ゴジラ‐世紀の大怪獣‐
「全く、何を言われても知りませんよ!」
同刻、東京港・あかつき号の中にて浜が何者かに注意していた。
その相手は取材用の鞄だけを、片手に持った青年・・・志真だった。
「勝手に入り込んで、本当にすみません・・・ですがどうしても、あの島にもう一度行かないといけないんです!」
「しかし・・・」
「それでも僕は知りたいんです!責任は全て、僕が取ります・・・だから、行かせて下さい!」
「・・・分かりました。私が上官に言って、貴方も乗せて貰える様にしましょう。」
「ほ、本当ですか!」
「私は貴方のその勇気に打たれました。やはり、貴方は凄いジャーナリストだ!」
「いやいや、そんな事無いですよ・・・」
浜に絶賛され、またも満更でもない顔で志真は頭を掻く。
「そうですね・・・そう、志真さんはまるで瞬庚特尉のような・・・」
「瞬庚!?」
今まで上機嫌だった志真が、突如不機嫌になった様に黙り込んだ。
「ど、どうしました?」
「いや、昔同じ名前の腹が立つ知り合いがいまして・・・別に気にしないで下さい。」
「それは災難な。私の知る瞬特尉は才能を妬む隊員から嫉妬こそされていますが、その自衛隊員としての実力と才覚は、年下ながら本当に素晴らしいお方です。」
「ま、まぁそうですよね!同名の人なんて沢山いますし!」
「きっとそうでしょう。それでは、私は上官に連絡して来ますね。」
「はい、ありがとうございます!」
それから30分、志真の搭乗の許可が降りたあかつきは東京湾を出た。
あかつきの甲板では志真が夜の海を見ながら考え事をしている。
――この謎、絶対解いてやる。
そして、デスクを納得させてやる・・・!
と、その時海面が突如盛り上がり、船体が巻き込まれてしまった。
「うわああっ!」
「な、何だ!?」
「くっ、岩にでもぶつかったのか・・・?」
動揺する隊員達。
志真も必死に甲板のポールに捕まる。
しばらくして隆起が収まり、船体も止まった。
だが起き上がろうとした志真の目に写ったもの、それは昨日八丈島に現れた黒い怪獣だった。
グルルルル・・・
「か、怪獣・・・!」
「本物の、怪獣だ・・・」
想像も出来ない程に大きな怪獣を目の当たりにして、隊員達は再び動揺する。
と、そこへ浜がやって来た。
「みんな、大丈夫か!」
「はい!何とか!」
「志真さんもだい・・・」
志真に安否を確認しようと船体の端を見た浜は、言葉を詰めらせた。
怪獣は、志真の事を睨みつける様に見つめていたからだ。
「これでは、手出しが出来ない・・・志真さん!逃げて下さい!」
浜が叫ぶも、志真は動かない。
志真もまた、怪獣を睨む様に見つめている。
――お・・・脅えるな、相手の目を、じっと見るんだ・・・!
俺は、ジャーナリストだろ・・・!
怪獣はしばらくの間そうして動かなかったが、突如船体を掴んだかと思うと、そのまま船を転覆させてしまった。
怪獣は海に潜り、何処かへと消えた。