ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐
それから少し立った頃、ハルコンの元に4機の鉄甲翼機が飛んで来た。
各機は暫くの間ハルコンの様子を伺う様に辺りを旋回していたが、やがて下部からアームを出すとハルコンの両手・足と胴体を掴み、ハルコンを引き上げた。
「主電源、完全停止しています。動く様子はありません。」
「そうか。」
「どうなされますか、エンルゥ様。」
隊長機と思われる、今だ監視を続ける鉄甲翼機の一機に乗っていたのは、エンルゥであった。
彼が研究所の会議に来なかったのは、このアトランティス王家直属の隠密部隊と共にハルコンの動向を監視していたからだったのだ。
「・・・搭乗員がいないか、チェックしろ。」
「了解。」
エンルゥの指示で隊長機がハルコンに近付き、出入口から武装した複数の隊員達がハルコンへ向かってジャンプし、胴体部に着地する。
部隊はそこから整備用の入口に突入し、ハルコン内部を進んで行く。
――何か、きっかけがある筈だ。
あの「兵器」が身勝手に動いた、理由が・・・
やがて整備用出入口から隊員達が現れ、先頭の隊員は操縦室内にて気絶していたゼマを抱えていた。
「・・・やはり、あの子供か。」
「どうなされますか?」
「海に捨てろ。着水した後緊急出入口から逃げ出したとでも言えば大丈夫だろう。」
「はっ。」
隊員は無抵抗のゼマを海に投げ捨て、垂らされたロープを伝って鉄甲翼機内に戻る。
そして部隊は何事も無かったかの如くハルコンを回収し、去って行った。
――あの兵器が起こした行動・・・
「絶望の一夜」は、近いのかもしれないな。
ゴァアアン・・・
同刻、ニライ・カナイの南方に広がる草原の真ん中に、一つの叫びが上がった。
空に向かって叫びを上げたのはこの世界で最も大きい生物と言われる巨獣・ジラだ。
ゴァアアン・・・
次はレムリアの森林の中、ジラの叫びがこだまする。
この現象はここだけで無く、世界各地に生息しているジラ達が例外なしに同じ様な行動を起こしていた。
ゴァアアン・・・
ゴァアアン・・・
一つ、また一つとジラの叫びは増えていき、ついには辺り一帯のジラが全く同じ行動しかしない有り様を見せる。
その異様な光景は、まるでジラ達が見えない「何か」に反応を示しているかの様だった。