ゴジラ‐世紀の大怪獣‐
一方、市原市前工事場では闘いが続いていたが、状況は一転していた。
バランが三度立ち上がり、怪獣を押し飛ばしたのだ。
グァウウウウ・・・
更にバランは四つん這いになり、力強く手を地面に叩き付けた。
と、同時に地面から岩塊が縦に列を成して出現する。
「岩流」だ。
岩塊はそのまま怪獣へ向かい、起き上がった怪獣に直撃した。
不意を突かれ、後ろによろめく怪獣。
更にバランは勢い良く空気を吸い込み、その空気を一点に凝縮し始めた。
スゥアアアアアアア・・・
瞬く間に、バランの口内に凄まじい渦を巻く空気の塊が出来ていく。
そしてバランは真空の弾丸「真空圧弾」を打ち出した。
ドコオオオン・・・
怪獣は何とか体勢を立て直すも、そのまま圧弾を受けてしまった。
再び倒れる怪獣。
だが、バランは怪獣に向かわずに両手を左右に広げ、脇下から柔らかい皮膜を張ると、皮膜を使って何処かへ飛び去った。
怪獣は起き上がり、空の彼方へと飛んで行くバランを睨む。
グルルルル・・・
と、そこへ瞬の部隊が到着した。
「あれ?バランとか言う怪獣、いませんね?」
「構うものか。あの怪獣も危険生物、目標を変更する。」
「了解!」
戦車隊は一斉に怪獣に攻撃を始めた。
先程の闘いでだいぶダメージを受けた怪獣を追い込む様に砲弾が当たり、怪獣の体力を削っていく。
「隊長、効いてますね。」
「・・・」
――なんだよ、黙りやがってさ・・・
「・・・右に避けろ!」
「えっ?」
すっかり上の空だった隊員は瞬の指示にようやく反応するも時既に遅く、怪獣は尾を戦車に叩き付けた後だった。
「うわあああっ!」
瞬は何とか無事だったが、隊員は衝撃の余り失神していた。
すぐに別の戦車から連絡が入る。
『たっ、隊長!』
「すまないが連れが気を失った。至急、戦車から脱出する。」
『りょ、了解・・・』
――全く、だから言っただろう。
油断するな、と・・・
瞬は隊員を脇に抱え、戦車から出た。
その間別の戦車が怪獣を引き付けるが、怪獣は砲撃を無視し、少しずつ東京湾へ向かう。
「怪獣の分際で・・・逃がすな!」
砲撃はなおも続く。
しかし怪獣は砲撃をもろともせず、遂に東京湾へと消えた。
瞬は海に去った怪獣を、悔しさに満ちた目で見つめていた。
「くっ・・・!次こそ、仕留めてやる・・・!」