ゴジラ0‐一万二千年の記憶‐
その一方、ゼマは海を見つめながらアスハの事を思い返していた。
――・・・姉さんは、僕を庇って死んだ。
きっとそうだ、小さい頃から姉さんは何度もこの先起こる事を当ててみせてた。
あの時、ああなる事も姉さんには見えてたんだ・・・
そして・・・
ゼマの複雑な思いを乗せながら、船はアトランティスの港町に到着した。
乗組員は船から降り、食糧や水を補給する為に市場へ駆り出して行く。
「よーし、野郎共!つかの間の息抜きだ!」
「サイワさん、ちゃんと買い出しもして下さいね・・・」
「わあってるって。その為にここに寄ったんだ、心配すんな。」
「は、はい・・・」
ふとサイワが船着き場に目をやると、1人孤独そうに海を見つめるゼマの姿が見えた。
放っておけない性格のサイワは、すぐゼマに話掛ける。
「おう、少年。折角アトランティスに着いたんだ、もっと楽しくしようぜ。」
「はい・・・」
「まあ、お前がどうしようが勝手だけどな、買い出しはサボんなよ。」
「はい・・・」
連れない奴だ、と言わんばかりの顔を困り顔を浮かべ、サイワは船着き場を去って行った。
ゼマはそれからも海を見つめ続け、彼が買い出しに行ったのは集合10分前であった。
それから一団は町の外れで集合し、アトランティスの首都「ラピュタ」を目指す事となった。
どの者も、背中に大きな荷物を背負っている。
「これから俺達はラピュタにあるアトランティス科学研究所に向かう!そこのお偉いさんと話をし、黒い獣を倒す『兵器』を作ってもらう!これはムー、いや世界の存亡がかかった重大な事だ!気を引き締めていけ!」
サイワの力説を、食い入る様に聞く乗組員達。
ゼマもまた、真剣な目付きでサイワを見ていた。
――・・・僕は、必ず姉さんの敵(かたき)を討つ・・・!
一団はラピュタを目指し、長い道を歩いて行った。
広大な河を渡り、厳しい砂漠を乗り越え、時に仲間を失いながらも彼らは足を止めなかった。
たとえ何があろうとも、ラピュタに着く事こそが彼らの最後の希望だったからである。
「あ、あれは・・・!」
そして、港町を出発してから三日。
一団は遂に科学の都市・ラピュタに到着したのだった。
ラピュタの街は地上に向かって反発エネルギーを放つ巨大でかつ特殊な機関を利用し、空中に浮かんでいるのが特徴であり、その様子はまさに人類の発展を誇示しているかの様だ。
街への出入りは街の下にある何十ヵ所かの移動装置で行なっており、サイワ達も移動装置に乗ってラピュタ内に入る。
「あと少しだ!気合い入れて行け!」
先頭に立つサイワは一団に激を入れつつ、科学研究所へと導く。
街を往く一団は周囲と若干浮いており、人々は珍しいものを見る目で一団を見ていたが、当の一団はその目線を全く気にせず科学研究所へ歩を進め、十数分掛けて着いた科学研究所前でようやく腰を降ろした。
「よく頑張ったな。オレはこれから中に入ってお偉いさんに会って来るから、お前らはここで休んでろ。」
「は、はい・・・」
そう言うと、サイワは科学研究所の中へ入って行った。
ずっと歩き続いていた一団は糸が切れた様にぐったりとし始め、路上で寝る者までいた。
そして、その様子は人々の目線を集めていた。