ゴジラ7・5‐追憶‐







「えっと、これをこうして・・・」



その一方、ここは群馬と正反対の方向にある京都府・京都市。
郊外に佇む妃羽菜家の二階では、遥が机に座って何かの作業をしていた。
机の上には様々な色のフェルトや針差しなどの裁縫道具が置かれ、手には裁縫鋏が握られている。
遥は裁縫鋏でフェルトを切り、それを素早く針で何かに縫い合わせていく。
縫い合わせはすぐに終わり、糸をステッチ止めしてから鋏で不必要な糸を切って鋏を置いた。



「やった・・・完成!」



歓喜の表情を浮かべながら遥はそれを手に取り、じっくりと眺めた。
遥が持っているのは先が三つに分かれた太めの紐で、紐先にはゴジラ・モスラ・バランを模した数センチ程の人形が結ばれている。
所謂「根付け」だ。



「時間は掛かったけど、その分ちゃんと出来たから大丈夫ね。」


――そう、これは安全祈願の根付け。
モスラと私、ゴジラと志真さん、バランと瞬さんの・・・


「そうだ、どんな服に付けようかな?やっぱり、付けるならズボンよね。うーん・・・思い切ってGパンでも履いてみようかな・・・?」



気分良くあれこれと考えに耽る遥だったが、ふと机の端に置いてある写真立てに目をやった。
写真には幼少の頃の遥が写っており、その両隣に仲睦まじい三十路過ぎの男女が写っている。
そう、この男女は遥の両親であり、妃羽菜夫妻は遥が小学生の頃に交通事故で亡くなった。
それ以来、祖母の佳奈他が女手一つで遥を育ててきたのである。



――・・・お母さん、お父さん。
遥は今日も、元気に頑張ってるからね。
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