ゴジラ‐世紀の大怪獣‐
その頃、日東新聞本社の資料室に志真の姿があった。
自衛隊から調査の証拠品が返ってくるまで何も出来ない志真は、その間神島について独自に調べようと思ったのだ。
「うーん・・・ったく、無駄に多いよなぁ・・・」
おびただしい数の資料を棚から出しては直すが、どうも思った通りの資料が見つからない。
調査を諦めかけていたその時、一つの資料が志真の目に入った。
「・・・『神島訪問記』・・・?」
志真はその資料を取り、読み始める。
それはこれまで、神島に訪れた有名人達を記録した本だった。
「・・・おお!こんな人も来てたのか!案外凄い人が来てんだなぁ・・・」
つい目的を忘れて読み耽る志真だったが、とあるページを開いた瞬間、彼の目の色が変わった。
「化学研究者チーム訪問・・・?えっと、『沫原博士率いる遺伝子工学の第一人者が2004年を機に神島にてある研究を行っている。それに関しての詳細は明らかでないが、どうやらクローン生物の研究をしていたらしい。』・・・か。」
――なんか引っ掛かるな・・・
研究所、遺伝子工学、怪獣、そして「ゴジラプロジェクト」・・・よし、もう一回調査してみっか!
志真は資料を棚に直すと、資料室を出ていった。
「は、初めての実戦ですね、隊長・・・」
夕刻、千葉県・千葉市の郊外に待機している戦車の中で一人の自衛隊員が男に話し掛けていた。
「あぁ。そうだが。」
隊長と言われた男は隊員の話をさらりと流す。
彼の名は、瞬庚。
唯一自分独自の部隊を持つ事が許された自衛隊の『特別大尉』であり、若きエリートだ。
「隊長は緊張しないのですか?」
「緊張して何になる。緊張は失敗を生むだけだ。」
「は、はい・・・」
「俺達の目的は日本を脅かす怪獣を駆逐する、それだけに過ぎない。」
「じゃ、じゃあ外で緊張をほぐしてきます!」
「勝手にしろ。」
隊員は戦車から出ていくや否や、別の戦車に入り仲間の隊員と何やら話し始めた。
「・・・ったく、話し難いんだよな、あの人。」
「若きエリートの、瞬特尉だろ?」
「ああ。エリートだか何だか知らないけどさ、なんか勘に触るよ・・・」
「成績、精度共にトップクラス。けど、ちょっとそれで調子に乗ってる風情なんだって?」
「だろ!どうせ実戦だとヘマする癖にさ。」
――・・・俺に対する愚痴でも言いに行ったか。
訓練で成果も上げられない奴が、全く・・・
一方、瞬は半ば隊員達の言動を察しているかの如く溜め息を付き、考え事をしていた。
すると、そこに本部から連絡が入って来る。
『緊急連絡!市原市にバラン接近!部隊は今すぐ移動せよ!』
連絡が途絶えると同時に隊員が大慌てで帰って来た。
瞬は部隊の出動準備の完了を確認し、市原市へと向かった。
「すみません、遅れてしまって・・・」
「・・・次からは気を付けろ。」
――・・・はぁ。
自衛隊だろうと、どこもかしこも志真の様な馬鹿ばかりだな・・・