ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐







翌日、ムー大陸・マチュピチュ。
アトランティスにも負けない発達した文明を誇示するかのような、超高層建築物がさながらコンクリートジャングルの如く無数に並び立つムーの首都に、蒼い閃光と爆炎が上がった。



グァアアアアアアウン・・・



咆哮を都市にこだまさせる全ての元凶、ディラ。
朝日と共にムー大陸に上陸したディラは陸・海・空の防衛線を全て壊滅させ、ディラハルコンが眠るマチュピチュへの進撃を続け、遂に到達間近となっていた。






市内の一角に聳えるムー化学センター第二支部、その地下格納庫には改修を終えたと共に両肩部に追加の発射口が、首元にさながら首輪のような赴きの制御装置を取り付けられたハルコンが佇み、足元にはエンルゥとゼマの代わりの操縦者がいた。




「頼みましたよ?これはアトランティス軍兵の中でハルコンと最も適正が高かった、貴方にしか出来ない事なのです。制御装置を取り付けた事によりやや動きは鈍化しましたが、暴走の可能性は無くなったので安全に稼働出来ます。遠距離攻撃を主軸にしてディラを消耗させ、追加装備の『銀貫塊弾』でディラの頭部を貫き、確実に息の根を止めなさい。」
「了解。」



操縦者がハルコンの操縦室に乗り込む為、搭乗員用通路に向かおうとした・・・その時。
突如格納庫内が停電し、周囲が暗闇で包まれる。



「停電?何事だ・・・?」
「ディラが発電所を破壊したのでしょうか?」
「それなら即座に予備電源が働く筈、つまりこの停電は内部から意図的に起こされたものと言う事になりますね・・・」
「馬鹿な、ディラが迫る中で暴動紛いの事をするなん・・・がはっ!!」
「!?」



操縦者の謎の悲鳴と共に停電が収まり、再びドックに明かりが戻る。
そこでエンルゥが見たのは、気絶し床に伏す操縦者と・・・



「よぉ?入院中の身なのにわざわざこんな所までご苦労様だなぁ?」



操縦者を気絶させた銃をそのままエンルゥの後頭部に突き付けるサイワ、そして自ら海に捨てた筈のゼマの姿だった。



「・・・全て貴方の仕業ですか?本当に貴方は余計な事ばかりする、愚かな人間ですね?」
「あんたには言われたくねぇな、嘘八百さんよ?それにオレはあんたと違って聞きたい事を全部聞いたら、命まで奪う気はねぇしな?なぁ、少年?」
「はい。貴方は一体ハルコンを使って何をするつもりなのか、全て答えて貰います・・・!何故、『絶望の一夜』を起こしかねないような事をするんですか!?貴方は、世界を滅ぼしたいんですか!」
「うーん、三分の一違いますねぇ・・・私も世界までは滅ぼしたくありませんが、そこまでしてまで滅ぼしたい存在はいます。」
「オレか?」
「分かってるじゃありませんか?ディラと言う形で私の唯一の親友・コダカを奪った、貴方の事をですよ・・・」
「コダカ博士・・・ディラのアトランティス襲撃時に命を奪われた、あんたに並ぶ程の天才と呼ばれた人か・・・」
「そう!私が科学者としてここまで来れたのも、全てはコダカと言う対等に競い合える存在がいてこそだった・・・だのに、貴方の歪んだ好奇心から生まれたディラによって、一方的にその命は消えた・・・この感情を憎悪と呼ばずして、何と言うんですか?」



ゼマからはエンルゥの顔は見えなかったが、密かに拳を握り締めながら話すその様子からは、彼がとても嘘を付いているようには見えなかった。



「貴方も、ディラを憎んでいたのか・・・」
「だが真に報復すべきはディラを生んだサイワさん、貴方であると・・・遅かれ早かれ私に助けを求めに来る事が分かった私は、貴方を徹底的に苦める策を思い付いた・・・ディラのようにジラの遺伝子を組み込んだ兵器、いやディラやジラ達を誘き寄せる『餌』を作り出し、『絶望の一夜』と言う史上最大の破滅を起こして、貴方に永遠に消えない贖罪を与える事を!」
「・・・」
「ゼマ君、私に協力しないか?私と君は同じ存在を憎む者、同じ悲しみを背負う者同士だ。私と君とディラハルコンで、ディラとサイワと言う過ちをこの世から消そう。」



エンルゥは銃を突き付けられたまま振り向き、ゼマに手を差し伸べる。
サイワは無言のままゼマを一瞥し、ゼマもまたサイワと目を合わせ・・・



「・・・お断りします。」
「・・・なんですって?」
「確かに僕はディラが憎いですし、サイワさんを許せない所はまだあります・・・ですが、僕は僕の信じるサイワさんを信じ、ディラは復讐の相手としてでは無く破壊しか出来ない哀れな存在として、その魂を解放します。それがハルコンの願いだから。」
「少年・・・」
「更に言わせて貰うなら・・・僕から見たら、貴方はサイワさんを言い訳にして自分の過ちの責任をサイワさんへ転嫁しているだけだ。貴方もまたジラの魂を弄び、無関係な人を巻き込み、世界を滅びへ向かわせると言う過ちを犯しているのに変わり無い。それにサイワさんは自分の罪を償おうとしているのに、貴方は自分の罪を償おうとしていない・・・何より貴方はハルコンの事を『餌』、自分の道具としか思っていない・・・!ハルコンは、苦しみながらこの世界に生きる、一つの命なんだぞ!!」



エンルゥの誘いも意見も、真っ向から否定した。
拒まれたエンルゥは、今まで見せなかった激怒の感情に全身を震わせ、ゼマとサイワを睨む。



「・・・そうです、かぁ・・・!やはり、類は友を呼ぶようだな!愚者と愚者め!」
「なんとでも言え!オレの言いたかった事も少年が全て言ってくれたしな!あんたの腹の底は全て見えたが、もう少しここで固まってて貰うぜ!行け、少年!」
「はい!」
「そうはさせませんが?私が侵入者対策をしていないとでも?この地下格納庫には侵入者撃退用の光線発射口が八機設置されていてね、私がこの時計に指示すれば貴様達を焼き払う事など容易なのだよ!」
「くっ!」
「やっぱその手の装備は配備済か・・・」
「だから貴様らは愚者だと言うのだ!これで形勢逆転・・・更に私は引き金を引くのに躊躇いなど無い・・・!」
「・・・じゃあ、こうするしかねぇか!
ゼマ!!ハルコンまで振り向かずに走れ!!」
「サイワさ・・・」
「いけええええええええええええッ!!」
「!!」



ゼマはサイワの叫びと共に、一目散に走った。
サイワが指差す、ハルコンの操縦室へと。



「させないと言っている!『ゼマを撃て』!」



エンルゥは即座に時計に向けて指示し、八つの光線もまたゼマ目掛けて飛んで行く。



「・・・やらせねぇ、よぉ!!」



が、ゼマの全身を狙う光線は全て、銃を捨ててゼマの後ろに立つサイワに直撃した。



「ぐあああああああああああああああ!!」
「サイワさぁん!!」
「は、し、れえええええええええええええェ!!」



背後から聞こえるサイワの悲鳴にゼマは一瞬立ち止まって振り向きかけるも、続く最期の絶叫に足を止める事なく、光線よりも速くハルコンの操縦室へと繋がる通路へと真っ直ぐ走る。



「あ、が・・・っ・・・」
「・・・本当に、何処まで行っても愚か者と言うわけか?」



全身を焼かれたサイワは倒れ、銃を拾ったエンルゥがその有り様を見下すように睨むのだった。
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好釦