ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐







「・・・!」



また、科学センターの仮眠室にて睡眠を取っていたゼマが周囲の慌ただしさに目を覚ました。



「・・・何事なんだ・・・?」



目を擦り、服を着替えて部屋を出ると誰もが慌てながら走っており、ゼマはその1人に質問を投げ掛ける。



「何があったんです?」
「お前知らないのか!?奴が・・・奴が出たんだよ!」
「奴・・・?」
「ディラだよ、ディラ!」
「・・・!!」



その名を聞いたゼマは驚きのあまり目を見開き、そのまま職員が急いで去った後もその場に立ったままだった。
直立する彼の頭には初めてディラを見た時の記憶、アスハを失った時の悲しみ、そして怒りと憎しみが渦巻いていた。



――また・・・あいつが来た・・・!
また・・・全てが焼かれる。
また・・・人が消える。
また・・・僕から姉さんを奪う・・・!
・・・そうだ。僕があいつを倒す・・・そう決めたんだ。
僕が姉さんの仇を・・・姉さんの無念を討つ。
今の僕は無力じゃない。僕にはあれが・・・力がある!



我に返ったゼマは唇を固く閉じ、職員達とは逆の方向に走り始めた。
彼が向かった方向にあるのは研究所地下の極秘製造室・・・そう、ディラハルコンのある所だ。



――待っていろ・・・化け物・・・!






グァアアアアアアウン・・・



ラピュタより約数百km先にある集落では、到着したラピュタ防衛部隊とディラの交戦が始まっていた。
既に出撃したこの集落の部隊はディラによって壊滅させられ、辺り一帯に広がる瓦礫の一部分になっている。



「第一次防衛部隊、攻撃開始!」



レグチュアに乗る部隊長の指示が降りたと同時に、部隊の先頭に配置された岩塊砲がディラに攻撃を開始する。
放たれた岩塊は全てディラに直撃するが、ディラがその足を全く止める気配は無く、むしろその怒りを掻き立てられた様子だ。



グァアアアアアアウン・・・



ディラは早足で一気に部隊へ接近すると、勢い良く振り返って太い尾を岩塊砲にぶつけた。
後退しきれなかった岩塊砲は全てディラの尾の餌食となり、宙を舞って地上に叩き付けられ、爆発する。



「くっ、部隊は全速力で後退!鉄甲翼機隊は攻撃の準備!」



部隊長は急いで後退の指示を出すが、岩塊砲の移動速度ではやはりディラから逃れる事が出来ず、それを見越して素早く岩塊砲から逃れた数人の隊員のみが助かる状況となった。
もちろん、他の岩塊砲は乗員もろともディラの尾と足によって潰され、第一次防衛部隊は呆気無く全滅した。



「怯むなっ!第二次防衛部隊、攻撃開始!」



今度は空中に待機していた鉄甲翼機と後方に待機していた岩塊砲が前進し、ディラに攻撃を仕掛ける。
この防衛線は第四次まで存在し、第一次は岩塊砲のみの攻撃、第二次は鉄甲翼機を加えた攻撃、第三次は鉄甲翼機にレグチュアの援護攻撃を混ぜた攻撃、そして最終防衛線の第四次はレグチュア単体での攻撃。
部隊長の思惑としては、出来れば第三次防衛線を突破されて欲しくは無かったのだが、この短時間での第一次防衛線突破を見て、それは不可能であると悟りつつあった。



――・・・やはり、奴にこの防衛線は通用しないのか・・・!
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