ゴジラ8‐大神獣メギラ降臨‐







「うーん、ほんといい湯だったなぁ・・・」



翌日、夜。
宮城県・秋保温泉、ホテル瑞鳳。
秋保温泉随一の上質さと豪華さを誇るこのホテルのロビーを、緑の浴衣を着た遥が歩いていた。
先日、佳奈他が愛読している雑誌の懸賞に応募してみた所、見事に当選。
年明けも迫る寒空の元、いつもなら到底経験出来ない極上の温泉旅行を、親子水入らずで満喫しているのであった。



「そういえばこの近くに美味しい卵焼きがあるって噂の店があったっけ・・・おばあちゃんは今部屋で寝てたし、行ってみよっかな?」



ロビーを出て、外を歩き始める遥。
先ほど温泉に入り、体中が少々火照っている遥には外の風はちょうど良い位だった。



「・・・んっ?」



と、遥の目に飛び込んできたのは老若男女を問わない十数人程の人だかりだった。
人だかりの中心には白い外套を着た1人の男がおり、異国情緒・・・と言うにはどうも合わない、違和感にもにた不思議な雰囲気だ。



「あの、すみません。この人は一体・・・?」
「なんだ、知らんのかい?『預言者ノア』だよ。」
「預言者、ですか?」
「この人、今月の初めに突然現れたかと思えば、まるで未来を見てきたみたいにこの先起きる事を言い当てるんだよ。」
「ちょっと抽象的だけど、言ってる事は間違いないわよ。例えば今年の漢字が「絆」になるとか、北朝鮮の最高指導者が変わるとか・・・昨日も今日の対獣条約の会議で二度目の暴動騒ぎが起こるとか、予言してたんだから。」
「えっ、本当ですか!?」



確かに全て、今月起こった出来事だ。
近い出来事を正確に言い当てる、それが事実なら預言者と呼ばれるのにも納得が行く。
今初めて出会った筈ながら、遥は自分がとんでもない人物を目にしているのだと悟った。



「だから俺、これからいいことあるか教えてもらおうと思ってさ!」
「私は来年いい年になるか教えてもらうの!」
「こらこら、占い屋の人とはちょっと違うんだぞ?まあお嬢ちゃんも、予言聞いてくかい?」
「そう、ですね。皆さんのお話を聞いて、私も興味が沸いてきました。」
「と言うわけだ、預言者さん。ここらでいっちょ今年最大の予言でも頼むよ。」
「やめんか。この人の予言はどちらかと言えば不吉な事なんだ、天変地異でも起こったらどうするんじゃ。」
「でも、マヤ文明のあれって来年だよー?」



人々が各々に予言を予想する中、予言者ノアは全く動じる事なく人々を観察するかの様に見つめていた・・・が、その金色の眼(まなこ)はある物を捉えた途端、それに釘付けになった。



『・・・!』



遥の首から下げられた、「愛」の結晶だ。



『・・・そうか、これも運命なのか・・・』



何かを悟ったノアは急に遥に近づいて行くや、結晶を手で掴んだ。
その瞬間結晶は勝手に金の光を放ち始めるが、意に返さずノアは結晶を凝視する。



「え・・・っ!?」



ノアの突然の行動に遥だけでなく、周囲の人々も驚きを隠せない。



『少女、これはインファント島で手に入れた物か?』
「・・・い、いえ。私の手作りの物です!ボタンで光るようにしていたんですが、壊れちゃったみたいです、あはは・・・」
『そんな筈は無い・・・だが、恐らく間違いは無い・・・』



モスラとの関係を隠す為、とっさに嘘を付く遥。
ノアは納得がいっていない様子だが、結晶からゆっくり手を離し、それと同時に結晶の光も消えた。



「・・・あれ?光が消えた・・・」
『今は良いか・・・いずれ、時が来れば・・・』
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