ゴジラ7・5‐追憶‐
その一方で、郊外の瞬とバランは緊迫した状況を強いられていた。
バランが滅したアイヴィラの蔦はもう回復を開始し、十秒も経たぬ内に元通りに戻っていった。
「やはり回復速度が増している・・・奴は闘いの間に、進化している・・・!」
だが、アイヴィラは間髪入れずに蔦を操って攻撃を仕掛けて来た。
瞬はコクピットを開けて人差し指で左回りの半円を描き、何かバランに合図を送るとコクピットを閉めて右へ、合図の意味を理解したバランは左斜めへ飛んで蔦を回避した。
しかし、蔦は意思があるかの如く二人の後を追って来る。
「全く、ストーカーの様にしつこい蔦だ!」
瞬はコクピットのレバーを大きく後ろへ引き、むささびを加速させた。
勢い良くスラスターを蒸かし、むささびは蔦を引き離して行く。
更に瞬はそのまま右へ大きな円を描く様にむささびを駆り、丁度アイヴィラの背後辺りにまで来た。
――よし、上手く来ているな・・・
瞬の眼前には同じく背後から蔦が迫るバランがいたが、それこそ彼らの狙いだった。
「今だ!」
そう言うと瞬はむささびを減速させ、正面から飛んで来るバランと交差した。
そしてそこから一気に急上昇し、バランも同じ行動を取る。
すると二人の動作に着いて来れない蔦と蔦は速度を保ったままぶつかり、絡み合って一つの輪となった。
アイヴィラは急いで蔦を動かして二人を追わせようとするが、複雑に絡み合った蔦は全く言う事を聞かない。
グウィウウウウウウン・・・
バランはそれを狙ってアイヴィラに接近し、絡まった蔦を掴んで後ろへ引っ張った。
成す術も無くアイヴィラは地面に倒れ、大きく隙を晒す。
「猶予など与えん!」
そこへ瞬が爆雷を撃ち、アイヴィラにダメージを与える。
アイヴィラの体の一部が爆発で消し飛び、爆煙の中にアイヴィラの核が露出しているのが見えた。
――チャンスは・・・今しか無い!
瞬はすかさず核へ目駆けてショットガンを発射し、見事命中させた。
活動は停止させられなかったがアイヴィラには相当な一撃となり、体は上手く形状を保てずに若干崩れ、絡まっていた蔦は根元から千切れる。
空中から様子を見ていたバランもアイヴィラの異変に気付き、地上に降りるとアイヴィラに接近戦を挑んだ。
アイヴィラはダブル・アタックで近付いて来るバランに攻撃を仕掛けたが、虚弱体質にも似た今のアイヴィラではバランに大打撃は与えられず、逆にアイヴィラの右腕が崩壊した。
動転するアイヴィラの左腕をバランは掴み、力任せにそのまま螺切る。
両手を失い、悶えるアイヴィラへバランの棘とむささびのミサイルの波状攻撃が追い撃ちを掛けた。
アイヴィラはもう、反撃すら出来ない状況だ。
「今度こそ・・・これがとどめだ!」
瞬は決意の手でレバーのボタンを押し、ミサイルを発射した。
ミサイルは再生しかかっているアイヴィラの中枢部に全弾直撃し、蔦を散らしながら爆発を起こした。
更にそこへバランが口内に真空の弾丸を形成し、真空圧弾としてアイヴィラへと撃ち出す。
爆炎の中へ入った弾丸は爆発を誘発させ、凄まじい第二爆発を起こした。
――これだけ凄まじい爆発だ、もう奴も再生出来まい・・・
グァルルルル・・・
だが暫しの沈黙を破り、炎を振り払って現れたのは破壊された筈の「手」であった。
しかもまだ残る炎の中では光が点滅を繰り返しており、炎が消えると同時にその姿を晒した。
そう、全身を炎で焼かれながらも完全に体を取り戻したアイヴィラだ。
「なっ・・・!」
アイヴィラは全身の炎をもろともせず、バランへ向かっていく。
バランも迫るアイヴィラに臨戦体勢を取るが、突如右から飛んで来た青い光線がアイヴィラを貫いた。
「あの熱線は・・・」
ディガアアアアアアオン・・・