ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐











「・・・はっ!」



そこでゼマの意識は元に戻された。
湖の水面に移るゼマの顔は、まるで彼の心を表すかの様に波紋で揺らいでいる。



「・・・行こう。」



やや霧掛かって来た湖を、ゼマは静かに去って行った。
しかしその胸には叶わぬアスハへの思い、そしてディラへの憎しみが激しく渦巻いていた。



――そうだ、あの怪物が僕から全てを奪った。
僕がするべき事、それは僕から全てを奪った怪物を倒す事。
姉さん、貴方の無念は、この僕がきっと・・・










それから数ヵ月の月日が経ち、「オリハルコンで造られたディラ」から「ディラハルコン」と名付けられた超兵器は、開発員の尽力によってもう完成間近と言う所まで近付いていた。
既に機体は完成し、後は伝達装置を組み込むだけであった。
しかし、慣れない作業を強いられるムー化学研究員達は中々伝達装置を完成させられず、あと少しと言う所で作業は難航していた。






そんな中、徹夜が続く開発の合間に休憩を取っている2人の研究員が話をしていた。



「ふう、まさか半日も仕事してたなんてな・・・」
「そりゃ、疲れも出るってね・・・」
「それにしても、サイワさんは凄いよな。あの人が休んでるの、見た事無いよ。」
「それだけ早く終わらせたいんだろうけど、ほんと化学者らしからぬ超人さだよなぁ。」
「しかしサイワさんで思い出したけど会議の時、怪物に『ディラ』って名付けてた時はびっくりしたよ。」
「しっ!あんまり大きく喋るな・・・」
「す、すまん。」
「まぁ俺もびくびくしたけど。上手く他の研究所で作られてたって誤魔化したからいいけど、下手すればバレてたよな。」
「ああ。サイワさんも一体何考えてんだ・・・」
「とりあえず、ディラを何とかすれば大丈夫さ。早く作業に戻ろう。」
「はいよ・・・」






またその一方、ディラハルコンを格納したドックではエンルゥが部下達と会話していた。



「それで、作業の様子はどうだ?」
「完遂率83%、まだ一部の伝達装置が未完成です。」
「そうか、それは少々困ったな・・・」
「なにか、問題があったのですか?」
「いや、もうそろそろ奴が来そうな気がしてね・・・」
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