ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐
「何だ、あのハルコンの出力は・・・通常の2倍、いや3倍以上もの出力が発揮されている・・・!まさか、本当にハルコンの中のジラ遺伝子とゼマとが共感し、想定以上の出力を発揮したと言うのか?さながらこれは『絆の力』だとでも呼ぶべき現象なのか・・・!?ふざけている!私が造ったディラハルコンだぞ!何故あんな愚かな子供と・・・」
「エンルゥ様、大変です!」
「どうした?」
「アトランティスに、無数のジラが上陸しました!」
「なっ!?」
その頃、格納庫ではエンルゥが二つの「予想外」に遭遇し、激しく動揺していた。
一つは、ゼマと共に限界を超えたハルコンの力。
もう一つは、ジラ達のアトランティスへの進撃。
ゴァアアン・・・
ゴァアアン・・・
ゴァアアン・・・
「・・・あれは、本当にジラなのか?」
「まるで、全てを飲み込む大津波だ・・・
!」
アトランティス・ラピュタ郊外。
遠い彼方から、眼を朱く染めて全てを薙ぎ倒しながらラピュタを目指すジラ達の群れに、レグチュアに乗る隊員達は唖然としていた。
それ程までに、圧倒的な光景であったのだ。
ゴァアアン・・・
ゴァアアン・・・
ゴァアアン・・・
ムー大陸のジラ達もまた、四方八方からマチュピチュを目指して爆進。
全てを破壊しながら、マチュピチュはジラ達に包囲されつつあった。
「バカな!?どうしてアトランティスに?ヤツらを呼び寄せるモノなど何も・・・」
「・・・決まってんだろ、『絶望の一夜』が起こったからだ・・・」
錯乱しかけるエンルゥの問いに答えたのは、地に伏しながら辛くも生きていたサイワであった。
「貴様、まだ生きていたのか?それより答えろ、どう言う事だ?」
「どう言う事・・・?オレの服は、色々特注なんだよ・・・それより、これはオレとお前が始めた事だろ?『絶望の一夜』は、全てを滅ぼす・・・それは、アトランティスも例外じゃねぇ・・・ディラハルコンを造った、その事実をジラ達は許さなかった、そう言う事だ・・・まさかハルコンさえムーに置いとけば、自分達だけ助かるとか思ってたんじゃ、ねぇだろうな・・・?」
「当たり前だろう!ハルコンが餌の筈でしょうが!我らアトランティスが滅ぶ筈が・・・」
「お前、ハルコンの件と言い、生き物をナメ過ぎなんだよ・・・きっと地理的に、ニライ・カナイのヤツらが総出で来たんだろうなぁ・・・はぁ、ほんと生き物って歪(いびつ)に見えて、美しいくらい整ってるよなぁ・・・そう言う意味じゃオレ、ディラハルコンって実は大好きなんだぜ・・・?無機物に生き物が宿ってる、最高に歪な存在なのがよ・・・」
「ディラハルコンは貴様が造ったモノでもあるだろうが!何を仕込んだ!」
「仕込んでなんかねぇよ・・・美しいくらいに完璧な遺伝子を持つ、ジラの遺伝子をこれ以上弄るかよ・・・それにハルコンは、お前が造ったモノなんだろ?矛盾してるぞ・・・?」
「その減らず口を、今すぐ閉じろ・・・今度こそ息の根を止めてやろうか!!」
エンルゥはサイワから奪った銃をサイワに突き付けるが、当のサイワは全く臆さない。
「『絶望の一夜』ってのは、きっと唯一マナを操れるジラの暴走によって、世界中のマナが大陸の外へと溢れ出る事で、引き起こされるんだ・・・もう、後戻りは出来ねぇ・・・でもな、罪の無い人達をなるべく巻き添えにしない事くらいなら出来る・・・オレはここに来る前に、部下達と合流して・・・ディラが来るから、なるべく高い所へ避難するよう、世界中の人々に促すように頼んどいた・・・今頃、『賢者』の案内でアトランティスの人々はラピュタか、インファント島に避難し始めてるさ・・・」
「インファント島?ニライ・カナイの端の、『三姉妹と守護神』伝説のある島か?まさか、守護神が守ってくれるとでも言うのか?」
「さぁな・・・守護神様も三姉妹様もずっと昔に、人間を見限ってるからな・・・でも、守護神様が本当にいるなら、守護神様を信じるような純粋無垢な人々くらいは、守ってくれるだろうさ・・・こうなったら、神様でも何でも信じてみようぜ・・・?」
「この世に、神などいない・・・いるならば、人間をこんな愚かな存在として造らない・・・!もっと高潔で、もっと完全無欠で、もっと尊い存在として造る筈だ!」
「もしかしたら人間は・・・神様にとって異端児で、間違った存在なのかもしれねぇ・・・俺と、お前みたいに・・・けど、ゼマみたいないいヤツだって、人間にはいるんだ・・・!
なぁ、エンルゥ。オレ達は間違った・・・やっちゃいけない範囲を超えちまった・・・神の設計図の遺伝子を弄び・・・機械の体に無理矢理命を宿した・・・オレ達は、一度元に戻らなきゃならねぇ・・・けど、その過ちの根っこは、きっとゼマがなんとかしてくれる・・・人間は、やり直せる・・・そう信じ・・・ようぜ・・・?
なぁ・・・ゼマ・・・・・・」
涙を流しながら、満面の笑みを浮かべ・・・サイワは今度こそ、息絶えた。
「・・・貴方と言う人は、最後の最後まで愚かで、身勝手で・・・私よりも世界の真理に行き着いた、素晴らしき人だよ・・・!」
サイワの最期を見届けたエンルゥは銃を捨て、所員と共に格納庫を去って行った。