ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐
翌日、大阪での一件の影響で国会では対獣条約可決の動きが強まり、可決派の雪菜と反対派の瞬の対立はますます強まっていた。
「あの戦い、うちとしてはゴジラが更に被害を広めたように思います!京セラドーム大阪一帯の壊滅的な被害は、より肥大化したゴジラの力が合わさった事が一因であると言うネットの声が、多数寄せられています!」
「「「そうだそうだ!」」」
「やはり、ゴジラは危険な存在だ!もしあの力が我らに向けば、日本は壊滅させられる!バランとモスラも同じだ!」
「・・・そのゴジラ達に助けて貰いながら、恩を仇で返すような事をするなんて、馬鹿らしいにも程がありますわ。」
「浅田君は黙っていてくれ!君が以前モスラに協力を要請しようなどと言い出したから、怪獣の存在をなし崩し的に認める流れになったんだぞ!」
「ですけど、その鶴の一声が無かったら日本は魔獣達に滅ぼされてたでしょう?自衛隊は食い止めるのが精一杯だったんだからさ?」
「日和見主義が口を挟むな!」
「ちなみにゴジラが京セラドーム大阪一帯の被害の一因である、と言う意見ですが・・・今朝発刊された日東新聞のこの記事によれば、京セラドーム大阪付近で被害に遭った者達によるゴジラへの反感は100人中8人、つまり一割にも満たなかった、とあります。加えて記事を書いたのは3年前のバラン事件にて結果的にゴジラの名付け親にもなり、以降も怪獣関係の取材をし続けている志真哲平と言う記者。匿名性の性質上虚偽や悪意のある発言が飛び交うネットの声よりは、信用度は高いでしょう。」
「「「そうだ!!」」」
「ですが、言ってしまえば1人の新聞記者の主観ですよね?それに最低でも8人はゴジラへ反感を抱いている、その事実は消えませんよ?」
「おい南野!瞬殿が信用する志真の言う事が間違ってるってのかぁ!」
「そうだ!多数決だけが正しいわけじゃないが、証拠としては正当性が高い事にも変わりない!揚げ足を取るな!」
「貴方達だって、雪菜様の揚げ足を取ったでしょうが!?多数決が正しいならネットの声も無視出来ひんでしょう!」
「先にやったのはお前らの方だろうが!!」
「ばか、ここは国会だぞ!私語は慎め!」
「ご静粛に願います!」
「せやな?やから南野もあんたらも、少し黙ってて?」
「お、お許し下さい雪菜様・・・」
「・・・部下の無礼、私もお詫びします。ですが、対獣条約は少なくとも今は人類に害を成していない怪獣達への一方的な攻撃をも可能としてしまう。それによってゴジラ達が本当に人類の敵となってしまう結末を招きかねない、人類のエゴイズムが見え隠れする法を、私は容認出来ない。」
「・・・瞬も毎日こんな不毛な口論ばっかりして、ご苦労さんだよな。まっ、俺が言いたかった事をズバり言ってくれたのは流石だぜ。」
「志真~?オレらその不毛な口論をまとめて大衆に配る仕事だぞ~?」
「ってか、何で昨日大阪で怪獣に襲われながらぴんぴんしてこっち帰って来てんだよ!」
「別に慣れてますし・・・それに現地にいたなら、現地の声をなるべく早く届けないといけませんよね?なら朝刊には絶対間に合わせないとですし。」
「そりゃそうだが・・・」
「・・・アイツ、いつこんなダイハードなヤツになったんだ?」
「瞬さん・・・」
「軍人さんも、ニクい事を言ってくれるねぇ。きっとこの人なら、怪獣を一方的にやっつける法なんか成立させやしないよ。」
「私もそう思うわ。モスラ達が人間達から攻撃されるかもしれないなんて、そんなの本当に嫌だから・・・」
「そうさ。勝手な理屈で守護神様に楯突くなんて、無礼にも程があるよ。どうして人は、争いたがるんだろうね?」
ーー・・・ノアさんも、こんな人間に嫌気が差したのかな・・・?
日東新聞本社では志真が先輩記者達と部署で、京都・妃羽菜家では遥が佳奈他と共にテレビで国会中継を介し、瞬を見守っていた。
「あの、美談は結構ですが根本的な事を忘れてません?うちらは自衛隊の一員として、国民を守る義務があるんですよ?それにいつの間にか人類の味方認定されてるバランは、少なくとも三回は人間に害を与えていますよね?」
「バランが人類に敵対した根本的な原因は、人類側の思い込みによる一方的な攻撃が切欠だった事は既に中端元総理が開示していますし、バランが自らの意思で魔獣達やギドラ一族、アイヴィラ等を駆逐する事で今は人類に牙を剥かない存在である事を証明しています。そんな危なげな関係性で成り立っているにも関わらず、もし人類が再度バランに攻撃すれば最後、今度こそバランが人類を滅ぼす脅威に変わってしまう可能性を何故考えない?何故わざわざ敵を作る?」
「害となる可能性があるのなら、害となる前に消し去るのが正攻法でしょう?確かにうちら自衛隊は専守防衛故に成り立ってますが、いつまでも後手に回っていては最初に起こる被害を防げない。最も危険な脅威は事前に取り除く必要がある・・・それが防衛じゃないんですか!」
「それは半世紀前のバランの悲劇を、ブリュー元特佐と同じ過ちを繰り返すだけだと、何故分からない・・・!」
「まぁ、半世紀前のバランの悲劇や2年前にブリュー元特佐が起こした事件を極力繰り返しては駄目ですが・・・どの怪獣もバランやモスラ、そしてゴジラのような気まぐれを起こしてくれるとは限りませんよ?怪獣は基本的に人間の脅威で、怪獣が暴れる度に誰かが守る為に、むざむざ無駄に死んで行く・・・!これも立派な悲劇やろう?じゃあ、そうならない為にどうすれば良いか?それは『力』と『法』!
うちは『対獣条約』締結の暁には、条約の元にのみ限定し・・・旧日本軍が極秘に開発していた超弩級兵器『ラゴウ』を使用しようと思てます!」
その雪菜の言葉に、国会中がどよめきを起こした。
「ご、悟藤特佐!?何を言っているんだ!」
「早急にその発言を取り消したまえ!」
「自分が何を言っているのか、分かっているのか!?」
「はい、分かってます。『対獣条約』締結に消極的な理由の一つに、自衛隊の通常兵器だけで怪獣を駆逐出来るのか?と言う点はあると思いますし、うちも無駄な犠牲を出してまで条約の元に怪獣を攻撃しようとは思ってません。だからこそ絶対的な力が・・・この国を、人々を怪獣から守れる手段、ラゴウが必要なんです!既に総理にもこの話を進めています!」
「「「なっ!?」」」
「総理!それは本当ですか!?」
「いつそんな話を!」
「納得の行く説明を求めます!」
「静粛に!!」
「・・・悟藤特佐、ラゴウの存在を正式に世に示すと言う事は、旧日本軍の数々の機密事項を晒すと言う事。それを承知の上での発言か?」
「流石は一 頼黄元陸将の孫、よう分かっとるやん・・・承知の上や。当たり前やろ?」
会場は大混乱のまま、この日の特別国会は続行不能と判断された事で中止となった。