ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐




「あ、あの、預言者さんよ?いつもの・・・」
『予言、だな?・・・この週末の夜、大阪と言う街は巨獣の業火に包まれる。』
「「!!」」



ノアの口から告げられる、あまりに不吉な予言。
人々は軽いパニック状態になり、予言の予想を呟き始める。



「ほら見んか、不吉な内容じゃないか!」
「き、巨獣ってまさか、怪獣?」
「また来るの・・・?」
「今年はギドラ一族が来てから、それは沢山怪獣ばかりの1年だったのに・・・」
「ラドンの次は、何が来るんだよ!」
「大丈夫だよ、どんな怪獣が来てもゴジラがやっつけてくれるから!」
「モスラもバランもいるし!」
「でもよ、そのゴジラだっていつ俺達を襲って来るか分かったもんじゃねえし・・・」
「バランだって、最初は私達の敵だったじゃない。もしゴジラが私達の敵になったら・・・」
「それはありませんっ!」
「「!」」



予言への不安が怪獣への不安に変わり、ゴジラへの不安にまで発展していく大人達に向けて、遥が叫んだ。
それまで誰が見てもおとなしい少女だった彼女の、気迫をも感じる声に大人達は沈黙した。



「ゴジラはずっと、いつだって私達の為に戦ってきました・・・ボロボロになっても立ち上がって、時に核弾頭を受け止めて、宇宙にまで行って・・・でもそれは全て、私達を守りたいと言う一心なんです!怖いと言う気持ちは分かります。それが当たり前なんです。ですが・・・だからこそもう一度、どうかゴジラを信じてあげて下さい・・・!」



大人達はただただ遥を見つめ、遥はやや申し訳なさそうに・・・だが譲渡はしないであろう強い眼差しで見つめ返す。



『・・・そう言う事か。』



「そうだよ!ゴジラが俺達の敵になるわけないじゃん!」
「お姉さんの言う通りよ!」
「そ、そうだな。何事も決め付けたらよくねぇよな。」
「最近の若者の悪い癖じゃな。」
「じゃあ反論しろよじいさん!」
「あなた、ごめんなさいねぇ。勝手な事ばかり言っちゃって・・・」
「い、いえ。私も初対面の皆さんになんて失礼な事を言ってしまい・・・申し訳ありません。」
「謝る事ねぇってばよ。あんたの言う通りだ。」
「あ、ありがとうございます。貴方はどうおも・・・」



遥は振り返り、ノアの答えを聞こうとしたが・・・そこにノアの姿は無かった。
まるで最初からそこにいなかったかのように、誰にも気付かれる事なく自然と彼は去っていた。



「あれ、予言者さんがいねぇ!」
「いつの間に・・・!」
「神隠しにでもあったみたいだの。」
「ちぇっ、俺にいいことあるか聞きたかったのにな!」
「お姉さん、あの人どこ行ったか見てない?」
「私も見てないの、ごめんね。ほんと、何処に行ったんだろうね・・・」


――本当に何者なんだろう、あの人。
結晶があんな光り方するの、初めて見た・・・
それに、モスラの事もこの結晶の事も明らかに知ってる・・・
何だろう、この不安な気持ち・・・



自分がここに来た理由すらも忘れそうな程の言い様の無い不安を、遥は感じていた。










ーー・・・あの日から、人間達の行動を観察し続けたが・・・人間はかつてと何も変わっていない。
我が教えたほんの少し先の物事にただ怯え、自ら解決の為に行動しようとする事も無く、何かにすがり付くだけ。
やはり、人間はもう一度滅ぶしか無いのか?
・・・だが、あの少女は違った。
あの結晶の持ち主だけあって、慈愛と意志の力に満ちていた・・・
まさか結晶に選ばれる人間が現れ、導き合うとは・・・
試してみるか。あの少女を・・・
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