ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐
同刻、小笠原諸島には一機の巨大な灰色の戦闘機が運び込まれていた。
まるで亀の甲羅にも似た形状と、前後左右に四基付いたサテライト・スラスターが特徴的なこの戦闘機の名は「レ・ドーム」、通称「カメーバ」。
2009年、ラゴウから技術流用されたサテライト・スラスターの試用実験の為に開発された試作機であり、兵器類は一切搭載されておらず、索敵用のレーダー機器のみを搭載している。
試用実験の役目を終えた後は約1年半前にバラン索敵の為に使用されたものの、以降は正式にサテライト・スラスターを搭載したむささびの開発が決まった事によって自衛隊本部の格納庫の倉庫番をしていたが、大元たるラゴウ出撃の時を迎え、約1年半振りにして最後の出動となったのだった。
それから約一時間後、自衛隊本部の地下666mの秘密ドック。
終戦後は極一部の者しか入る事が許されなかった、日本政府トップシークレットの一つの地に、雪菜が到着した。
目測数百mはあろう程に巨大な秘密ドックには、一つの巨大な「舟」が鎮座しており、鋼鉄の船体は帆船の様な形状をしながらびっしりと竜の鱗に似たミサイル発射口が取り付けられ、船尾には竜の尾を模した爆雷発射口が、船首には戦時中に考案されながらこの舟と共に未使用に終わった「ある技術」を光線に転用した発射口を搭載した、竜の頭が付いていた。
この「舟」こそが、内閣総理大臣の承認無しでは出撃はおろかこのドックに立ち入る事さえ許されない、第二次世界大戦下に水面下で進行しながら歴史の闇に消えた、超兵器製造計画「ラ『號』作戰」の最初で最後の結実・・・自衛隊最強・最大の超兵器・ラゴウである。
「「「「「お待ちしておりました!雪菜艦長!」」」」」」
ラゴウの搭乗ハッチには、南野を中心に先日の大阪で全滅した弐番隊の補欠要員も含めた、「悟藤隊」所属の全隊員111名が集合。
更に補充要員として他の駐屯地より召集された者を含めたラゴウ搭乗員151名が、ラゴウの艦長となった雪菜へ敬礼すると共に叫ぶ。
集合した隊員の約3/2が女性隊員であり、補充要員を含めても男性隊員は3/1を上回るか程度で、自衛隊の掛け声としては異質なまでに高い声がドック中に響く。
「みんな、よう来てくれた!やっとこの日が、ラゴウ出撃の時が来たで!」
「はい!雪菜艦長!はぁ・・・それにしても雪菜様の事を『艦長』と呼ぶ日が来るやなんて・・・!あたくし、感激ですわぁ♪」
悟藤隊・総合担当「壱番隊」隊長、南野みなみ航空大尉。
「だよねー、せっさん信者のみなみちゃんじゃなくてもこりゃ嬉しいよねー。」
悟藤隊・海上担当「伍番隊」隊長、五月雨(さみだれ)きい海上大尉。
「でももう少し、自重して欲しいとね。」
悟藤隊・陸上担当「陸番隊」隊長、寺森(てらもり)のどか陸上大尉。
「激しく同意です。」
悟藤隊・情報担当「肆番隊」隊長、風山みやこ海上中尉。
「そう・・・ですね。気持ちは分かります・・・が。」
悟藤隊・医療看護担当「参番隊」隊長、上成(うえなり)ひめ陸上中尉。
「私は、照日すず隊長の無念を晴らせるなら何でもええです。」
悟藤隊・航空担当「弐番隊」暫定隊長、梶さと航空小尉。
「あんたら、初めての全員出動やからって女子高生みたいにあんまかしましくすな!梶みたいにちゃんとした志持ってやらなアカン事やねんからな?」
そして、「悟藤隊」総隊長・悟藤雪菜特別大佐。
隊を構成する六つのグループに加え、総隊長たる雪菜を含めた隊の総称「虹色部隊・菖蒲(アヤメ)」が訓練・演習では無く、正式な任務で初めて一同に会す事となった。
「まぁそれも、ワシら整備班のお陰なのを忘れるんとちゃうぞい!」
悟藤隊の隣には、今日までにラゴウの整備を完了させたツナギ姿の老齢の整備士達がやけに自信に満ちた表情で立っており、先頭には以前雪菜との会話後に自衛隊本部から秘密ドックへ入って行った老人がいた。
彼の名は北大路。第二次世界大戦時、学生の身ながら兵役へ駆り出されるも、辛くも生き延びた戦争の生き字引であり、雪菜お抱えの優秀なエンジニアでもある。
今は自衛隊とは無関係の人間だが、かつて戦場で重火器や無線機だけで無く、戦闘機・戦車・艦艇をも修理して来た経験を買われ、ラゴウの整備担当として雪菜によって北大路の整備士仲間共々、内密に招致されていた。
「分かっとるって!北大路のじっちゃん!優秀なじっちゃんと整備士のおじい達がおったから、ラゴウを動かせるんやから!お礼にテスト終わったら、うちがみんな飲み会に連れてったるわ!」
「おっ、ほんまかぁ!」
「「いやっほ~う!!」」
「流石はせっちゃんったいね~!」
「楽しみにしとるけ!せっちゃん!」
「約束じゃぞい!雪菜!」
「任しとき!」
「・・・俺達、やっぱり場違いだよな?」
「こんな女だらけの自衛隊出動なんて、多分他には無いぞ・・・」
「アウェー感が強過ぎる・・・ある意味辛い・・・!」
「これが、女社会か。」
その一方で、補充要員含めた3/1の男性隊員達は密かに疎外感を感じずにはいられなかった。
「はいはい、っちゅう事で浮わつくんはここまでや!うちらが、うちのジジ・・・祖父の悟藤紫郎がずっと待ってたこの日、ラゴウ出撃の時がいよいよ来るんやからな・・・!
それもこれも、うちを支えてくれたあんたら悟藤隊のみんな、無理強いに応えてくれた北大路のじっちゃん達、150人はおらな動かされへんラゴウを動かす為に来てくれた補充要員、うちに賛成してくれた人ら・・・それとうちに改めて『対獣条約』締結へ奮い立たせてくれた、照日航空中尉率いる元弐番隊の犠牲のお陰や。」
「・・・!」
「あの子らに、これまで怪獣のせいで犠牲になった全ての悟藤隊員に報いる為にも、ラゴウの力を日本中に・・・いや、世界に!怪獣共に今日示したる!怪獣ゴジラなんかもういらん!うちらで、ラゴウで・・・人間の力で、怪獣から人間守ったるんや!!」
「「「「「おぉーーーーーーーーーッ!!」」」」」
「それじゃあ、総員!ラゴウに搭乗!出撃準備や!」
「「「「「了解!!」」」」」
雪菜の号令と共に、搭乗員達はラゴウに乗船。
各々の持ち場に付き、最新鋭の機器にアップデートされた機械を使って出撃準備を進めて行く。
「・・・これが、ジジが見る筈やった景色なんやな・・・」
艦長室には雪菜と「菖蒲」の隊長達が入室。
雪菜は艦長が座する部屋の中央の統制モニターの前に立ち、南野はその右側にある竜の髭に似たレバーが両脇に取り付けられた副艦長用の椅子に、北大路は左側の整備班代表兼核融合炉「竜胆」の制御担当を担うブースに座る。
「雪菜艦長、やってやりましょう!あたくし達悟藤隊が!」
「せやな・・・やからあんたにラゴウの必殺技の引き金預けたんや。これでも頼りにしてんで?南野副艦長?」
「は・・・はい!あたくしにお任せあれ、雪菜艦長!あぁ、これぞまさに僥倖ですわぁ・・・!」
「せっさーん?全武装準備完了だよー?」
「『竜足』も準備完了とね!雪菜さん!」
「雪菜たん艦長、各索敵・管制機器のチェック、ノーミスキタコレです。」
「『竜頭光線』も各部問題ありません。雪菜艦長。」
「あの・・・雪菜艦長。『竜骨』の準備完了・・・しました。」
「雪菜!『竜胆』ならいつでもバッチリ起動出来るぞい!」
「総員配置及び準備、全てオールクリアです!行きますか?雪菜様?」
「・・・よっしゃ、ほな行こか!
超弩級艦・ラゴウ、出撃や!!」
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