ゴジラ7・5‐追憶‐







舞台は戻って、群馬県・太田市。
郊外でアイヴィラと闘う瞬とはまた別の所、市内の実家にいる志真は脳裏に何かを感じていた。



――なんだ、この感じは・・・?
ゴジラが、近くに来てるような・・・


「どうしたの、哲平?」
「えっ?あ、ええっと・・・」



恵の言葉で我に返った志真はズボンのポケットに手を伸ばし、四ヶ月前小美人から受け取った「勇気」の指輪を取り出す。
指輪は淡い光で蒼く点滅しており、まるで何かを知らせているかの様だ。



「んっ・・・?」
「まぁ、これは何!?チカチカ光ってるけど、どうなってるの?」



一体どうなっているのか分からず慌てる恵と、落ち着きを保ちながらも指輪が気になる様子の永次。
その様子を見ながら志真は大切そうに指輪を握り締め、2人に語り掛ける。



「信じてくれないかもしれないけど、これは天が俺の勇気を認めてくれた証なんだ。俺はこれに誓った。たとえ何があっても絶対に逃げない、投げ出さないって。これがあったから、今俺はここに来れたと思うんだ。」
「そうなの・・・とても大切な物なのね。」
「俺はこれから行かなくちゃならないんだ。ここに大切な奴が来てて、そいつの傍にいてやらないといけない。」
「大切な奴・・・か。」
「お袋、親父・・・こんな俺を受け止めてくれて、俺を産んでくれて・・・本当にありがとう。」
「哲平・・・!」



歓喜の余り、恵は大粒の涙を流しながら志真を抱きしめた。
志真もまたそんな恵を拒む事なく抱き返し、その様子を永次は黙って見つめる。



「ほんと、お袋は何年経ってもすぐ泣く癖は抜けてないなぁ。」
「だって・・・哲平があんな事言うから・・・仕方ないじゃない・・・」
「・・・ごめんお袋、そろそろ行くな。」
「いつでも帰ってきなさい・・・ここは貴方の家なんだから・・・」
「親父、じゃあな。」
「おう。元気にしろよ。」



志真の記憶に無い、新しい煙草を蒸かしながらも慌てた様子の永次。
少々してやったりな顔を振り返って隠し、志真は玄関へと向かう。



「ちょっと待て・・・」



しかし、そんな永次が志真を呼び止める。
もしかしてさっきの表情がバレたのかと少し動転しつつ、志真は立ち止まる。



「な、なんだよ?」
「またお前がバカするか心配だからな・・・その、あれだ。メアドってのを教えろ。」
「親父・・・?」
「いつも忙しいみたいだし、電話じゃすぐ出ないだろ。だから早く言え。」
「・・・分かった。」


志真はポケットからメモとペンを取り出し、手早くメールアドレスを書く。
そして永次にメモを渡すと靴を履き、居間から駆け出して来る恵を待つ。



「哲平!また帰ってくるのよ!」
「分かってるって。」
「哲平。」
「?」
「絶対に・・・返事よこせよ。」
「・・・あぁ。」



最後にとびきりの笑顔を見せ、志真は家を出て行った。
恵と永次は戸が閉まるまで、それを静かに見守っていた。



――・・・ったく。
勝手に1人前になりやがって、俺のバカ息子が。






「さて、と・・・!」



家を出た志真は指輪を握り締められた掌を開き、指輪に行き先を問う。
指輪は淡く輝きながら志真の頭に街の郊外の姿を移し、それと同時に志真は駆け足で頭に浮かぶ光景へと向った。



――待っててくれ・・・すぐに向かうからな!
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