばしたくなるよねー?もしかして、非暴力非服従的な感じでわざと反撃しないようにしてるとか?」
「皆さん、やはりゴジラへの攻撃は間違っているのでは・・・?大義名分のレ・ドーム破壊は、わたし達が仕向けた事で・・・ゴジラは自分とチャイルドゴジラを守る為に、外敵を排除しに来た・・・それは、子を守る親なら当然の事です。ですが、ゴジラはわたし達の意図を知ってか知らずか・・・反撃をせずにいます。そんな知性ある存在の同族愛を利用し、一方的に攻撃を加える・・・それは大義名分、なのでしょうか?」
「ですが、上成先輩・・・!」
「うっちは最初からこっすいいじめごたあで、そない賛成じゃなかとね。」
「アタシもー。そもそも今クールダウン中だから、ショットガンと爆雷と魚雷しか撃てないよー?」
「あんたら、何言っとるん!?そもそもこの起動テストは本当に来るかもわからへんヒーロー気取りの怪獣共なんかに頼るわけにいかんからラゴウの、人間の力を見せるって理由もあるんでしょう!?ゴジラの力を肯定すると言うなら『弐番隊』は、すずはもっと早くあいつが来れてたら、助かったかもしれへん事になるやないの・・・!その発言は、もはや雪菜艦長への反逆やで!うちらをここまで鍛えて、導いて、愛してくれた雪菜様への!」
「そ、そうですよ!悟藤艦長に意見するのはまずいですよ!それに照日隊長の無念を晴らすんじゃ・・・」
「確かにアタシはそう言ったけど、すずちゃんはゴジラちゃんの事は特に憎んでなかったし、アタシはアタシ達の頑張りと活躍をすずちゃんに見せたい、って言ったんだよ?梶ちゃん?そしてそれは、ゴジラちゃんを倒す事で本当に果たされるの?せっさん?」
「・・・」
「そうね!五月雨さんの言う通り!『弐番隊』を全滅させたんは黒い怪獣とよ!ほんなごつ倒すんは、そいつね!」
「うっ・・・!でも・・・分かってはいるけど・・・!」
「ゴジラは未だ、威嚇行為しかしていません・・・恐らく今わたし達が攻撃を止めれば、穏便に終わるかも・・・しれません。起動テスト自体は本来の目的を果たして・・・います。」
「呆れたわぁ・・・一緒に『菖蒲』やって、ここまであんたらに腹立てたんは初めてですわ!!雪菜様に逆らうなど、恩知らずも甚だしい・・・!ですよね!雪菜かん・・・」
「みなみ、今うち真剣に考え事しとるから話し掛けんとって?頼むから?」
「ひ!!お、お許し下さい雪菜様・・・そ、そう言えばさっきから沈黙している風山隊長?貴女はどう思っているのか、もうそろそろ聞かせて貰いましょうか?」
「うげっ、ROMってたのにバレた・・・」
「うげっ、ではありません。ゴジラ攻撃賛成派と反対派は、今の所半々ですからね?貴女の意見次第で、とりあえず多数決ははっきりします・・・で、貴女の意見は?」
「そ、某は・・・それ以上でもそれ以下でもな・・・」
「ネットスラングは結構。貴女の率直な意見を聞かせなさい、早く。」
「え、ええっと・・・」
「ちなみにワシはどっちでもええぞ?」
「はい、外部協力者の貴方は最初から頭数に入れていませんが?」
「・・・そこまでズバリ言う事は無いんとちゃうかのう?細木数子ばりに・・・」
「そうねそうね!前々から南野は雪菜隊長云々言うけど、他の先達への敬意が足らんっちゃないとよ!いくら『壱番隊』隊長ばってん、人生の先輩にそげんな事したらいかんめえ!やけんあんたはいつまでもびったれとね!」
「それは今問題ちゃうでしょう!?と言うか寺森隊長、貴女もう少し博多弁控えなさいよ!たまに何言うてんのか分からんなんの!」
「菖蒲」隊長達で起動テストと言う名のゴジラ攻撃への見解は真っ二つに割れ、風山に多数派の優劣と重圧が強引に委ねられる中、雪菜は無言で考え続けていた。
ーー・・・なんでや。
ついさっきまでゴジラをブッ倒す気マンマンやったのに、今はなんでか気力が薄れとる・・・
クールダウンが終わるまでありったけのバルカン砲と爆雷と魚雷で凌げば、またメーサー砲もミサイル斉射も出来るようになる・・・やのに、本心がもしかしたらラゴウじゃ勝たれへんかもって、このまま戦い続けたらアカンって言っとる。
別にアイツ・・・瞬の言う事が正しいって認めたわけやないし、ラゴウの力が必要なのを見せ付けたる思いは変わらん・・・やけど、こうして直接ゴジラと相手して・・・正直、うちは迷っとる。
特佐として、悟藤隊隊長として、大ジジの曾孫として、殉職したすず達の為にも、うちはこのラゴウでやらなアカンのに・・・!
やのに、なんでや!アイツが反撃して来たら、遠慮なくやれるのに・・・!
なんでアイツは反撃せえへんねん!
なんでアイツは威嚇するだけやねん!
なんでアイツは、戦わへんねん・・・!
これが・・・自衛隊のやる事なんか?
うちがホンマにやらなアカン事なんか?
うちは、ホンマは・・・どうしたいんや?