ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐
ディラ出現から数時間後、各地の発電所の電力供給が追い付き、ようやく停電状態が解除された。
だがその時にはもうディラはラピュタに近付きつつあり、その被害は甚大な物になっていた。
「エンルゥ様!ディラが・・・ディラがアトランティスに上陸していました!数時間前の停電もディラによるダルガ発電所破壊の影響でした!」
「・・・やはり。」
時間差でディラ出現の報告を聞いたエンルゥも、流石にこの事には頭を抱えている。
「ディラは現在、アトランティスの集落や部隊を壊滅させながらラピュタへ向かっています!予想ではあと、3時間で到着するとの事!」
「残り3時間・・・仕方無い、レグチュアを出撃させる。ディラハルコンを完成させるまで、何とか持ちこたえさせろ。」
「了解!」
一方、ラピュタ防衛部隊の格納庫では隊員達が集合していた。
格納庫には両腕に何十mはある斧を、背中に二門の大砲を付けた灰色のロボットが五体置かれており、これこそが対決戦用岩石歩兵機械獣・レグチュアである。
元々レグチュアは十三体作られていたが、ディラ覚醒時の戦闘で八体のレグチュアが破壊されてしまい、現在残っているのはこの五体だけだった。
同じ戦闘で失われた岩塊砲や鉄甲翼機と言った通常兵器の補完は済んでおり、こうして集まっている隊員達はレグチュアに乗るパイロットを除き、全て残る通常兵器で出撃する手筈になっている。
「いいか、我々は何としても『超兵器』の完成まで持ちこたえなければならない!その命を懸けるか、大切な者の為に命を残すかは自由だ。だが!絶対に全力を尽くし、自身の持てる力の限り闘え!我々の未来の為に!」
「「「「「おぉーーーーーーーっ!!」」」」」
格納庫に、決意の叫びが響き渡る。
「しかし、何故今になってディラが・・・!」
科学センターの管制室にて何かの作業を行なっている職員が呟く。
現在エンルゥとその助手数名はレグチュア出動の認証作業を行なっており、ディラハルコン製造前までは現時点で開発出来る兵器技術を詰め込んだレグチュアは制作者の認証が必要で、初期制作機とも言えるこの五体のレグチュアは制作者・エンルゥの認証が無ければ出動出来なかった。
「・・・マナだ。」
「えっ、マナ・・・?」
「マナって確か、この星自体が持っている力の総称ですよね?」
「ああ。人知の及ばない、この自然や大地に流れる未確認の力・・・それがマナだ。今までは机上の理論とされて来たが、最近になってその存在を証明する数々の証拠が出てきている。」
「それで、そのマナがディラとどういった関係があるのですか?」
「・・・今は無き、ある研究所の極秘資料にマナに関しる資料があり、それにこう書いてあった。『巨獣・ジラの細胞核内には通常の生物の約三倍にも匹敵する自己再生能力を促進する遺伝子が存在しており、その遺伝子は何らかの活動源を何処かから補給し、驚異的な自己再生を可能にしている。その活動源の出所を探った所、この活動源は現在発見されているどの活動源にも当てはまらない事が判明し、過去発表されている不可解な現象の事例と比較するとこの両件の特性が非常に良く似ている事が判明した。この不可解な事例は全てマナの影響が関与していると思われる事例で、これによりジラの再生機構にはマナが関与している、と結論付けた・・・』」
エンルゥの熱弁につい助手達は手を止めるが、すぐ急いで作業に戻る。
「す、凄い記憶力ですね・・・」
「関心する程の物でも無い。更にこの資料が発見されたのは、ディラを生み出したとされる研究所だ。ここまで言えば、もう大体分かるだろう。」
「・・・ジラの再生機構を、ディラに応用した・・・!」
「そしてディラもまた、マナを活動力としている可能性が高い・・・!」
「そういう事だ。今までディラは覚醒時の暴走で減ったマナを蓄えていた・・・と考えるべきだろう。しかし、ここまで資料を残しておくのならマナを蓄え終わる目安も教えてくれれば良かったのだがな。」
資料の著者を知るエンルゥはその著者に向かっての愚痴を吐きつつ、認証作業の最終段階を終わらせようとしていた。