ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐
「お父さん・・・何故だろう、ディラハルコンの中にあのお兄さんがいる気がする・・・」
「・・・あぁ。それはきっと、気のせいでは無い。俺も同じ思いだ・・・」
アトランティス・ラピュタ。
避難用の飛空挺の中で、ゼマによって再び絆を取り戻した親子はムー方面から見えた、空へと向かって行く一筋の光を見てそう呟く。
ゴァアアン・・・!
ゴァアアン・・・!
ゴァアアン・・・!
ウゥィィィィゥウ・・・
ウゥィィィィゥウ・・・
ウゥィィィィゥウ・・・
その僅か後、世界中から橙色の奔流・・・マナが吹き出し始めた。
大地は割れ、海は逆巻き、空は暗雲と雷が吹き荒れ・・・人類の繁栄の象徴たる建築物もレグチュアも、逃げ遅れた人々も動物達も、この事態を引き起こしたジラ達も総てが例外無く・・・地割れに落ち、大波に呑まれ、雷に打たれ・・・マナの中へと消えて行く。
「ああ、ムーが沈んで行く・・・!」
「世界って、本当にこんなに早く終わっちうんだなぁ・・・」
「・・・あたし達、どうなるのかしら・・・」
「栄光のアトランティス・・・だったのに・・・」
「俺達人間って、何なんだろうな・・・」
「信じない・・・こんなの、夢であってくれ・・・頼むからぁ・・・!!」
「かあさ~ん!み~んなきらきらしてて、きれいだね~!」
「そう、だね・・・そうだねぇ・・・!」
永久凍土の地である南極が崩壊し・・・この星そのものを揺るがしながら、ムーが、アトランティスが、ニライ・カナイが、レムリアが、続々と海の中に沈む。
『・・・神の使いの怒りに、決して触れるべからず。さすれば天地は怒り狂い、全ては滅び去る・・・』
人々の虚しい言葉達も残酷なまでに届く事は無く、「絶望の一夜」はこうして起こり・・・世界は、だった一晩で終わりを告げた。
ーー・・・ゼマ、起きなさい。
「・・・ねぇ、さん・・・?」
世界が滅びに向かう中、ゼマは懐かしくももう会えない、世界で最も愛おしい声と共に目を覚ました。
「ここ、は・・・?」
ゆっくりと瞼を開いた、ゼマの目に見えたのは・・・空の果てを越えて辿り着いた、暗闇の中で無数の点のような光が瞬く、あまりにも広大な世界・・・宇宙。
誰も行き着く事の無かった、人類未踏の果てしなき世界に、ゼマはただただ見惚れていた。
「・・・そうか、ここが死者の世界なのか・・・なんて広くて、静かで、美しいんだ・・・」
全身の力を抜き、何処か万感の思いに浸るゼマ。
「宇宙」と言う概念の無いゼマにとって、この宇宙は黄泉の国に見えたのだ。
ギィウウウ・・・ウウウン・・・
「・・・そうだね、ハルコン・・・これでやっと、解放される・・・君も、僕も・・・お前も・・・」
グァアア・・・アアウン・・・
「ディラ・・・せめて、安らかに眠ってくれ・・・そうしてくれたなら、僕はお前をきっと赦せる・・・もう、辛くも寂しくもないんだ・・・これでいいんだろう?ハルコン・・・?」
「願い」を果たし友と共に安息へと向かうハルコンと、漸く「破壊」と言う存在意義から解放されたディラへ優しく語り掛け、ゼマは再び目を瞑る。
「・・・やっと、あえるね・・・ねぇさん・・・
ぼく・・・こんどこそ、ねぇさんといつまでも、いっしょにいたいなぁ・・・」
ーー・・・ええ。
私と貴方は、永遠に・・・いつまでも一緒よ。
だから、今はおやすみ・・・ゼマ。
「・・・うん。
おやすみ、ねぇさん・・・・・・」
グァアアアアアアアウン・・・
ギィウウウウウウウウン・・・
ゼマとディラを連れ、ハルコンは光の翼を瞬かせながら・・・橙色に染まる地球を背に、眼前に浮かぶ月へと消えて行った。