ゴジラ7・5‐追憶‐
『『本当に幻想的な光景ですね。』』
2人の頭に突然響いた、重なった声。
聞き覚えのある声に2人は辺りを見渡すと、空の向こうから「フェアリー」体のモスラが飛んで来るのが見えた。
クィキウィィン・・・
モスラは2人の前で停止し、その背中からは小美人が姿を現した。
まさかの登場に、驚きを隠せない2人。
『『志真さん、瞬さん、お久しぶりです。』』
「おっ、おう、久しぶり・・・」
「・・・本当に奇術の様だな・・・」
『私達は今日、瞬さんに用件があって参りました。』
「俺に?」
『はい。志真さん、少し下がって頂いても宜しいでしょうか?』
「う、うん。」
志真が後ろに下がったその瞬間、モスラは「ノーマル」体に戻り、空に舞い上がる。
それと同時に、瞬の足元にインファント島の紋章が浮かび上がった。
カクィオオオオウン・・・
『『全てを見通す知恵を持つ貴方に、「知恵」の結晶を授けます。その叡智を、貴方を必要とする総ての者達の為に・・・』』
その言葉と共にモスラの額に光の塊が出来上がり、塊は瞬へ向かって飛んで行ったかと思うと、眼前で砕けた。
眩しい閃光に目を瞑る瞬だが、再び目を開くとそこには紋章が刻まれた金色の弾丸が浮かんでいた。
「これは・・・」
瞬は目の前に浮かぶ「知恵」の結晶をそっと掴み、光が消えたのを確認して結晶を見る。
「何故こんな物を俺に?俺以外にも、適合者ならいるだろう。」
『『いえ、それは瞬さんが持つにふさわしいものです。』』
「俺が・・・?」
『先程の闘い、見させて頂きました。そして貴方にこそ、その結晶を持って頂きたいと思いました。』
『瞬さん、それは貴方の知恵が天に認められた、輝かしい証なのです。』
「認められた、証・・・」
『『その結晶が必要になる時が、もう近くまで迫っています。来たるべき時まで、その知恵を失わないで下さい。』』
「・・・分かった。大切に取っておこう。」
そう言いながら「知恵」の結晶を見る瞬の顔は、何処か満足気な顔をしていた。
その様子を見る志真は、まるで瞬と遥と真に同じ存在になれたかの様な一体感を覚えつつも、自らの手にある「勇気」の結晶を見ながら、これから起こる「何か」を感じる。
――来たるべき時・・・
でも、どんな事だろうと俺は瞬と遥ちゃんと、バランとモスラと・・・ゴジラと、乗り越えてみせる・・・!
志真は決意の眼差しでゴジラを見上げ、ゴジラもまた志真の意思に眼差しで返した。
空からの花弁は、まだ彼らに舞い落ちていた。
夕刻、瞬は壊れかけのむささびをバランに運んで貰い、帰路に着いていた。
「しかし、これでしばらくむささびは動かせない・・・やはり、あの人に頭を下げないといけないか・・・」
愛機の一時退場に気を落としつつ、瞬はポケットから「知恵」の結晶を取り出して見詰める。
――母さん、父さん。
俺、これで最後の恩返しが出来たよな・・・
瞬は笑顔を浮かべるとコクピットを開け、戦友であるバランと目を合わせた。
バランも口元を綻ばせ、今まで見せる事のなかった笑みを瞬に見せる。
そして瞬は沈む太陽を、いつまでも見ていた。
番外編・完
17/17ページ