ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐
つくば郊外の空き地。
長年に渡って国有地となっていたこの荒野に突如地響きが起こったかと思うと、荒野が真っ二つに割れて行き、草が生い茂る銀色の裂け目から見える秘密ドックに鎮座するラゴウが、半世紀の時を経て陽光の元に晒された。
この場所は荒野に偽装された秘密ドックのハッチにして、ラゴウの出撃口であったのだ。
「よし、『竜胆』起動じゃぞい!」
北大路の言葉と共に、南野が手元のキーボードを高速で叩き、雪菜の眼前のモニターに「竜胆」起動承認の了承画面が出る。
雪菜は親指をモニター下のタッチセンサーに押し当て、指紋認証で「竜胆」の起動ロックを解除。
北大路の手前に置かれた古びた赤いスイッチのシャッターが開き、北大路が右手の拳を叩き付けるような動作でスイッチを押すと、ラゴウ最深部の核融合炉「竜胆」が鈍い稼動音と共に起動。
莫大なエネルギーが「竜胆」と接続した極太の回路「竜骨」を伝って、ラゴウ全体へと流れ込んで行く。
「『竜骨』、無事に作動中・・・エネルギー伝達率92%で安定しました。皆さんの方は・・・いかが?」
「はい!上成先輩!竜頭光線も充電率100%です!」
「ちっ、梶きゅんに1ゲットされた・・・ちなみに上成氏、各管制機器及びレーダーは全て問題無く動いていますので。」
「梶ちゃん、中々のハリキリボーイだねぇー?各武装もいつでも発射オッケーだよー!」
「こちらでも、各部異常ありません。しかし起動するや、瞬く間にこのエネルギー量・・・流石は核融合炉ですわ。」
「まぁ、海やなくて空を行く舟なんやからこれくらいのパワーは必要やな?」
「ワシは核の存在自体はあんまり気持ちよくはないがな、『竜胆』は原爆や水爆なんぞより、よっぽどマシな使い方じゃぞい。ところで寺森、『竜足』はどうじゃ?」
「いつでも行けるとよ!キタおいちゃん!」
「じゃあ行ったれ、のどか!ラゴウ浮上や!」
「了解!さんのーが、はいっ!!」
寺森が舵輪に似た操縦レバーを引き上げると、竜の足を模したラゴウ下部のブースター「竜足(サテライト・スラスター)」が勢い良くジェットを吹き出し、ラゴウが浮き上がって行く。
「あっ!みてパパ~!ふねがぷかぷかういてる~!」
「ほ、本当だ!すごいなぁ・・・!」
「まるでアニメみたいね。」
「あれ、もしかしてラゴウじゃね?」
「マジで空飛ぶとかヤバすぎっしょアレ!!」
「すごいぞ~!カッコイイぞ~!」
「やはり日本は、あんな動く原発に頼るような国になってしまったのか・・・!?」
「目を覚ませよ、自衛隊に国会の奴ら!」
「・・・ばあさんや、わしらが子供の頃に作られとったラゴウが飛んでおる。」
「そうだねぇ。今度こそ、この国を守って欲しいもんだねぇ・・・」
やがて地上に姿を現したラゴウはそのまま上空へと浮上し、一旦停止すると共に背部のブースターが作動。
様々な思いで見上げる人々を背に、海上を進む艦の如く、ラゴウは天上を飛んで往った。
「『竜足』、動作はよこざっしょね!」
「問題無い、って事やな?じゃあこのまま小笠原諸島まで頼むわ!」
「うっちに任しときぃ!全速前進とよ!」
「寺森氏、それを言うなら全速前進DA☆の方が良いかと思います。」
「いや、それって何処ぞの社長じゃないですか風山先輩。それにしても、本当に戦艦が空を飛ぶなんて・・・」
「宇宙戦艦の方のヤマトみたいだよねー。アタシも内心ワクワクもんだよー♪怪獣退治の為にしか出撃出来ないけど、いつか弟や親戚の姉弟ちゃん、いや子供達にこの中を見学させてあげたいなー!」
「五月雨さん、それは名案・・・だと思います。今まで架空の存在、絵空事だった空飛ぶ船・・・子供だけで無く、かつて子供だった大人達の夢見た事が具現化したのがラゴウ・・・なのですから。」
「時代が追い付いた、と言う事ですね?いつかあの電光超人もそうなると、某(それがし)も信じてなりません。」
「ま~たのぼせもんの風山がばかちんな事言っとるとね?ほんなごつターミネーターごたあ事になったら、どうすると?やめときい。」
「でものどかちゃん、いつか人口知能が人間より賢くなるかもしれない、って前から言われてるんだよねー。みやこちゃんの言う通り、本当にターミネーターや電光超人みたいな事になるかもしれないよー?」
「ばってん、五月雨さん?風山はただアニメや映画ごたあ事になるんを、楽しんどるちゃないとね?」
「動機はどうであれ、夢見る事は力になり・・・何かを成し遂げる。わたしはそう・・・思います。風山さんも皆さんもそうして自衛隊に、菖蒲の隊長になったの・・・ですから。」
「禿同です、上成氏。厨房の頃からの妄想を、某は今叶えているのですよ・・・ベイビドンドン、ベイビドンドン、夢見てー♪」
「・・・僕は寺森先輩の対応の方が正しい気が。あっ、上成先輩の言う事は間違い無く正しいですよ!」
「梶さん、ありがとう・・・ございます。」
ーー・・・むふふー♪
梶ちゃんって、分かりやすくひめちゃんラブだよねー。
やっぱ逆紅一点な男のコがいるんだから、ロマンス要素は欲しいよねぇー♪
そんな男子隊員達から「悟藤隊のお姫様」と愛されるひめちゃん、実は子供っぽい男の人が好みだから、もしかしたら脈アリかもしれないし・・・アタシは応援してるよー!
「・・・あいつら、相変わらずやかましい奴らじゃぞい。『女が三人寄れば姦しい』と言うが、ワシ以外は女じゃからのう?」
「北大路様、あそこにいる梶は低身長で童顔気味ですが暫定ながら弐番隊の隊長を努めている、一応男ですが。」
「おう、そうじゃったか?新入りじゃから忘れとったぞい。」
「あの、南野副艦長?全部聞こえているんですが・・・」
「あら、そうでしたか?あたくしは事実を言っただけですので。」
「まぁ、頑張りや梶?みなみもあんたの実力を認めたら、塩対応や無くなるからな?」
「そうだよ、梶ちゃん!みなみちゃんも最初は押しが強過ぎてせっさんから塩対応受けちゃってたけど、頑張りまくって今や頼れる副官ポジになったんだからねー。何とかなるなる、ケセラセラー!」
「きいの言う通りやな。うちが腐った男共しかおらん駐屯地から拾ったった途端に毎日宿舎の部屋に押しかけられたら、いくらうちでもたまらんわ。なぁ、みなみ?」
「あ、あの雪菜艦長に五月雨隊長!?あたくしの昔の事なんかどうでもええでしょう!?」
「いえ、温故知新・・・とも言います。昔の自分を忘れない事も大切・・・ですよ?南野さん。」
「せやせや、流石ひめはええ事言うわ。梶はまだ知らんだけで、みなみの昔話はうちら『菖蒲』トークの鉄板やからな?」
「そうなんですか・・・」
「梶、そこ納得せんといて!上成隊長の言う事はごもっともですが、雪菜様を常にお側で支えるあたくしの立ち位置としては・・・」
「いえいえ、壱番隊隊長として某達『菖蒲』を纏める凛々しき南野氏の黒歴史暴露、そして羞恥心に悶絶する姿・・・これぞ萌えです。ウマー。」
「南野はもうちょびっと、我慢を覚えないかんめえ。そげな事で狼狽えるんは、まだまだびったれな証拠ね?」
「分かっております、寺森隊長!タフを絵に描いたような貴女に比べればまだまだあたくしはだらしない、びったれな女な事は!それと風山隊長、起動テストが終わったらちょっとあたくしの部屋まで来なさい。」
「それ、うちも一緒に行こか?『雪菜たん様』呼びは許したけど、最近また調子こいとるし・・・なぁ?みやこ?」
「なん・・・だと?」
「まだ『上成のカミナリ』落ちひんだけ、マシやと思いや?あんたが一番分かっとるやろ?」
「ももも、勿論でございます!雪菜たん艦長・・・ガクブル。」
「『上成のカミナリ』?何ですかそれは?」
「まっ、一言で言えばひめちゃんを怒らせない方がいいって事かなー?梶ちゃんは大丈夫だと思うけどねー。」
「・・・五月雨さんの仰る通り・・・です。わたしも怒るのは苦手・・・なんです。」
「し、承知しました上成先輩!絶対に気を付けます!」
「おい、結局雪菜と南野もくっちゃべっとる間にもうすぐ大島じゃぞい!」
「ホンマや!やっぱ速いわぁ~。」
「ラゴウはマッハ1、音速と同じスピードが出せるやけんね!キタおいちゃん達、やっぱすごか~♪」
「ったく、寺森もワシらみたいなジジイがお気に入りとは物好きじゃのう?褒めても錆しか出んぞい?」
「寿司のサビよりよかとね!故郷の博多じゃおいちゃんに育てられたうっちにとっちゃ、亀の甲より年の功だけん!」
「じっちゃんはうちのジジも部下達も信頼しとった縁の下の力持ちやからな!やからこそ、こいつが動く日をうちと同じくらい待ち望んどった・・・これはじっちゃんにとっても、雪辱戦なんや。」
「・・・あと、照日隊長達にとってもです。空気を読めない発言、本当に申し訳ありませんが・・・」
「いえ。照日さんや、弐番隊の皆さんの事も忘れては・・・なりません。」
「照日も『対獣条約』締結とラゴウの起動、ばりばり願っとったとね・・・」
「どうにか照日氏含めた弐番隊の死亡フラグをへし折る術は無かったのかと、某も思います。」
「それについては、あたくしも同意です。あたくしと共に切磋琢磨し、雪菜様を信奉していた照日隊長が・・・すずがここにいないのは、やはり無念でなりません・・・!」
「・・・まっ、すずちゃんも弐番隊のみんなもきっとお天道様から見てるんだから、アタシ達の頑張りと活躍を見せて、安心させたげようよ!それがすずちゃん達への、最高の手向けなんだから!だよね、みなみちゃん?せっさん?」
「・・・はい。ありがとうございます、五月雨隊長。」
「最年長にしてムードメーカーは、言う事がちゃうな。せやからあんたら、起動テストは絶対成功させるで!」
「「「「「了解!」」」」」
ーー・・・最高の手向け、か。
こんな若造の女共が、昔のワシらと同じ経験をするとはのう・・・いつの世も、争いはロクなもんとちゃうぞい。
・・・悟藤紫郎隊長。貴方もお天道様からワシの、曾孫の・・・ラゴウの事を、どうか見守っとって下さい・・・
いつもと変わらない雑談で絆を深め、無念の死を遂げた者への弔いで気を引き締め、悟藤隊・・・ラゴウは初陣の地・小笠原諸島へ向かうのだった。